- 著者
-
小山 珠美
黄金井 裕
加藤 基子
- 出版者
- 一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
- 雑誌
- 日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
- 巻号頁・発行日
- vol.16, no.1, pp.20-31, 2012-04-30 (Released:2020-05-28)
- 参考文献数
- 25
【目的】脳卒中急性期では,肺炎などの合併症や廃用症候群の予防を含めたリスク管理に加えて,早期経口摂取の開始と段階的摂食訓練,セルフケア能力の向上にむけた系統的,包括的な摂食・嚥下リハビリテーションが必要である.今回,脳卒中急性期患者への効果的な摂食・嚥下リハビリテーションを行うために,平成19 年度より実施したプログラムの有効性を検討した.
【対象】平成18 年4 月1 日から平成21 年3 月31 日までに,救急搬送された脳卒中急性期患者のうち,摂食機能療法で介入した367 名.男性223 名,女性144 名,平均年齢71±12.8 歳.
【方法】367 名の属性および摂食機能療法介入による結果(経口摂取移行者数,入院から摂食機能療法開始までの日数,入院から経口移行までの日数,入院中の肺炎発症率,退院時嚥下能力グレード点数,平均在院日数)を年度ごとに比較し,プログラム実施前後の変化および影響因子を検討した.分析は統計ソフトSPSS ver13 を使用し,統計学的有意水準は5% 未満とした.
【結果】プログラム実施前(平成18 年度)に比べ,プログラム実施後(平成19 年度・20 年度)は経口摂取移行者が増加し(プログラム前83.1%,プログラム後93.4%),入院から経口摂取移行までの日数が短縮した(プログラム前14 日,プログラム後6.8 日).また,入院中の肺炎発症率が減少(プログラム前13%,プログラム後2.8%),退院時嚥下能力グレードが改善し(プログラム前7.6 点,プログラム後8.8 点),普通食を食べて退院できる患者が増えた.また,ロジスティック回帰分析により,プログラムは,入院中肺炎発症を減少させ,退院時嚥下能力グレードを改善させていた.
【結論】脳卒中急性期において,入院当日からの包括的なプログラムにより実施される摂食・嚥下リハビリテーションは,早期経口摂取の再獲得を高め,経口摂取移行率を増加させた.また,肺炎合併症の予防,退院時嚥下能力グレードの改善に寄与することが示唆された.