- 著者
-
野上 俊一
丸野 俊一
- 出版者
- 日本教育工学会
- 雑誌
- 日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
- 巻号頁・発行日
- vol.32, no.1, pp.1-11, 2008
- 参考文献数
- 14
本研究は大学生が自己の学習状態と達成すべき学習目標の達成困難度を考慮に入れて,限定された学習時間の範囲内で,学習活動をどのように調整するかを検討した.実験の結果,学習目標の違いに関わらず,学習状態の悪い項目群より良い項目群を多く学習することが明らかになった.この結果は階層的システムモデル(学習目標が難しい場合は学習状態の悪い項目群を,容易な場合は学習状態の良い項目群を多く学習する)からの予測とは一致しなかった.しかし,達成困難度の高い条件での学習行動は最近接学習領域モデル(学習目標の達成困難度に関係なく,学習状態が中程度の項目群を多く学習する)からの予測と一致した.また,時間経過に伴った学習活動の変化と被験者の内省報告の分析から,どの学習目標条件においても,学習の初期段階では学習状態の良い項目群の学習を優先し,その後,残りの学習状態の悪い項目群の学習に移行する2段階の学習調整が示された.