著者
宮部 真衣 吉野 孝 重野 亜久里
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.92, no.6, pp.708-718, 2009-06-01
参考文献数
11
被引用文献数
7

医療の現場では,外国人診療時における患者との対話に大きな課題を抱えている.現在は,医療通訳者同行による対応を行っているものの,その需要は急速に増大しており,24時間対応や緊急時対応などが困難である.情報技術への期待が大きいものの,長期的な利用可能性をもつ実用的なシステムの実現・導入には至っていない.理由としては,(1)医療分野では,極めて高い翻訳精度が要求されており,機械翻訳技術による支援は難しい,(2)異なる言語を用いる利用者間の対面同期環境における対話は,その状況の特殊性からほとんど検討されておらず,更に,医療従事者も情報技術による具体的な支援のイメージをもつことができていない,が挙げられる.そこで我々は上記の問題を解決する多言語医療受付支援システムM^3(エムキューブ)の構築を行った.M^3では,医療分野で利用可能な翻訳精度を実現するために,用例対訳を用いる.本論文では,対面同期環境における多言語対話のためのインタフェースとして,役割に応じたインタフェース及びフローチャート型情報提供機能を提案する.また,システムの試用及び提案機能の実験を行い,M^3は実際の中規模病院への導入を実現した.
著者
福島 拓 吉野 孝 重野 亜久里
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.256-265, 2013-01-15

現在,在日外国人数は年々増加しており,多言語によるコミュニケーションの機会は増加している.医療の分野では医療機関を訪れる外国人患者とのコミュニケーションのために多言語問診票が使用されている.しかし,多言語対応の紙の問診票は種類が少ないため各医療機関の要求を満たすことができていない.また,日本人医療従事者が外国人患者の母語で書かれた紙の問診票を理解することは困難である.そこで我々は,用例対訳や機械翻訳を利用して診察に必要な基本情報である症状の伝達を支援する,多言語問診票作成システムの開発を行い,問診票入力機能についての評価を行った.本研究の貢献は次の2つである.(1)日本人医療従事者と外国人患者との間のコミュニケーションを支援する,多言語問診票作成システムの提案を行い,実現した.(2)用例対訳と機械翻訳を併用することで,病名や症状を含む文の正確性と,状況説明などの付与情報を含む文の網羅性を確保した多言語問診票の記入の可能性を示した.
著者
宮部 真衣 吉野 孝 重野 亜久里
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告デジタルドキュメント(DD) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.114, pp.65-70, 2008-11-20
参考文献数
11

医療の現場では,外国人診療時における患者との対話に大きな課題を抱えている.現在は,医療通訳者同行による対応を行っているものの,その需要は急速に増大しており, 24 時間対応や緊急時対応などが困難である.情報技術への期待が大きいものの,長期的な利用可能性を持つ実用的なシステムの実現・導入には至っていない.理由としては, (1) 医療分野では,極めて高い翻訳精度が要求されており,機械翻訳技術による支援は難しい, (2) 異なる言語を用いる利用者間の対面同期環境における対話は,その状況の特殊性からほとんど検討されておらず,さらに,病院における即時性の高さに対応できていない上記の問題を解決する多言語医療受付支援システム M 3 の構築を行った. M 3 では,医療分野で利用可能な翻訳精度を実現するために,用例対訳を用いる.対面同期環境における多言語対話のためのインタフェースとして,役割に応じたインタフェースおよびフローチャート型情報提供機能を提案する.これらの対応により, M 3 は実際の中規模病院への導入を実現した.In the medical field, a serious problem exists with regard to communications between hospital staff and patients. Currently, although a medical translator accompanies a patient to medical care facilities, round-theclock or emergency support is difficult to provide due to the increasing demand for it. The medical field has high expectations of information technology. However, a useful system has yet to be developed and introduced in the medical field for practical use. The reasons for this are as follows. (1) In particular, the medical field requires highly accurate translations that cannot be achieved by the machine translation technology currently in use. (2) Face-to-face conversations between people speaking different languages are not feasible due to the specific nature of the communications in the medical field. Therefore, multilingual communication cannot respond to situations involving high immediacy. In this paper, we developed a multilingual communication support system, named M3. M3 uses parallel texts to achieve high accuracy in communications between people who speak different languages. Moreover, M3 employs a user-friendly interface and contains a function that provides information using a flowchart. As a consequence, we has introduced M3 into a medium scale hospital.