著者
岩政 衣美 三木 雄太 井上 嘉則 江坂 幸宏 村上 博哉 手嶋 紀雄
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.67, no.8, pp.479-484, 2018-08-05 (Released:2018-09-08)
参考文献数
23
被引用文献数
3 3

The concept of comprehensive DNA adducts analysis (called DNA adductomics) has recently been attracting attention, and the development of a highly sensitive and accurate quantitative method for DNA adductomics has been desired. In our previous research on LC-ESI-MS/MS, hydrophilic interaction chromatography (HILIC) was found to be effective for improving the sensitivity concerning the quantitation of DNA adducts. Although HILIC-ESI-MS/MS is useful for the quantitation of DNA adducts, the improvement of HILIC separation for DNA adductomics must be still needed. In this paper, we describe the improvement of HILIC separations for DNA adductomics by investigating the composition of mobile phases and the commercially available HILIC columns with four difference polar groups. While the elution order for four 2'-deoxynucleosides and the two DNA adducts was not drastically changed by varying the HILIC columns, the separation of each dN and DNA adducts was improved by adding alcohols and by varying the alcoholic concentration.
著者
加藤 敏文 井上 嘉則 上茶谷 若 齊藤 満 加賀谷 重浩 山本 敦
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 = Japan analyst (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.335-340, 2012-04-05
参考文献数
21
被引用文献数
5

固相抽出剤形状の多様化を目的として,逆相/陰イオン交換複合モード型ポリマー系吸着剤をポリエチレン粉末で焼結した多孔質円柱状の固相抽出剤を調製し,固相抽出特性を評価した.作製した焼結型固相抽出剤はモノリス様の連続孔を有しており,高流速下でも被検化合物を定量的に抽出可能であった.中性,塩基性及び酸性薬物を用いて抽出特性を調べたところ,中性及び塩基性薬物は疎水性相互作用により明確に保持され,メタノールで定量的に回収された.酸性薬物は疎水性相互作用と陰イオン交換相互作用が加味された複合相互作用により保持され,ギ酸添加メタノールで定量的に回収可能であった.焼結用樹脂の<ruby><rb>撥</rb><rp>(</rp><rt>はっ</rt><rp>)</rp></ruby>水性によるイオン交換相互作用の低下が懸念されたが,その影響はほとんどなく明確なイオン交換相互作用を発現した.本検討で用いた焼結法は円柱状だけでなく多彩な形状の固相抽出剤を作製可能であるため,固相抽出剤の多様化手法として有用である.
著者
郡 宗幸 井上 嘉則 井出 邦和 佐藤 幸一 大河内 春乃
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.43, no.11, pp.933-938, 1994-11-05
被引用文献数
6 3

有機スズ化合物の固相抽出法について検討した.固相抽出剤としてスチレン誘導体-メタクリル酸エステル重合体を用い, AASで有機スズの回収率を求めた.分析操作は次のとおりである.海水試料のpHを硝酸で1〜0.5に調整し, 試料と等量のメタノールを加えて, pH0.5〜0.25に再調整する, 試料溶液を固相抽出カートリッジに流量4.5〜5ml/minで流す, 10%メタノール溶液15mlで洗浄し, 溶離液としてメタノール10mlを流して有機スズを溶出させる.人工海水100ml{トリフェニルスズ(TPT), トリブチルスズ(TBT);20mgl^<-1>}を用いて分析精度(n=5)を求めた.平均値は20.0mgl^<-1>(TPT)及び20.3mgl^<-1>(TBT), RSDは1.8%(TPT)及び1.7%(TBT)と良好な結果を得た.
著者
上茶谷 若 井上 嘉則 齊藤 満 山本 敦
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 = Japan analyst (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.61, no.7, pp.613-619, 2012-07-05
参考文献数
24
被引用文献数
2

親水性基材樹脂にジアリルアミン─アクリルアミド共重合体を導入した後にアセチル化をした親水性固定相(Ac-DAA樹脂)を調製した.ジアリルアミン─マレイン酸共重合体を導入した固定相(DAM樹脂)を比較対象として,水溶性化合物の保持特性及び静電相互作用の発現度合いについて調べた.Ac-DAA樹脂では,DAM樹脂よりも約2.5倍共重合体が導入されたが,保水量及び含水量には差は見られなかった.両固定相とも核酸塩基,ヌクレオシド及び配糖体を親水性相互作用により明確に保持可能であったが,Ac-DAA樹脂では核酸塩基に対して特異的な親和性が観察された.Ac-DAA樹脂は,DAM樹脂よりも強い静電相互作用を発現したが,移動相の溶液pHを8以上にすることで静電相互作用の抑制が可能であった.Ac-DAA樹脂は,移動相の溶液pHを適切に調節することにより,イオン性化合物を含む水溶性化合物の分離に有効であることが分かった.
著者
小林 泰之 上茶谷 若 井上 嘉則 山本 敦
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 = Japan analyst (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.635-639, 2011-08-05
参考文献数
17

リンゴ果汁中のカビ毒であるパツリンを分析するための前処理法に,両性イオン性高分子を固定した親水性相互作用型固相抽出剤(DAM吸着剤)を適用した.リンゴ抽出物を1% エタノール-ヘキサン溶液に溶解後,DAM吸着剤50 mgを充填した固相抽出カートリッジに負荷することで,パツリンは定量的に吸着された.吸着されたパツリンはアセトニトリル2 mLによって定量的に溶出された.アセトニトリル溶出液を0.01% 酢酸水溶液1 mLに転溶後,HPLCに供した.パツリンのピーク近傍には定量の妨害となる夾雑ピークは検出されなかった.本前処理法全工程でのパツリンの回収率は77.0~82.1% で,RSDは0.9~2.6% であった.また,パツリンの検出限界は1 &mu;g kg<sup>-1</sup>であった.本法を市販リンゴ果汁及びリンゴ果実中のパツリン分析に応用したところ,土壌中で腐らせたリンゴ果実中のパツリンが精度よく定量された.
著者
中島 康夫 山崎 真樹子 鈴木 清一 井上 嘉則 上茶谷 若 山本 敦
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 = Japan analyst (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.349-354, 2013-04-05
参考文献数
30
被引用文献数
1

イオン性化合物分析における金属酸化物系吸着剤の選択的抽出剤としての適用性を調べるため,グリホサート[<i>N</i>-(phosphonomethyl)glycine, GLYP]を測定対象としてジルコニア及びチタニアの抽出・溶出特性を調べた.ジルコニア及びチタニアともリン酸化合物に対して高い親和性を示すとされているが,本検討で用いたチタニアからはGLYPの漏出が観察された.一方,ジルコニアはGLYPを明確に保持し,試料溶液を250 mL負荷しても良好に捕捉することができた.ジルコニアに捕集されたGLYPは0.4 M水酸化ナトリウム2 mLで定量的に溶出できた.この溶出液を,サプレッサモジュールを用いて中和させることで,電気伝導度検出─イオンクロマトグラフィーでGLYPを高感度検出することが可能であった.本法を都市型河川水に適用したところ,1 &mu;g L<sup>-1</sup>程度のGLYPを定量することができた.
著者
中澤 章 唐 寧 井上 嘉則 上茶谷 若 加藤 敏文 齊藤 満 小原 健嗣 鳥羽 陽 早川 和一
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
産業医大誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.69-74, 2017

<p>著者らが開発した繊維状吸着材(DAM不織布)は,両性イオン型高分子であるジアリルアミン‐マレイン酸共重合体(diallylamine-maleic acid copolymer: DAM)を含有し,繊維表面に水和層を形成する.本研究では,悪臭物質の一つである半揮発性有機酸(C1-C5)を対象に水溶液だけでなくガス状でもDAM不織布の吸着特性評価を行った.まず,水溶液中のギ酸はDAM不織布の水和層へ溶解した後,DAMのイミノ基との静電相互作用で吸着することがわかった.一方ガス状では,ギ酸,プロピオン酸,酪酸,吉草酸,イソ吉草酸について高い吸着能を有し,吸着量は曝露時間に依存して増加する傾向があった.ガス状有機酸に対する吸着も水溶液と同様の機序で生じていると考えられるが,さらに酢酸を除く有機酸の吸着速度定数と空気 / 水分配係数(log <i>K<sub>aw</sub></i>)が良好な相関性を有したことから,DAM不織布は大気中から不織布表面に形成される水和層へ移行性が高い親水性化合物に対するほど高い選択性をもつことが示された.</p>
著者
井上 嘉則 上茶谷 若 山本 敦
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.79-92, 2014
被引用文献数
5

親水性基材に両性イオン型化合物であるスルホベタイン及びジアリルアミン─マレイン酸共重合体(DAM)を導入した新規な保水性分離剤を調製し,水溶性化合物に対する抽出・分離特性を調べた.これらの保水性分離剤はイオン交換樹脂と同等の保水能力を示し,アセトニトリル中から水溶性化合物を効率よく抽出可能であった.特に,DAM導入分離剤はグルコースや配糖体も定量的に固相抽出可能であった.高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によりDAM導入分離剤の保持特性を調べたところ,水溶性化合物の保持(Log <i>k</i>)はLog <i>P</i><sub>o/w</sub>と良好な相関を示し,水和層への分配を主相互作用とすることを明らかとした.イオン性化合物は静電相互作用が加味されて保持されるが,溶離条件により静電相互作用の発現度合いを調節可能であった.さらに,DAMを混合した繊維状吸着剤も調製し,固相抽出剤としてだけでなく,大気中水溶性臭気成分の吸着剤としても有用であることを実証した.
著者
上茶谷 若 齊藤 満 井上 嘉則 加藤 敏文 塚本 友康 多田 隼也 亀田 貴之 早川 和一
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.371-376, 2011
被引用文献数
1

両性イオン型高分子をレーヨンに混合紡糸した臭気物質のための新規な繊維状吸着材を試作し,水溶性臭気物質に対する吸着・除去特性を調べた.アンモニアに対する吸着特性を調べたところ,本繊維状吸着材は,繊維母材であるレーヨンと比較して明らかに大きい吸着量と吸着速度を示した.また,消臭加工繊維製品認証試験に従った減少率評価試験を行ったところ,本繊維状吸着材は酸やアミンに対して高い減少率を示したが,アルデヒドや硫化水素に対しては低い値であった.これらの結果から,本繊維状吸着材の吸着機構は,吸着材表面に形成される水和層への分配と両性イオン型官能基への静電的相互作用であることが示唆された.さらに,本繊維状吸着材の再利用の可能性について調べたところ,酢酸に対しては水洗浄により再生可能であることが判った.本検討の結果,本繊維状吸着材は水溶性でかつイオン性を有する臭気物質の吸着・除去に適用可能であると考えられた.
著者
塚本 友康 清水 愛 山本 敦 小玉 修嗣 上茶谷 若 井上 嘉則
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.58-64, 2010
被引用文献数
1

夾雑成分の多い試料から親水性農薬を簡便かつ迅速に測定するために,陰イオン交換基と長鎖疎水基を併せ持つ新規逆相陰イオン交換型(RP-SAX) 固相抽出剤を合成した.RP-SAX固相抽出剤は,グリシジルメタクリレート,グリセリンジメタクリレート,ステアリルメタクリレートを懸濁重合によって合成し,陰イオン交換基としてジメチルエチルアミンを導入した.合成したRP-SAXをシリンジ型カートリッジに充填し,野菜抽出液中からのアセフェートの固相抽出により,その機能を評価した.野菜抽出液中のアセフェートは定量的にRP-SAXに吸着し,50% (v/v) メタノールで調製した 30 mmol/L リン酸三ナトリウム溶液 3 mL で溶出された.その溶出液をHPLC分析した.アセフェートの検出は紫外可視光検出器で行った.アセフェートは 5 mg/L となるように野菜抽出液に添加した.測定の結果,野菜抽出液中からのアセフェート回収率は77~100% であった.
著者
梶原 健寛 前馬 恵美子 加賀谷 重浩 井上 嘉則 上茶谷 若 梁井 英之 齊藤 満 遠田 浩司
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 = Japan analyst (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.629-634, 2011-08-05
参考文献数
22
被引用文献数
1 5

カルボキシメチル化ペンタエチレンヘキサミン(CM-PEHA)を導入したキレート樹脂を用いてAsを分離濃縮することを目的とし,Fe(III)を担持させたCM-PEHA型樹脂を用い,Asの吸着・溶出に関する基礎検討を行った.Fe(III)担持CM-PEHA型樹脂は,As(V)をpH 4 - 6で最大に吸着した.As(III)はほとんど捕集されなかったが,次亜塩素酸ナトリウム溶液を用いてAs(III)をAs(V)に酸化することにより吸着可能であった.吸着したAs(V)は水酸化ナトリウム溶液を用いることで容易に溶出でき,ICP発光分光分析にて定量可能であった.これらにより,試料水中のAs(V)量,As(III)とAs(V)との合量をそれぞれ求めることが可能であり,これらの差からAs(III)量を求めることでAs(III)とAs(V)とを分別定量できる可能性が示された.本法は,地下水認証標準物質(ES-H-1)に含まれるAsの定量に適用可能であった.
著者
井上 嘉則 伊達 由紀子
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.365-370, 1994-05-05
被引用文献数
5 5

1-(サリチリデンアミノ)-8-ヒドロキシナフタレン-3,6-ジスルホン酸(アゾメチンH)をポストカラム誘導体化試薬として用いた水試料中のホウ素の定量法について検討を行った.イオン排除クロマトグラフィー(IEC)で分離後, アゾメチンH溶液と混合・反応させ420nmで検出を行った.反応溶液のpH, 反応温度, 反応コイル, 反応溶液の流量, アゾメチンH濃度等の反応条件の最適化を行った.分離カラムにH^+型のスルホン化ポリスチレンゲル(イオン交換容量 : 3.5 meq g^<-1>・dry)を充てんしたIECカラム(150mm×7.8mm i.d.)を, 移動相に1×10^<-3>mol dm^<-3>の硫酸を1.0cm^3 min^<-1>で用いた場合, 反応コイルは5m×0.5mm i.d., アゾメチンH濃度は0.5%, 反応溶液のpHは6.6,流量は0.8cm^3 min^<-1>, 反応温度は40℃で最適な検出が可能であった.本法の検出限界(S/N=3)は7.9×10^<-3>mg dm^<-3>(ホウ素換算)であった.直線性は10^3以上あり, 0.01〜10 mg dm^<-3>(ホウ素換算)の範囲で定量可能であった.0.02 mg dm^<-3>のホウ素溶液で求めた再現性は5.5%(n=10)であった.本法を用いて河川水, 地下水及び水道水中のホウ素の定量を行い, 誘導結合プラズマ質量分析法による定量値と比較したところ, 相関係数で0.921(n=50)と良好な相関を示した.