著者
大倉 沙江
出版者
公益財団法人 情報通信学会
雑誌
情報通信学会誌 (ISSN:02894513)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.23-30, 2018

<p>高齢化の進展に伴い、中途障害者が増加している。このことから、聴覚障害者は手話、視覚障害者は点字といったステレオタイプを超えて、障害の種類や程度、コミュニケーション手段の違いに応じた情報提供が求められている。本稿は、障害がある有権者に対する選挙情報の保障に関わる国レベルの政策の現状と課題を明らかにすることを目的とする。具体的には、政見放送への手話通訳・字幕の付与、選挙公報の点訳・音訳を中心に、審議会の会議録や新聞記事を用いて検討を行った。分析の結果、政見放送については、衆議院議員総選挙の比例代表では字幕の付与が、参議院通常選挙の選挙区では手話通訳および字幕の付与が認められていないことが確認された。また、選挙公報については、点字版はすべての都道府県で作成されているものの、拡大文字版は半数以上の都道府県で作成されていないことが確認された。選挙情報の保障に向けて、障害がある有権者の選挙情報の保障をいかに、誰の責任で実現するかという点に関する政策決定者や有権者の間の合意形成を図ることが緊要であり、将来の政策展開に必要な課題が整理された。</p>
著者
武田 宏子 田村 哲樹 辻 由希 大倉 沙江 西山 真司 STEEL GILL
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究計画の主要な研究課題は、1990 年代以降に「男女共同参画」と「女性活躍」の政治が行われてきたにもかかわらず、なぜ日本ではいまだに高い程度のジェンダー不平等が観察されるのか明らかにし、それによりリベラル・フェミニズムが孕む問題を理論的に検討する一方で、日本においてジェンダー平等を実現するための政治過程を構想することを目指す。
著者
大倉 沙江
出版者
公益財団法人 情報通信学会
雑誌
情報通信学会誌 (ISSN:02894513)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.23-30, 2018 (Released:2018-08-21)
参考文献数
5

高齢化の進展に伴い、中途障害者が増加している。このことから、聴覚障害者は手話、視覚障害者は点字といったステレオタイプを超えて、障害の種類や程度、コミュニケーション手段の違いに応じた情報提供が求められている。本稿は、障害がある有権者に対する選挙情報の保障に関わる国レベルの政策の現状と課題を明らかにすることを目的とする。具体的には、政見放送への手話通訳・字幕の付与、選挙公報の点訳・音訳を中心に、審議会の会議録や新聞記事を用いて検討を行った。分析の結果、政見放送については、衆議院議員総選挙の比例代表では字幕の付与が、参議院通常選挙の選挙区では手話通訳および字幕の付与が認められていないことが確認された。また、選挙公報については、点字版はすべての都道府県で作成されているものの、拡大文字版は半数以上の都道府県で作成されていないことが確認された。選挙情報の保障に向けて、障害がある有権者の選挙情報の保障をいかに、誰の責任で実現するかという点に関する政策決定者や有権者の間の合意形成を図ることが緊要であり、将来の政策展開に必要な課題が整理された。
著者
大倉 沙江
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.54-70, 2019 (Released:2022-09-12)
参考文献数
47

本稿では,障害等のある有権者の「投票権保障」の観点から設けられた投票制度を取り上げ,①それらの制度を利用することができる有権者の範囲と利用するための手続きはいかに変化してきたのか,②有権者の範囲と手続きが変化することによって投票への参加や障害等のある有権者を巻き込んだ選挙不正にどのような変化があったのか,③変化がなかったとすれば,それはどのような理由によるのかを明らかにする。分析の結果,①いずれの制度についても,制度が緩和され対象として想定される有権者数は増える傾向にあるが,②公職選挙法違反が増加しなかったかわりに,投票への参加も増えなかった。③この背景として,「投票権保障」の観点から利用対象を拡大すると同時に,「投票の公正」の観点から投票に必要な手続きを厳格化してきたことが理由のひとつとして存在することを指摘した。
著者
大倉 沙江
出版者
三重大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究の目的は、政治エリートとのネットワークや財政基盤などのリソース面で「弱い少数者」であるマイノリティ集団の利益が実現するための条件とその因果メカニズムを明らかにすることである。2017(平成29)年度は、研究実施計画にもとづき、マイノリティの政治参加に関連した基礎的な資料の収集と文献調査を進めるとともに、関係者に対するインタビュー調査を実施した。また、2018(平成30)年度に予定していたアンケート調査の一部を前倒しして実施した。なお、本年度は、マイノリティのなかでも障害者と女性に対象を絞って研究を行った。基礎的な資料の収集については、国内の学術研究機関に加え、最高裁判所や厚生労働省などの公的機関と連絡をとり、障害者の政治参加の実態や政策の動向についての文献やデータの所在を確かめた。また、データの一部については、すでに提供を受けた。さらに、学術研究機関の有識者、政府関係者、メディア、民間企業等から当該テーマに関する情報を多角的に入手し、吟味することで、状況の理解、精査に注力した。インタビュー調査については、2017(平成29)年7月~8月、2018(平成30)年1月の2回にわけ、障害がある議員、障害者団体の関係者、その支援者(弁護士など)に対して実施した。障害者の政治参加の実態、歴史的経緯などについて、立体的に情報を得ることができた。また、研究実施計画では2018(平成30)年度に予定していた「障害がある有権者に対する調査」および「障害がある議員に対するアンケート調査」を本年度に前倒しして実施した。「障害がある有権者に対する調査」は、株式会社ゼネラルパートナーズ・障がい者総合研究所との共同調査である。2018(平成30)年度は統一地方選挙の準備の年にあたるため、議員やその支援者の協力が得られにくくなると考えられるための措置である。
著者
山本 英弘 竹中 佳彦 海後 宗男 明石 純一 関 能徳 濱本 真輔 久保 慶明 柳 至 大倉 沙江
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2020-04-01

近年、経済的・社会的不平等の拡大への政治的対応が求められている。しかし、政治への参加や政策による応答に格差があるとしたら、かえって不平等を助長するおそれがある。そこで本研究では、政治参加と政策応答という2つの点から政治的不平等の実態を捉え、さらに経済的・社会的不平等と関連付けながら政治的不平等の生成メカニズムを解明する。具体的には、1)大規模質問紙調査に基づく個人と団体の政治参加における不平等の把握、2)個人や団体の政策選好と実際の政策との照合による政策応答における不平等の把握、3)事例研究に基づく具体的な政策争点における参加と応答をつなぐプロセスの把握、という3つの調査研究に取り組む。