著者
硲野 佐也香 中西 明美 野末 みほ 石田 裕美 山本 妙子 阿部 彩 村山 伸子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.19-28, 2017 (Released:2017-04-11)
参考文献数
24
被引用文献数
3 4

【目的】本研究は,日本において,世帯収入と子どもの食生活との関連を明らかにすることを目的とした。【方法】 2013年9~12月,東日本4県6市村の19小学校に在籍する小学5年生(10~11歳)及びその保護者を対象に自記式の質問紙調査を実施した。世帯収入が貧困基準以下の群とそれ以外の群に分け,食事区分ごとの食事摂取頻度,家庭での食品の摂取頻度及び外食の摂取頻度と世帯収入との関連について,χ2 検定を用いて検討した。その後,摂取頻度に関する項目を目的変数とし,説明変数は世帯収入として多変量ロジスティック回帰分析を行った。調整変数は児童の性別,居住地域としたものをモデル1,モデル1に家族構成を加えたものをモデル2とした。【結果】調査に同意が得られた1,231名のうち920名を解析の対象者とした。χ2 検定の結果,世帯収入群別に有意な差がみられたのは朝食,野菜,インスタント麺,外食の摂取頻度だった。多変量解析の結果,モデル1,モデル2共に,低収入群が低収入以外群と比べて,学校がある日,休みの日共に朝食の摂取頻度,家庭での野菜の摂取頻度および外食の摂取頻度が低く,魚や肉の加工品,インスタント麺の摂取頻度が高かった。【結論】日本において,世帯収入が貧困基準以下の世帯の子どもは,朝食,野菜,外食の摂取頻度が低く,肉や魚の加工品,インスタント麺の摂取頻度が高いことが示され,世帯の収入と子どもの食生活に関連があることが示唆された。
著者
塩原 由香 村山 伸子 山本 妙子 石田 裕美 中西 明美 駿藤 晶子 硲野 佐也香 野末 みほ 齋藤 沙織 吉岡 有紀子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.66-77, 2020-04-01 (Released:2020-05-27)
参考文献数
28

【目的】本研究は,小学生の日常の食卓に並び,かつ喫食した料理から1食の食事パタンの出現状況を明らかにする。【方法】対象者は,K県の小学5年生235人のうち,4日間の食事記録がある185人(有効回答78.7%)。調査は,2013年10~11月の平日,休日の各2日の連続する4日間に児童自身が写真法を併用した秤量法または目安量記録法によって実施した。解析対象の食事は,185人の朝・昼・夕の3食×4日間の12食/人のうち,学校給食の2食を除く1,850食から,欠食を除いた1,820食とした。料理は食事記録に記載された料理名,主材料並びに食事の写真を照合し,16の料理区分(主食,主菜,副菜,主食と主菜等を合せた料理等)に分類した。食事パタンは,料理区分を組合せた13の食事パタン(「主食+主菜+副菜」「主食と主菜等を合せた料理+主菜+副菜」等)に分けた。解析方法はχ2 検定を用いた。【結果】13の食事パタン全てが出現した。多い順に「主食」19.9%,「主食+主菜+副菜」17.3%であった。食事区分別では,朝食は平日・休日共に「主食」が30.8%,33.4%と多かった。夕食は「主食+主菜+副菜」が多かったが,4割以下の出現に留まった。【結論】食事パタンは全体で「主食」が多かった。夕食は平日・休日共に「主食+主菜+副菜」が多かったが,出現数は4割に留まり,その他10種以上の食事パタンが出現した。
著者
野末 みほ 猿倉 薫子 由田 克士
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.36-41, 2010 (Released:2010-09-01)
参考文献数
15
被引用文献数
2

エネルギー及び栄養素摂取量を把握するために食事調査が用いられる。ほとんどの思い出し調査の方法では,食事の記録の際,目安量が用いられる。そのため,目安量から実際に摂取した重量を推定する必要がある。しかしながら,各書籍や栄養計算ソフトに収載されている食品の目安量は様々であり,特に野菜,果物,魚,肉などの生鮮食品の重量についての研究は少ない。従って,本研究では,青果物の規格の面から,階級やその重量等が地域によって,どの程度異なるのかを明らかにすることを目的とした。さらに,食事調査において,青果物を目安量から重量に換算する際の問題点や課題等について検討した。青果物により階級の数及び名称は複数にわたり,なすでは13の階級,いちごでは28の階級があった。さらに,各階級における重量等にも幅があり,いちごのMにおいては,下限の最小値が7g,最大値が74gであった。これらのことから,食事調査において,目安量によって食品が記録された場合に,対象者と調査員,さらに調査員の間で,その目安量に関して共通の認識を持っていることが確認できることが望ましいと考えられる。実際の青果物の摂取量を過大あるいは過小に評価してしまうことを避けるためには,目安量の設定,つまりどの目安をどの重量で採用するのかを十分に配慮する必要がある。(オンラインのみ掲載)
著者
新井 祐未 石田 裕美 中西 明美 野末 みほ 阿部 彩 山本 妙子 村山 伸子
出版者
日本栄養・食糧学会
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.139-146, 2017 (Released:2017-11-16)

世帯収入別の児童の栄養素等摂取量に対する学校給食の寄与の違いを明らかにすることを目的とし,小学5年生の児童とその保護者を対象に調査を実施した。世帯収入は保護者への質問紙調査,児童の栄養素等摂取量は平日2日と休日2日の計4日間の食事調査(秤量・目安量記録法)により把握した。低収入群と低収入以外群に分け,摂取量および摂取量に占める学校給食の割合について共分散分析により比較した。低収入群は平日より休日に摂取量が有意に少ない栄養素が多く,特に昼食で有意な差が認められる栄養素が多かった。また平日,休日ともにたんぱく質摂取量が有意に少なかった。平日1日あたりの摂取量に占める学校給食の割合には有意な差が認められなかった。休日を含めた4日間の総摂取量に占める学校給食の割合は,たんぱく質,ビタミンA,食塩相当量で有意な差が認められ,いずれも低収入群の割合が低収入以外群の割合より高かった。4日間の摂取量に対する学校給食の寄与は,低収入以外群より低収入群の方が高いことが明らかとなった。
著者
関山 牧子 村山 伸子 石田 裕美 野末 みほ
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

インドネシアでは、教育省から学校給食の予算が捻出されることとなり、2016年から公立小学校において学童に対する給食提供を開始することとなった(PROGASプロジェクト)。2016年度は東ヌサ・トゥンガラ州の3県、計4万人の学童が、給食プロジェクトの対象者として選択された。2016年4月末にキックオフ会議が行われ、対象校の教員や調理者へのトレーニングが実施された。その上で、各小学校は給食提供に係る様々な準備を行い、7月から給食提供が開始された。給食は、24日間を1クールとして4クール、計96日間提供された。本研究では、各県のプロジェクト対象校7校と非対象校3校(コントロール群)を選択し、A)食費、B)健康的な食物選択に関する知識、C)学校での学習態度、D)栄養素摂取状況、E)身体計測値、F)ヘモグロビン値の面について、介入前後の変化を調査するとともに、対照群との差異を検証した。また、現地調査の際に、小学校教諭、調理者、保護者に対し聞き取り調査を実施し、給食提供の問題点等を明らかにした。今年度は、初年度に収集したデータ解析を中心に行った。また、インドネシアの学校給食の歴史に関して国際的に発表されている報告書や学術論文が限られているため、現地のカウンターパートの研究者とともに、インドネシア国内で公表されている情報をもとに、レビュー論文を執筆した(現在査読中)。インドネシアでは1991年以降、何度か国レベルでの学校給食プログラムが実施されてきたが、その人口規模と地理的広がりから統一的な政策が難しく、国際的にみても低い普及率の向上が優先課題であることが明らかになった。