著者
野坂 直久
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.163-170, 2020 (Released:2020-04-08)
参考文献数
29

中鎖脂肪酸摂取が運動中のエネルギー基質代謝や体組成へ与える影響について解説する。脂肪は体内に大量に保有するエネルギー基質であり,パフォーマンス向上や競技特性に望ましい体組成の獲得のため,脂肪利用促進はトレーニングや食事の面から検討されている。中鎖脂肪酸は容易にエネルギーを産生し脂肪利用を促進することを期待され注目されてきた。運動前や運動中の多量摂取によるエネルギー補給が検討されてきたが,パフォーマンスへの効果は一貫しておらず,消化管の不快感も認め,その後,研究は中鎖脂肪酸の中間代謝物であるケトン体を主成分とした補給食品へ進展した。一方,中鎖脂肪酸の少量継続摂取は最大下運動中の脂肪利用を高め,オフシーズン時の筋厚の減少を抑え,運動との併用では体脂肪蓄積を相加的に抑制するなど,持久的運動能力の向上や階級制競技に望ましい体組成の維持増進に役立つ可能性が近年示されつつあり,他の競技や運動様式への応用が期待されている。
著者
本間 太郎 佐藤 謙太 篠原 菜穂子 伊藤 隼哉 荒井 達也 木島 遼 菅原 草子 治部 祐里 川上 祐生 野坂 直久 青山 敏明 都築 毅 池田 郁男
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.63-68, 2012-02-15 (Released:2012-03-28)
参考文献数
31
被引用文献数
4 5

CLAは抗肥満作用,抗がん作用など,多彩な生理機能を持つことが知られており,サプリメントとして市販されているが,日本人において摂取量や吸収代謝に関する報告はほとんどない.本研究では,日本人のCLA摂取における知見を得るため,日本人のCLAの日常的な摂取量,日常的な血中CLA濃度,CLAサプリメント摂取時の血中CLA濃度の変化について検討した.その結果,日本人は日常的に食事から37.5 mg/日のCLAを摂取していることが明らかとなった.また,日本人の日常的な血中CLA濃度は血漿中で6.4μmol/L,血球中で1.7μmol/Lであった.さらに,1日2.3gのCLAサプリメントを3週間摂取することで,血中CLA濃度は血漿中で7.7倍,血球中で8.7倍に増加した.外国人の報告と比べると,日本人は日常的なCLA摂取量や血中CLA濃度は少ないが,CLAサプリメントを摂取することでその濃度は飛躍的に上昇することが明らかとなった.以上より,日本人は1日2.3gのCLAサプリメントを長期摂取することで有益な生理作用を得ることができると考えられた.