著者
原田 大輔 草島 佳紀 菅野 憲 遠田 浩司
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.207-213, 2021-03-05 (Released:2021-04-19)
参考文献数
14

We developed lanthanoid-doped upconversion nanoparticles (UCNPs) and attempted to apply them as wavelength conversion devices to near-infrared luminescent sugar sensors. By doping yttrium fluoride with ytterbium and thulium, UCNPs (NaYF4: Yb/Tm) showing upconversion (UC) emission in the near-infrared region (800 nm) were synthesized. A receptor-sensitive near-infrared absorbing dye that increases the absorbance in the near-infrared region (700-800 nm) by complex formation with phenylboronic acid (PBA) as a sugar receptor was immobilized on core-shell type lanthanoid UCNPs covered with a silica layer. When fructose was added to a dye-immobilized core-shell type UCNPs dispersion solution containing a certain amount of PBA (1.0 × 10−3 mol L−1), the UC emission intensity at 800 nm increased with increasing the concentration of fructose (0 mol L−1 to 3.0 × 10−1 mol L−1). This result indicates that the internal filter effect between the dye and UCNPs is eliminated by a change in the absorption spectrum of the immobilized receptor-sensitive dye due to a competitive complex formation reaction accompanying the increase in the fructose concentration. And as a result, the UC emission intensity increased. It was found that when the fructose concentration was 3.0 × 10−1 mol L−1, the UC emission intensity increased by 14.6% compared to the case without fructose.
著者
梶原 健寛 前馬 恵美子 加賀谷 重浩 井上 嘉則 上茶谷 若 梁井 英之 齊藤 満 遠田 浩司
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 = Japan analyst (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.629-634, 2011-08-05
参考文献数
22
被引用文献数
1 5

カルボキシメチル化ペンタエチレンヘキサミン(CM-PEHA)を導入したキレート樹脂を用いてAsを分離濃縮することを目的とし,Fe(III)を担持させたCM-PEHA型樹脂を用い,Asの吸着・溶出に関する基礎検討を行った.Fe(III)担持CM-PEHA型樹脂は,As(V)をpH 4 - 6で最大に吸着した.As(III)はほとんど捕集されなかったが,次亜塩素酸ナトリウム溶液を用いてAs(III)をAs(V)に酸化することにより吸着可能であった.吸着したAs(V)は水酸化ナトリウム溶液を用いることで容易に溶出でき,ICP発光分光分析にて定量可能であった.これらにより,試料水中のAs(V)量,As(III)とAs(V)との合量をそれぞれ求めることが可能であり,これらの差からAs(III)量を求めることでAs(III)とAs(V)とを分別定量できる可能性が示された.本法は,地下水認証標準物質(ES-H-1)に含まれるAsの定量に適用可能であった.
著者
遠田 浩司
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.45, no.7, pp.641-657, 1996-07-05
被引用文献数
1

レーザー光第二高調波発生(SHG)及び分子プロ-ブを用いる新しい手法によって, イオン選択性電極(ISE)液膜界面における電位応答機構を分子レベルで解釈する研究を行った.イオノフォア含有ISE液膜/試料水溶液界面にレーザー光を照射することによりSHGが発生し, その強度が試料水溶液中の目的イオン濃度が増加するに従って増加することを見いだした.この結果は, 生成した陽イオン-イオノフォア錯体がISE液膜界面で配向しSHG活性種となっていることを示唆している.又, ISE液膜の目的イオンに対するSHG強度変化と膜電位変化との相関より, 膜界面で配向したSHG活性な錯体陽イオン種が主に膜電位を支配していることを明らかにし, SHG強度より見積もった界面電荷密度に基づいて解析した.更に, 膜電位と界面電荷密度の関係を定量的に調べるために, 光照射によって膜の状態を一切変えることなく, 膜中のイオノフォア濃度及びそのイオノフォアに配位するイオンとの間の結合力(錯体安定度定数)を変化させることができる光応答性イオノフォアを分子プローブとして利用し, 光で誘起された膜電位の絶対値及び電位応答勾配の変化量を, 液膜界面での錯形成平衡を考慮した拡散電気二重層に基づく界面モデルを用いて定量的に説明した.