著者
小森 哲志 鍵村 達夫
出版者
一般社団法人 日本薬剤疫学会
雑誌
薬剤疫学 (ISSN:13420445)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.95-111, 2014-03-25 (Released:2014-04-30)
参考文献数
11
被引用文献数
1

薬剤疫学研究において,薬剤への曝露と有害事象発生との因果関係を検討するための代表的な手法として,コホート研究とケース・コントロール研究という2つの研究手法がある.いずれの研究の背景にも,疾病が発生してくる元となるリスク集団の存在を想定することができる.コホート研究では,リスク集団のなかに研究コホートを設定し,それを直接調べようとする.一方,ケース・コントロール研究では,同じ研究コホートからコントロールをサンプリングすることにより,その一部を調べようとする.このように考えることで,コホート研究とケース・コントロール研究を統一的な視点から理解することができる.ここでは,コントロールをサンプリングする方法の例をいくつか示し,そのサンプリング方法によって得られる曝露効果の指標について概観した.(薬剤疫学 2013; 18(2): 95-111)
著者
塩境 一仁 鍵村 達夫
出版者
一般社団法人 日本薬剤疫学会
雑誌
薬剤疫学 (ISSN:13420445)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.90-94, 2014-03-25 (Released:2014-04-30)
参考文献数
8

ケース・クロスオーバー研究は,研究の対象とするイベントが発現したケースだけの情報を使った研究であり,自らのデータからコントロールを得るため,セルフ・コントロールド・スタディに分類される.ケース・クロスオーバー研究が妥当な研究になるためには多くの制約がある.一方でケース・クロスオーバー研究が妥当な研究条件下では,ケース・クロスオーバー研究はコントロール群の患者の情報を別途収集する必要がなく,また遺伝情報や背景情報が一致したコントロールが得られるなど多くの利点がある.本稿では近年疫学研究で利用されているケース・クロスオーバー研究の概略をまとめた.(薬剤疫学 2013; 18(2): 90-94)
著者
竹内 久朗 鍵村 達夫
出版者
一般社団法人 日本薬剤疫学会
雑誌
薬剤疫学 (ISSN:13420445)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.77-83, 2014-03-25 (Released:2014-04-30)
参考文献数
8
被引用文献数
3

本稿では,近年疫学研究で利用されているコホート内ケース・コントロール研究の概略をまとめた.また,本邦での研究事例として,使用成績調査から再構成された降圧薬データベースを用いた2つのコホート内ケース・コントロール研究を紹介した.コホート内ケース・コントロール研究は,ケース・コントロール研究で生じるバイアスを回避するとともに,コホート研究と比較して効率的に実施することが可能であるため,データベースを用いた薬剤疫学研究においても,広く用いられている研究デザインである. (薬剤疫学 2013;18(2):77-83)
著者
久保田 潔 青木 事成 漆原 尚巳 鍵村 達夫 景山 茂 小出 大介 古閑 晃 佐藤 嗣道 中村 敏明 中島 研 畑中 直也 平河 武 宮川 功 望月 眞弓
出版者
一般社団法人 日本薬剤疫学会
雑誌
薬剤疫学 (ISSN:13420445)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.57-74, 2014-06-30 (Released:2014-08-13)
参考文献数
22
被引用文献数
5 4

日本薬剤疫学会では,医薬品リスク管理(Risk Management Plan:RMP)を作成,実行する側の製薬企業と医療現場およびアカデミアからなるタスクフォースを設置し,2012年4月に厚生労働省より発出された医薬品リスク管理計画指針通知に明記されているICH E2E に準拠した安全性監視計画(Pharmacovigilance Plan:PVP)が立案可能となるようなガイダンスを作成した.内容は以下の 6つから構成されている.1.はじめに:市販後安全性監視に係るこれまでの当学会活動や,活動の目的2.安全性検討事項(Safety Specification:SS)の選択と特徴を記述するためのプロセス・SS をどう選択するか・SS をどう特徴付けるべきか・リサーチ・クエスチョン(Research Questions:RQ)にどうつなげるか3.RQ の決定と記述・RQ とは何か・各種ガイドラインではどう扱われているか・PVP へ RQ を記述する方法と具体的事例・PVP 全体としてみた最適とは4.RQ に最適化された PVP・通常の PVP で可能か,追加の PVP が必要か・追加の PVP のデザインの選択について(RQ と研究デザイン,PICO を用いた RQ の記述,評価の指標)・PVP の記載事項チェックリスト作成について5.結語:使用成績調査の位置づけ,背景発現率と比較群の必要性,今後の PVP の課題6.別添:PVP の記載事項チェックリスト以上をもって医薬品リスク管理計画指針に明記されている「ICH E2E ガイドラインに示されている安全性検討事項及びそれを踏まえた医薬品安全性監視計画」が作成,実行できることを期待したい.
著者
鍵村 達夫
出版者
一般社団法人 日本薬剤疫学会
雑誌
薬剤疫学 (ISSN:13420445)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.27-33, 2015-07-31 (Released:2015-09-18)
参考文献数
7

海外データの活用により少数例の日本人データで医薬品が承認されるわが国の医薬品開発をめぐる現状において,製造販売後調査の重要性はますます増加している.現状のような硬直した選択肢のない使用成績調査はやめるべきである.製造販売後調査が,医薬品・医療機器の安全性を守り,有効性を確認するという本来の役割を果たせるように,使用成績調査という“形式”ではなく,科学的考察の結果に対する手段として機能する世界を到来させなければならない.そのために,使用成績調査に多様な薬剤疫学研究デザインが応用されるべきであり,また使用成績調査は疾患レジストリーを基盤とした独立で統合されたデータセンターにより運用される必要がある.