- 著者
-
大倉 沙江
- 出版者
- 日本選挙学会
- 雑誌
- 選挙研究 (ISSN:09123512)
- 巻号頁・発行日
- vol.35, no.2, pp.54-70, 2019 (Released:2022-09-12)
- 参考文献数
- 47
本稿では,障害等のある有権者の「投票権保障」の観点から設けられた投票制度を取り上げ,①それらの制度を利用することができる有権者の範囲と利用するための手続きはいかに変化してきたのか,②有権者の範囲と手続きが変化することによって投票への参加や障害等のある有権者を巻き込んだ選挙不正にどのような変化があったのか,③変化がなかったとすれば,それはどのような理由によるのかを明らかにする。分析の結果,①いずれの制度についても,制度が緩和され対象として想定される有権者数は増える傾向にあるが,②公職選挙法違反が増加しなかったかわりに,投票への参加も増えなかった。③この背景として,「投票権保障」の観点から利用対象を拡大すると同時に,「投票の公正」の観点から投票に必要な手続きを厳格化してきたことが理由のひとつとして存在することを指摘した。