著者
大塚 義顕 渡辺 聡 石田 瞭 向井 美惠 金子 芳洋
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.867-876, 1998-12-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
28
被引用文献数
4

乳児期に獲得される嚥下機能の発達過程において,舌は中心的役割を果たしている。しかしながら,吸啜時の動きから固形食嚥下時の動きへと移行する舌の動きの経時変化の客観評価についての報告はほとんど見られない。そこで,生後20週から52週までの乳児について,超音波診断装置を用いて顎下部より前額断面で舌背面を描出し,舌の動きの経時的発達変化の定性解析を試みたところ以下の結果を得た。1.生後20週には,嚥下時の舌背部にU字形の窪みが見られ,舌全体が単純に上下する動きが観察された。2.生後26週には,嚥下時の舌背正中部に陥凹を形成する動きがはじめて見られた。3.生後35週には,上顎臼歯部相当の歯槽堤口蓋側部に舌背の左右側縁部が触れたまま正中部を陥凹させる動きが確認できた。4.生後35週から52週までの舌背正中部の陥凹の動きは,ほぼ一定で安定した動きが繰り返し観察できた。5.舌背正中部にできる陥凹の動きの経時変化から安静期,準備期,陥凹形成期,陥凹消失期,口蓋押しつけ期,復位期の6期に分類することができた。以上より,前額断面での舌運動は,舌の側縁を歯槽堤口蓋側部に接触固定し,これを拠点として舌背正中部に向けて食塊形成のための陥凹を形成する発達過程が観察できたことから,食塊形成時の舌の運動動態がかなり明らかとなった。
著者
河合 正計 吉田 政雄 古山 公英 金子 芳洋
出版者
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.101-110, 1986
被引用文献数
2

りんご園において動力噴霧機によりフェニトロチオン(MEP)水和剤1,000倍液を散布した時の散布者の被ぼく量とその影響について検討したo散布者は不織布性防除衣, スミトモ3Mマスク, ゴム手袋などを着用した。推定全身被ばく量は散布時のノズル竿の長さにより異なり, 短い方(平均217mg)が長い方(平均44mg)より多かった。散布時の推定皮膚接触量は1.2-23.9mgで, MEPのラットにおける急性経皮毒性より考えても, また,散布者の口元付近の気中MEP濃度から考えても今回の散布条件は安全であると考えられた。<BR>散布直後の血液中では全員にMEPが検出(0.0004-0.0222ppm)され, 1日後では9名中4名に0.0004-0.0009ppm検出されたが, 3目および7日後には全員検出されなかった。<BR>体内に吸収されたMEP量を知るために, 尿中MEP代謝物のすべてをNMCとして測定した結果, 散布後24時間内では全員に0.19-1.43mg排泄されたが, 3日後のスポット尿では9名中1名(0.19ppm)のみ, 7目後では全員に検出されなかった。これらのことからMEPは迅速に代謝, 排泄されるが,散布により体内にごく微量ではあるが吸収されるので, 連日散布はできるだけさけるべきである。<BR>今回の散布条件においては今回の防護装備で, 安全に散布しうると考えられるが, できるだけ吸収農薬量を少なくするため, 散布後できるだけ早く, うがいや身体の洗浄をすることが望ましい。