著者
大塚 義顕 石川 哲 斉藤 雅史 斎藤 隆夫 大森 恵子 渋谷 泰子 佐藤 孝宏 長谷川 正行
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.69-74, 2020-08-31 (Released:2020-09-02)
参考文献数
14

呼吸器疾患患者の中でも慢性閉塞性肺疾患(以下COPD)には嚥下障害が高率に併存し,増悪と嚥下障害との関連が指摘されている.一般的に,呼吸と嚥下は文字通り表裏一体の協調関係にあるとされ,切り離しては考えられない.嚥下筋は呼吸中枢からの制御を受けて呼吸と協調した運動をするが,COPDでは呼吸のサイクルが増し,呼気が短くなることから異常な嚥下反射が起こりやすくなると考えられる.そのため嚥下障害の特徴を踏まえたうえで対応することが望まれる.一方,フレイル・サルコペニアを考えたときにオーラルフレイルから咀嚼障害や嚥下障害に移行しないようにしなければならないし低栄養に陥らないようにもする必要がある.そこで,本報告はCOPDのオーラルフレイル・サルコペニア,嚥下障害との関連,および包括的な嚥下リハビリテーションの介入でCOPD増悪の頻度を低下できた症例を提示する.
著者
大塚 義顕 渡辺 聡 石田 瞭 向井 美惠 金子 芳洋
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.867-876, 1998-12-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
28
被引用文献数
4

乳児期に獲得される嚥下機能の発達過程において,舌は中心的役割を果たしている。しかしながら,吸啜時の動きから固形食嚥下時の動きへと移行する舌の動きの経時変化の客観評価についての報告はほとんど見られない。そこで,生後20週から52週までの乳児について,超音波診断装置を用いて顎下部より前額断面で舌背面を描出し,舌の動きの経時的発達変化の定性解析を試みたところ以下の結果を得た。1.生後20週には,嚥下時の舌背部にU字形の窪みが見られ,舌全体が単純に上下する動きが観察された。2.生後26週には,嚥下時の舌背正中部に陥凹を形成する動きがはじめて見られた。3.生後35週には,上顎臼歯部相当の歯槽堤口蓋側部に舌背の左右側縁部が触れたまま正中部を陥凹させる動きが確認できた。4.生後35週から52週までの舌背正中部の陥凹の動きは,ほぼ一定で安定した動きが繰り返し観察できた。5.舌背正中部にできる陥凹の動きの経時変化から安静期,準備期,陥凹形成期,陥凹消失期,口蓋押しつけ期,復位期の6期に分類することができた。以上より,前額断面での舌運動は,舌の側縁を歯槽堤口蓋側部に接触固定し,これを拠点として舌背正中部に向けて食塊形成のための陥凹を形成する発達過程が観察できたことから,食塊形成時の舌の運動動態がかなり明らかとなった。
著者
田村 文誉 水上 美樹 綾野 理加 大塚 義顕 岡野 哲子 高橋 昌人 向井 美惠
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.182-188, 2000-04-30
参考文献数
18
被引用文献数
15

都内某特別養護老人ホームに入居中の要介護高齢者73名を対象とし,「全身状態」「生活環境」「介護状況」の聞き取り調査と,「口腔内診査」「RSST]および「フードテスト」による摂食・嚥下機能評価を行った。それらのうち,上下対合歯による安定した顎位の保持が摂食・嚥下機能に及ぼす影響を明らかにする目的で,「安定した顎位」とRSSTおよびフードテストの結果との関連について検討した結果,以下の知見を得た。1.RSSTの30秒以内の嚥下回数が3回未満の者は,57名中17名(29.8%)であり,安定した顎位との関連では,安定した顎位のとれる者ではとれない者と比較して,1%の危険率で30秒以内の嚥下回数が3回未満の者が有意に少なかった。2.RSSTの初回嚥下までの時間が5秒以上かかった者は,57名中16名(28.1%)であり,安定した顎位との関連では,安定した顎位がとれる者ではとれない者と比較して,初回嚥下までの時間が5秒以上の者がやや少なかったものの,統計学的に有意な差は認められなかった。3.フードテストの口腔内残留がみられた者は,69名中40名(58.0%)であり,安定した顎位との関連では,安定した顎位がとれる者ではとれない者と比較して,1%の危険率で有意に口腔内残留が少なかった。