著者
奥村 武久 河原 啓 高野 新二 岡田 三千代 林 光代 鈴木 英子 野田 恵子 木村 純子 長井 勇 植本 雅治
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学保健管理センター年報 (ISSN:09157417)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.47-55,

定期健康診断に対する一般学生の持つ不安をアンケートによって調査した。1983年度と1984年度の回答を比較することにより,次の結果を得た。(1)1983年の結果と1984年の結果が非常に近似した。(2)健康診断の必要性は,1984年の新入生の89.6%,大学院生の94.3%が肯定した。否定は新入生の女性の12.8%が一番高い数字であった。(3)健康診断前の不安は,新入生の場合,男性の25.4%,女性の31.1%で女性の不安率が高かった。(4)不安の理由として,新入生の男性は視力,色覚を第1位に,新入生の女性は体重を第1位に挙げていた。(5)終了後の心配については,再検査の必要なものすべてが心配になるのではなく,20〜67%程度であることが判明した。(6)再検査の項目によっても差異があり,検尿の再検査者の中に心配になった者の率が高いことが分った。(7)批判・不満・要望の意見を検討すると,次の事が明らかになった。(a)一番多い批判は「時間がかかる。混む」という意見であること(b)尿検査の表示についての不満を解消するための努力によって,次年度にその効果が認められたこと(8)得られた意見と現状とのつき合わせを繰返すという息の長い努力が健康診断を望ましい方向へ近づけるのに重要であることを指摘した。
著者
長井 勇太 山村 千絵
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.131-140, 2014-08-31 (Released:2020-04-30)
参考文献数
27

【目的】 本研究は,とろみ調整食品による粘度付加を行った溶液で,甘味,塩味,酸味の味覚閾値や味覚強度がどう変化するかについて調べることを目的に行った.【対象と方法】 健常成人16 名を被験者とした.ショ糖(甘味),塩化ナトリウム(塩味),酒石酸(酸味)を蒸留水に溶かし,濃度の異なる味溶液を調製した.トロミパワースマイルを用い,各味質において,とろみ無添加溶液,1%とろみ溶液,2%とろみ溶液を調製した.認知閾値の測定時は,3 味質ともに6 段階の濃度の溶液を設定し,明らかに味質が感知できる最低濃度を認知閾値とした.味覚強度の測定時は,3 味質ともに閾値上濃度に設定し,とろみ無添加溶液の味覚強度を基準として,1% とろみ溶液と2% とろみ溶液の味質をどの程度の強さで感じたかを,-3 から+3 までの7 段階で評価させた.【結果】 1.認知閾値:甘味では,とろみ無添加溶液と比べ,2% とろみ溶液は閾値が有意に大きかった(p<0.05).塩味では,各溶液間で有意差はなかった.酸味では,とろみ無添加溶液と比べ,1% とろみ溶液(p<0.001),2% とろみ溶液(p<0.001)は,閾値が有意に大きかった.また,1% とろみ溶液と比べ,2% とろみ溶液は閾値が有意に大きかった(p<0.05).2.味覚強度:甘味では,2% とろみ溶液は,他の溶液よりも有意に甘味が弱いと評価された(p<0.01).塩味では,各溶液ともに同程度の塩味であると評価された.酸味では,とろみ溶液はとろみ無添加溶液よりも有意に酸味が弱く(p<0.001),かつ,2% とろみ溶液のほうが1% とろみ溶液よりも有意に酸味が弱い(p<0.001)と評価された.【結論】 飲食物にとろみを付けると,粘度により味の感じ方が弱くなるが,とろみ調整食品に含まれている成分によって,異なる味の変化を示す場合があることが示唆された.