- 著者
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和泉 薫
錦 仁
- 出版者
- The Japanese Society of Snow and Ice
- 雑誌
- 雪氷 (ISSN:03731006)
- 巻号頁・発行日
- vol.64, no.4, pp.461-467, 2002-07-15 (Released:2009-08-07)
- 参考文献数
- 21
- 被引用文献数
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1
雪崩を表す言葉が,日本で最初に記載されたのは,1076年に詠われた連歌中でかな文字の「なだれ」であった.日本ではこの平安時代後期頃“なだれ”現象が認識され始めたと推定した.その後室町時代には漢字の「雪頽」が辞書に現れた.これらはいずれも全層雪崩を意味していたと考える.江戸時代中期からは,「アワ」等と呼ばれる表層雪崩が「雪頽」,「ナデ」などの全層雪崩と区別して認識され文書に記載されるようになった.現在一般的に使われている「雪崩」は“なだれ”現象全体を表す言葉であるが,それは明治初頭に国の官林調査で「ナデ」も「アワ」も統一して「頽雪」と書くよう規定したことに由来する.この「頽雪」から現在の「雪崩」までの漢字や書体の変遷には,国が定める当用漢字の変化が大きく関係していることがわかった.