- 著者
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稲葉 裕
野尻 宗子
- 出版者
- 順天堂医学会
- 雑誌
- 順天堂医学 (ISSN:00226769)
- 巻号頁・発行日
- vol.52, no.3, pp.319-333, 2006-09-30 (Released:2014-11-12)
- 参考文献数
- 61
- 被引用文献数
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アスベスト (石綿) は古くから人の生活と関係していたが, 建設資材や断熱材として急速に需要は増加した. 6種類の鉱物の総称であるが, 主なものは青・茶・白石綿の3つである. 石綿による健康障害は, 石綿肺, 肺癌そして胸膜・腹膜中皮腫である. 石綿と中皮腫の関連については1960年頃から鉱山労働者, 次いで断熱材製造・解体・修理業労働者などで認められ, さらに最近では労働者の家族, 工場周辺の住民など傍職業曝露へと拡大してきた. リスク比は傍職業曝露でも4.8-11.5とかなり高い. 職業性曝露でも診断されるまでの期間は通常30年以上であり, 使用禁止になってからも患者の発生は増加を続ける. 日本では1970年代から患者発生がみられ, 増加傾向がいちじるしい. しかし, その研究はまだ始まったばかりであり, 2006年の新制度の発足とともに疫学研究の充実が期待されている.