著者
寺本 あい 治部 祐里 渕上 倫子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.194-202, 2006-06-20
被引用文献数
3

本研究の目的は,冷凍卵液ゲルの物性の改良への高圧力と糖(グルコース,トレハロース,スクロース)の役割を調べることである。糖無添加およびグルコース,トレハロース,スクロースを5%添加した卵液ゲルを作成し,0.1〜686MPa,-20℃で冷凍した。-20℃で高圧処理中,糖無添加ゲルでは200〜400MPa,糖添加ゲルでは200〜500MPaで過冷却を保ち凍結しなかった。過冷却されたゲルは,圧力解除時に急速凍結(圧力移動凍結)し,細かい顆粒状の氷結晶が生成した。このため,圧力移動凍結した卵液ゲルは,物性(破断応力と破断歪率)の変化が少なかった。また,卵液ゲルへの5%糖添加は,冷凍卵液ゲルの組織及び物性からみた品質の向上に効果的であった。しかし,3種の糖の間で大きな差はみられなかった。
著者
北野 泰奈 本間 太郎 畠山 雄有 治部 祐里 川上 祐生 都築 毅 仲川 清隆 宮澤 陽夫
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.73-85, 2014 (Released:2014-04-21)
参考文献数
52
被引用文献数
26 26

日本人の食事 (日本食) は健康食として世界中に認知されている。しかし, 日本では食の欧米化が進行し, 現代日本食が本当に有益か疑わしい。そこで本研究では, 時代とともに変化した日本食の有益性を明らかにするため, 2005年, 1990年, 1975年, 1960年の日本食を調理・再現し, これをマウスに4週間与えたところ, 1975年日本食を与えたマウスで白色脂肪組織重量が減少した。肝臓のDNAマイクロアレイ解析より, 1975年日本食を与えたマウスは糖・脂質代謝に関する遺伝子発現が増加しており, 代謝の活性化が認められた。次に, 各日本食のPFCバランス (タンパク質・脂質・炭水化物のエネルギー比率) を精製飼料で再現し, 上記と同様な試験を行ったところ, 群間で白色脂肪組織重量に大きな差は認められなかった。以上より, 1975年頃の日本食は肥満発症リスクが低く, これは食事のPFCバランスに依存しないことが明らかとなった。
著者
桑田 寛子 治部 祐里 田淵 真愉美 寺本 あい 渕上 倫子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.193, 2015 (Released:2015-07-15)

目的 ダイジョは別名アラタと呼ばれ、東南アジア原産のヤマノイモ科ヤマノイモ属ダイジョ種に分類される。自然薯に次ぐ粘質多糖類含量であるため、粘りが強い。このため、とろろの起泡性を利用した菓子への利用が期待されるが、えぐみと褐変しやすいという欠点を持つ。今回は冷凍耐性およびえぐみの原因の1つと考えられる針状結晶に着目した。すなわち、ダイジョと他のヤマノイモとの比較を行い、ダイジョの調理特性を検討するための基礎研究を行った。方法 剥皮したダイジョ、ナガイモ、ツクネイモを5%食酢液に30分間浸漬後、すりおろした。砂糖無添加、および10%添加したとろろを-20℃、-30℃、-80℃のフリーザーで凍結した。その後、25℃の恒温器で解凍し、動的粘弾性測定装置でレオロジー特性を測定し、冷凍前と比較した。また、ヤマノイモの皮を含む5㎜角の試料を食酢原液、0.5%塩酸溶液、1%塩酸溶液に浸漬し、針状結晶の有無を低真空走査型電子顕微鏡で観察した。結果 砂糖添加の有無や冷凍温度によって、冷凍後のレオロジーに大差はみられなかった。すべてのヤマノイモの皮下部にシュウ酸カルシウムの針状結晶がみられた。ナガイモに最も多く、次いでツクネイモで、ダイジョは最も少なかった。皮を剥くとき手が痒くなるのは、細胞中に埋もれていた針状結晶が飛び出して、手に刺さるためである。1%塩酸溶液に30分浸漬すると、すべてのヤマノイモの針状結晶が溶けたが、食酢原液では溶けなかった。
著者
渕上 倫子 治部 祐里 小宮山 展子 林 真愉美 〓田 寛子 横畑 直子 松浦 康
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.871-879, 2008 (Released:2010-07-29)
参考文献数
16

焼きリンゴの軟化とペクチンあるいは多糖類の分解との関係について検討した.焼きリンゴを160℃~190℃において60分間加熱して調製したとき, ペクチンと多糖類の水溶性画分は生リンゴのそれらに比べて増加した.一方, ペクチンと多糖類のシュウ酸塩可溶性画分は生リンゴのそれに比べて減少した.このように, 焼きリンゴの組織の軟化は不溶性ペクチンと不溶性多糖類が可溶性になることによって起こるものと考えられる.ゲル濾過やDEAE-トヨパールクロマトグラフィーの結果によれば,ペクチンと多糖類は低分子化しており,これらの低分子化は主として高温下, 弱酸性の条件においてリンゴ酸の作用による加水分解によるものであり,β-脱離反応による影響は少ないことを明らかにした.
著者
本間 太郎 佐藤 謙太 篠原 菜穂子 伊藤 隼哉 荒井 達也 木島 遼 菅原 草子 治部 祐里 川上 祐生 野坂 直久 青山 敏明 都築 毅 池田 郁男
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.63-68, 2012-02-15 (Released:2012-03-28)
参考文献数
31
被引用文献数
4 5

CLAは抗肥満作用,抗がん作用など,多彩な生理機能を持つことが知られており,サプリメントとして市販されているが,日本人において摂取量や吸収代謝に関する報告はほとんどない.本研究では,日本人のCLA摂取における知見を得るため,日本人のCLAの日常的な摂取量,日常的な血中CLA濃度,CLAサプリメント摂取時の血中CLA濃度の変化について検討した.その結果,日本人は日常的に食事から37.5 mg/日のCLAを摂取していることが明らかとなった.また,日本人の日常的な血中CLA濃度は血漿中で6.4μmol/L,血球中で1.7μmol/Lであった.さらに,1日2.3gのCLAサプリメントを3週間摂取することで,血中CLA濃度は血漿中で7.7倍,血球中で8.7倍に増加した.外国人の報告と比べると,日本人は日常的なCLA摂取量や血中CLA濃度は少ないが,CLAサプリメントを摂取することでその濃度は飛躍的に上昇することが明らかとなった.以上より,日本人は1日2.3gのCLAサプリメントを長期摂取することで有益な生理作用を得ることができると考えられた.
著者
治部 祐里 寺本 あい 安川 景子 佐々木 敦子 渕上 倫子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.18, 2006 (Released:2008-02-28)

<目的> 本研究では、玄米・七分つき米・精白米を、100℃・107℃・130℃対応の電気炊飯器で炊飯し、飯の物性測定を行い、玄米をおいしく炊く条件を検討した。また、電気炊飯器・圧力鍋・土鍋で炊飯した飯の官能評価や玄米と精白米の混合飯の好ましい配合割合について検討した。<方法> 本研究では、玄米・七分つき米・精白米を、100℃・107℃・130℃対応の電気炊飯器で炊飯し、飯の物性測定を行い、玄米をおいしく炊く条件を検討した。また、電気炊飯器・圧力鍋・土鍋で炊飯した飯の官能評価や玄米と精白米の混合飯の好ましい配合割合について検討した。<結果> 130℃・107℃対応炊飯器は昇温期(炊飯開始から温度急上昇期に達するまで)に細かく温度調節され、緩慢な温度上昇であったのに対し、100℃対応炊飯器は釜の温度の上下動が大きかった。普通炊きと玄米炊きを比べると、玄米炊きの方が普通炊きに比べ昇温期の緩慢上昇が短く、短時間で沸騰期に達し、沸騰期が長かった。炊飯中の温度は圧力鍋は120℃であった。玄米飯の官能評価は七分つき米・精白米の飯に比べ悪く評価され、七分つき米・精白米の飯は大差なかった。玄米を圧力鍋・電気炊飯器・土鍋の3器具で炊いた飯を比較すると、炊飯直後、2時間室温放置後とも圧力鍋で炊いた飯が最もおいしいと評価された。好ましい配合割合については玄米と精白米を同量の配合割合で炊いた飯が最もおいしいと評価された。
著者
本間 太郎 北野 泰奈 木島 遼 治部 祐里 川上 祐生 都築 毅 仲川 清隆 宮澤 陽夫
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.10, pp.541-553, 2013-10-15 (Released:2013-11-30)
参考文献数
53
被引用文献数
5 27

日本は長寿国であり,日本の食事である「日本食」は,健康有益性が高いと考えられる.しかし,ここ50年ほどで日本食の欧米化が進行し,健康有益性に疑問が持たれる.本研究では,健康有益性の高い日本食の年代を同定するため,様々な年代の日本食の健康有益性について,特に脂質・糖質代謝系に焦点を当てて検討した.国民健康・栄養調査に基づき2005年,1990年,1975年,1960年のそれぞれ1週間分の食事献立を再現し,調理したものを粉末化した.各年代の日本食をそれぞれ通常飼育食に30%混合して正常マウスであるICRマウスと老化促進モデルマウスであるSAMP8マウスに8ヶ月間自由摂取させた.その結果,両系統のマウスとも1975年の日本食含有飼料を摂取した群(75年群)において白色脂肪組織への脂質蓄積が抑制された.このメカニズムを探るため,脂質代謝において中心的な働きをする肝臓に対してDNAマイクロアレイ解析を行った結果,ICRマウスの75年群において,エネルギー消費を促進する遺伝子の発現が促進されていた.そして,SAMP8マウスの75年群において,トリアシルグリセロールの分解や脂肪酸合成の抑制,コレステロールの異化を促進する遺伝子の発現が促進されていた.以上より,1975年頃の日本食の成分は,現代日本食の成分に比べてメタボリックシンドローム予防に有効であることが示唆された.
著者
木村 安美 治部 祐里 寺本 あい 桑田 寛子 渕上 倫子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.64, 2012

<b>目的</b> サワラはサバ科の回遊魚で、ばら寿司の具材に使用されるなど岡山の郷土料理に欠かせない食材である。岡山県はサワラの取扱量は全国一で、大半を県内で消費し「岡山県の魚」とも呼ばれている。本研究では岡山県におけるサワラの喫食状況の特色を明らかにするとともに、サワラを用いた郷土料理がどの程度日常食の中に溶け込んでいるのかを検討することを目的とした。<br><b>方法</b> 日本調理科学会特別研究「調理文化の地域性と調理科学」-魚介類の調理-(平成15年7月~平成16年9月)で得られたデータを集計、比較分析を行った。調査地区に10年以上居住している者を対象とし、全国(3,431世帯)、中国・四国(931世帯)、岡山県(380世帯)から回答を得た。得られたデータからサワラ料理を抽出し、喫食率、調理法、郷土料理について比較検討を行った。<br><b>結果</b> サワラの喫食状況は、全国44.5%、中国・四国60.3%に比較し岡山県が156.8%(複数回答)と圧倒的に高く、調理方法では、全国、中国・四国では大半を焼き物が占めるのに対し、岡山県では生ものや煮物が多い結果となった。岡山県南部では北部に比較して生もの、煮物、飯物の割合が多く、北部では焼き物の割合が高かった。飯物の内訳では、押し寿司は全国34.8%、中国・四国61.5%、岡山県0%に対し、チラシ寿司が全国13.0%、中国・四国0%、岡山県72.5%であり、南部・北部に分類すると、南部はばら寿司、北部はサバ寿司が高い結果となった。このことから、岡山県におけるサワラを用いた料理は生もので食べる習慣が今も続き、南部では瀬戸内の新鮮なサワラを用いたばら寿司、北部ではサバ寿司を食する郷土料理の伝統が結果に顕著に表れたと考えられる。
著者
山口 享子 桑田 寛子 石井 香代子 木村 安美 高橋 知佐子 治部 祐里 渕上 倫子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成25年度(一社)日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.165, 2013 (Released:2013-08-23)

【目的】日本各地で伝承されてきた年中行事や通過儀礼のハレの日の食事が、親から子へ伝承されない傾向にある。そこで、それらの認知状況、調理状況や食べ方、これらが変化した時期などについて調査を行い、全国レベルで比較検討し、地域性(広島県と全国の違い)を明らかにすることが本研究の目的である。【調査】平成21年12月~平成22年8月に行った日本調理科学会の行事食・儀礼食調査において、47都道府県24,858名の学生及び一般(保護者を含む)からの回答を得た。その中から、広島県に10年以上住んでいる人及び住んだことがある人858名(学生及び一般)を抽出し、お節料理について全国調査結果と比較した。【結果】年中行事を代表する正月に供される食べ物11種類の「一般」の喫食頻度(毎年食べる率)は以下の順番になった。広島県:魚料理>かまぼこ>煮しめ>黒豆>なます>肉料理>数の子>田作り>昆布巻き>だて巻き卵>きんとん。全国:かまぼこ>煮しめ>黒豆>魚料理>肉料理>数の子>なます>だて巻き卵>田作り>昆布巻き>きんとん。お節料理の喫食頻度で一番多かったのは、広島県の一般の魚料理(93.2%)で、全国の一般(81.3%)よりも多く食べていた。広島県の学生の魚料理の喫食頻度は全国とほぼ同じで、約73%の者が毎年食べると答えている。一般の最も少なかったのは広島県も全国もきんとんであった。学生が最も多く食べている物は、広島県、全国ともかまぼこであり、最も少なかったものは昆布巻きであった。家庭で作る頻度が50%以上と多いものは、煮しめ>なます>肉料理であった。
著者
桒田 寛子 寺本 あい 治部 祐里 田淵 真愉美 渕上 倫子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.137-144, 2011 (Released:2014-07-25)
参考文献数
29
被引用文献数
1

玄米をおいしく炊く条件を探る目的で,玄米を七分つき米,精白米に搗精し,テクスチャーと組織構造を比較した。玄米の20°C,30°Cでの吸水速度は搗精した米と比べ遅かった。しかし,60°Cに2時間浸漬すると,七分つき米,精白米と同じ吸水率となった。炊飯後の玄米飯の水分含量は搗精した米飯と比べ少なく,サイズは小さかった。クライオ走査電子顕微鏡観察すると,米の搗精度が高くなるに従って,果皮,種皮,糊粉層が除かれていた。米を水に浸漬すると,玄米より搗精米のほうが,デンプン貯蔵細胞中のアミロプラストがより大きく膨らんでいた。米の搗精度が高くなるほど,小孔(水の痕跡)が増加した。これはデンプンの糊化が十分であったことを示唆している。玄米の官能評価は搗精米より悪かった。