著者
遠藤 泰弘
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.2_257-2_281, 2021 (Released:2022-12-15)
参考文献数
32

ヴァイマル共和国の崩壊とナチス第三帝国成立の一つの鍵となったヴァイマル憲法48条 (ライヒ大統領の非常権限) をめぐっては、従来ヒンデンブルク大統領時代末期の濫用に関心が集中してきたため、議会制民主主義に対する理解不足という批判的な観点から断罪されることが多かった。本稿は、ヴァイマル憲法48条の非常権限の問題を、ヴァイマル末期から逆照射するのではなく、起草者であるプロイスや制憲議会議員の目線から、同時代知識人との横の関係をも視野に入れて、内在的かつ立体的に解明する取り組みの一環として、プロイスとシュミットの48条論を比較するものである。 国家論において対照的な立場にある両者であるが、48条2項第1文と第2文の関係についての解釈や、48条5項に予定されていたライヒ法律の取り扱いといった論点で、結果的に平仄の合う部分を見せるなど、これまであまり知られていない両者の新たな側面を描き出すとともに、非常事態とデモクラシーという、現下の時代状況とも密接に関連する、より広いコンテクストにおける有益な視座の構築にも寄与しようとするものである。
著者
小田川 大典 太田 義器 安武 真隆 犬塚 元 石川 敬史 遠藤 泰弘
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

研究成果の概要(和文):オットー・フォン・ギールケ、ジョン・スチュアート・ミル、ジョン・アダムズ、デイヴィッド・ヒューム、フーゴー・グロティウスの著作の解読を中心に、近代政治思想史における制度論の諸相について思想史的、理論的な研究を行い、社会思想史学会(2012、2013、2014)、日本政治学会(2013、2014)で関連するセッションを開催した。また関連する研究報告を政治思想学会(2013)で行った。
著者
遠藤 泰弘
出版者
松山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、フーゴ・プロイスの主権なき国家論の理論上および実践上の有効性を究明しようとするものである。プロイスは、主権に代えて、「領域高権」概念を導入し、政治主体が重層的に併存する当時のドイツの政治状況において、あえて権力主体を特定するために強引な擬制を行うことを回避しえたという点で、その優位性が認められることを明らかにした。しかし同時に彼は、「責任の拡散」という有機的国家論に特有の難問に直面し、ワイマール憲法48条の大統領の非常権限の評価をめぐり、逡巡する結果ともなった。
著者
遠藤 泰弘
出版者
松山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

従来必ずしも本格的な研究対象とはされてこなかった、第二帝政期ドイツの穏健的自由主義思想を、積極的な政治秩序構想の1つとして評価できることを示した。具体的には、ドイツ団体思想の大家オットー・ギールケ(1841-1921)と、その弟子でありヴァイマル共和国憲法の起草者であったフーゴ・プロイス(1860-1925)の国家論を、同時代の支配学説との対比において理解し、「不徹底」と評価され続けてきたギールケ国家論は、まさに「不徹底」であるがゆえの絶妙のバランスを保っていたのであり、この点をむしろ政治構想としての強みとして積極的に評価しうることを明らかにした。