著者
錦 仁
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.1-10, 2004-07-10 (Released:2017-08-01)

平安文学において<音>は、どのような場面に、どのような意義を付与されて表現されているだろうか。本稿は、そうした問題について基本的な考察を試みる。具体的には、『古今和歌集』仮名序の冒頭部にあらわれる「花に鳴く鶯、水に住むかはづの声」をはじめ、『紫式部日記』冒頭部にあらわれる「不断の御読経の声々」「例の絶えせぬ水のおとなひ」といった<音のある風景>をとりあげる。そして、これらの<風景>が、当時の貴族の屋敷と庭園に込められた思想を色濃く反映していることを明らかにする。
著者
和泉 薫 錦 仁
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.461-467, 2002-07-15 (Released:2009-08-07)
参考文献数
21
被引用文献数
1

雪崩を表す言葉が,日本で最初に記載されたのは,1076年に詠われた連歌中でかな文字の「なだれ」であった.日本ではこの平安時代後期頃“なだれ”現象が認識され始めたと推定した.その後室町時代には漢字の「雪頽」が辞書に現れた.これらはいずれも全層雪崩を意味していたと考える.江戸時代中期からは,「アワ」等と呼ばれる表層雪崩が「雪頽」,「ナデ」などの全層雪崩と区別して認識され文書に記載されるようになった.現在一般的に使われている「雪崩」は“なだれ”現象全体を表す言葉であるが,それは明治初頭に国の官林調査で「ナデ」も「アワ」も統一して「頽雪」と書くよう規定したことに由来する.この「頽雪」から現在の「雪崩」までの漢字や書体の変遷には,国が定める当用漢字の変化が大きく関係していることがわかった.
著者
西澤 美仁 居駒 永幸 菊地 仁 木下 資一 小林 幸夫 錦 仁 浅見 和彦 花部 英雄
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

平成16年度から19年度まで、8月上旬または下旬に、和歌山(高野山及び熊野)・伊勢、香川(白峯及び善通寺)・静岡(小夜の中山及び専称寺)の実地調査を西行伝承研究会(第9回〜第12回)として開催した。その間、現地の研究者との交流を行い、口野西真定(高野山奥の院維那=当時)・樫山茂樹(南方熊楠記念館常務理事=当時、故人)・晝川楠茂(伊勢市立郷土博物館)岩井田尚正(伊勢御師)・岡田登(皇學館大学教授)・高橋弘(坂出郷土資料館)・中井博一(鎌刃越開拓)・片山友一(水茎の岡西行庵管理)ほか多くの方々から有益な御協力を得た。研究会の開催以外にも、和歌山県博物館で木村蒹葭堂『熊中奇観』を調査したほか、岡山県瀬戸内市長船で「西行腰掛石」の縁起を調査、山梨県南部町西行で西行の一族を伝承する遠藤家系図・西行像を調査、長野県山ノ内町で興隆寺の縁起に連なる『寺志』『萬松山興隆寺之賦』を調査するなど、全国各地の西行伝承調査を行った。中でも、日比・渋川から白峯への航路及び鎌刃越を経由する伝承ルートを直接体験することができたこと、『佐久郡三十三所縁起』との関連で、布引観音から善光寺に至る西行伝承が滋野一族のアイデンティティーを語るものとして真田信之の松代藩政に利用された可能性を見出したこと、『紀伊続風十記』『紀伊名所図会』に連なる紀伊国地誌の原点ともいうべき『紀路歌枕抄』校本を完成させ、西行伝承の形成を具体的に判明させつつあること、は大きな収穫と思われる。19年年末には名古屋大学阿部泰郎教授が主催する研究集会を共催して、シンポジウム・講演会ほかを行い、三次10年間に及ぶ「西行伝説の説話、伝承学的研究」及び12年間に及ぶ「西行伝承研究会」の締めくくりとした。
著者
錦 仁 志立 正知 渡邉 麻里子 志立 正知 平林 香織
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

これまで和歌は、中央に住む貴族・僧侶・武士の文学として研究されてきた。また、地誌は地理学や民俗学の資料と見なされてきた。この研究では、地誌の中に大量に記載されている和歌に関する記事を分析した。そして、東北地方の藩主や藩士の和歌に対する思想を明らかにした。新しい観点と方法を導入することによって、これまでの和歌研究の常識をくつがえした。