著者
龍野 浩寿 鈴木 英子 鈴木 英子 Suzuki Eiko
出版者
群馬県立県民健康科学大学
雑誌
群馬県立県民健康科学大学紀要 (ISSN:18810691)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.1-15, 2017-03

目的:本研究は日本の統合失調症をもつ人の生活機能の評価に関する研究を概観し,その動向および課題を明らかにする.方法:医学中央雑誌Web版Ver.5を用いて1986年から2015年の論文を検索し,その中で2001年にWHOがICFモデルを発表した前後の尺度を用いた研究に注目し,その動向と課題を明らかにした.文献検索のキーワードは「統合失調症」「生活機能」「尺度」「ICF」とした.結果:統合失調症をもつ人の生活機能を評価する尺度は,12件認められた.これらのうちICFモデルの発表後,尺度の開発や日本語版の作成および尺度活用の文献は6件であった.これらの尺度は,医学モデルの障害や疾病の評価のみならず広く生活の機能を評価していた.統合失調症患者の生活機能の評価の視点が,「出来ないこと」の評価から「できることへの評価」に移行し,社会モデルとして患者を前向きにとらえることができるようになった.しかし,医学モデルの尺度研究と比較して社会モデルで開発された尺度は数が少なく,その活用は乏しい現状であった.結論:今後は統合失調症をもつ人の生活機能を評価するために「社会モデル」の尺度開発および活用が求められる.Aim : This study was a literature review to elucidate research trends and issues related to the assessment of functioning in individuals with schizophrenia in Japan. Methods : We searched the Ichushi Web Database (ver.5) for literature published between 1986 and 2015 using the keywords "schizophrenia", "functioning", "scale", and "ICF". We focused on studies that evaluated scales developed based on the ICF model published by the World Health Organization and investigated the research trends and issues related to developing rating scales. Results : Twelve research papers focusing on rating scales for functioning in individuals with schizophrenia were identified, and of these, six papers assessed scales systematically developed after the ICF model was published. These scales assessed a wide range of deficiencies in functioning in the medical models and assessments of illnesses. The focus of the issues assessing functioning in individuals with schizophrenia has undergone a change from emphasizing "what cannot be done" to "what can be done". This has enabled positive assessments of patients based on social models. However, compared to scales based on medical models, scales based on social models are still rare and not widely used. Conclusion : The findings suggest the need for further development and use of systematic rating scales based on "social models" to assess functioning in individuals with schizophrenia.総説
著者
瀬戸口 ひとみ 糸嶺 一郎 朝倉 千比呂 鈴木 英子
出版者
日本保健福祉学会
雑誌
日本保健福祉学会誌 (ISSN:13408194)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.35-45, 2017-03-21 (Released:2017-07-25)
参考文献数
34
被引用文献数
1

目的:統合失調症者の病いとの「折り合い」の概念について定義を明確にする。方法:Rodgers(2000)の概念分析アプローチ法を用いた。データ収集は、医中誌他、6つのデータベースを用いた。検索語は「折り合い」、「折り合い」の類似概念として「受容・統合失調症」を用いた。英論文では「Identity adaptation schizophrenia」で検索を行った。最終的に抄録のある原著のみとし、日本語論文32編、英論文2編を抽出した。各文献について先行要件、属性、帰結の内容を抽出し、各項目をカテゴリー化した。結果:属性として、【病気との共存】【自己に対する肯定的認識】【今の自分にあった家族や人との付き合い方】【新たな価値観の獲得 】【セルフモニタリングの強化】【自分らしく生きる】の6つのカテゴリーが抽出された.先行要件は個人的要因と環境的要因の二つに大別され,個人的要因として【病いに関連する苦悩】【病いに関連した否定的体験】【日常生活困難感とその対処】【統合失調症と知って生じる新たな疑問】、環境要因として【治療】【家族のサポート】【他者との関係】【制度・社会資源】の4つのカテゴリーが見いだされた。帰結は【生き方の定まり】【対人交流への自信の獲得】【社会の中で新たな役割を見出す】、【自己実現・自己決定】【医療への期待】【新たな居場所を見出す】の6つのカテゴリーが抽出された。結論:統合失調症者の病いとの「折り合い」の概念は「自分らしく生きる」であった。しかし、統合失調症者は、偏見をはじめとする病いの体験に苦しんでいた.統合失調症者は、病いによって自信を失いながらもその中で体験したことを糧に,病いを得る前とは違った自己になることを経験しつつ、【自分らしく生きる】ことを選び取っていた。当事者が病いを受け入れ、共存できるような援助と自己を肯定的に捉えられるようなケアの構築の必要性が明確になった。
著者
丸山 昭子 鈴木 英子 安梅 勅江
出版者
日本保健福祉学会
雑誌
日本保健福祉学会誌 (ISSN:13408194)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.53-61, 2002-10-31 (Released:2017-09-15)

本研究は、認可保育所を利用している子どもの発達に対する、保育時間(通常・長時間)、育児環境との関連を明らかにし、今後の保育サービスの課題を検討することを目的とした。全国の認可夜間保育所及び併設の昼間保育所(全41ヵ所)のうち20ヵ所の保育所にて、1988年10月に保護者を対象とし保育時間・育児環境に関する質問紙調査を行い、経年的な子どもの発達との関連を検討するために2000年3月に担当保育士による客観的指標を用いた子どもの発達評価を実施し、解析可能な551組を本研究の対象とした。本研究の結果を要約すると以下の通りである。(1)一定基準の質が確保されている認可保育所において、長時間保育と子どもの発達との関連がないことから、質の高い長時間保育サービスが子どもの発達に影響を及ぼさない可能性が示唆された。(2)育児環境と子どもの発達とは、既存研究と同様に関連が認められたことから、育児環境の重要性が再認識された。(3)長時間保育の利用者では社会的な繋がりが希薄で、特に育児相談者が得難い状況にあることが明らかになり、社会的サポートのあり方への検討が必要である。(4)今後さらに保育サービスの質の向上を目指した取り組みが求められる。
著者
塩見 直子 鈴木 英子 松谷 弘子 加古 幸子
出版者
日本健康医学会
雑誌
日本健康医学会雑誌 (ISSN:13430025)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.205-217, 2021-07-27 (Released:2021-10-16)
参考文献数
42

大学病院の看護師のバーンアウト予防を意図し,職業的アイデンティティとバーンアウトの関連および職業的アイデンティティの高い者の特徴を明らかにした。調査協力の得られた関東圏の大学病院4施設に勤務する看護師長,助産師,非常勤看護師を除く全看護師2926名を対象として,Maslach Burnout Inventory Human Service Survey (MBI-HSS),看護師の職業的アイデンティティ尺度,短縮版3次元組織コミットメント尺度を使用した無記名自記式質問紙調査を実施した。有効な回答を寄せた看護師1452名を解析の対象とした。解析対象者の年齢(平均値±標準偏差,以下同じ)は32.53±9.56歳,臨床経験年数は9.49±8.36年であった。MBI-HSSの総合得点は,11.93±2.68点,職業的アイデンティティの合計点は61.92±8.40点であった。重回帰分析の結果,「職業的アイデンティティ」とMBI-HSSの総合得点との関連が認められ(β=-0.257, p<0.01),職業的アイデンティティが高い者は,バーンアウトしにくいことが明らかになった。職業的アイデンティティが高い者は,①年齢,臨床経験年数が高く,配偶者や子どもがあり,職位が副師長・主任であることが多く,②「病院はキャリアを支援してくれる」,「現在の給与に満足している」,「休みの希望が通りやすい」など組織を肯定的に評価する割合が高く,③「情動的コミットメント」,「継続的コミットメント」,「規範的コミットメント」の点数が高く,④「組織は個人の価値観を理解してくれない」,「今の職場を辞めたい」,「今の仕事を辞めたい」と回答する割合が少なかった。これらの職業的アイデンティティの高い者の特徴を参考に人材を育成していくことは,看護師のバーンアウト予防につながると考える。
著者
高野 美香 鈴木 英子 髙山 裕子
出版者
日本保健福祉学会
雑誌
日本保健福祉学会誌 (ISSN:13408194)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.25-36, 2016-09-30 (Released:2017-09-25)
参考文献数
26
被引用文献数
2

【目的】大学病院に勤務する新卒看護師のバ-ンアウトの関連要因を職場環境の視点から明らかにする。【方法】東京23 区および政令指定都市にある350 床以上の8 病院に勤務する新卒看護師508 人を対象とし,2012 年9 月,個人属性,労働環境,組織風土,職場の教育支援およびMBI-HSS(日本版バ-ンアウト尺度)から構成された自記式質問紙調査を用いて横断研究を実施した。【結果】回収数は364 人(回収率71.7%),有効回答は 317 人(有効回答率87.0%),バ-ンアウトの総合得点の平均は,12.4 点だった。バ-ンアウト総合得点を目的変数として,重回帰分析をおこなった結果,自由度調整済み決定係数(R²)は,0.318 で,32%の説明率があった。重回帰分析で,最終的に有意になった要因は,個人属性では,勤務先の職場での看護実習の経験があるもの,労働環境では,2 交替制勤務のもの,看護記録の量が少ないと感じているもの,仕事内容に関する満足度が高いものはバ-ンアウトが低かった。また,何か問題が生じたらすぐに話し合いをする組織風土で働いているもの,職場の教育支援として,プリセプタ-シップを支えてくれる教育担当者がいるもの,初めてのケアや処置に先輩が同行してくれるもの,看護実践の具体的な支援を受けているものは,バ-ンアウトが低かった。【結論】新卒看護師は,勤務先の職場での看護実習の経験があるとバーンアウトしにくい。職場環境においては,話し合いができるような組織風土のなかで,看護記録の負担が少なく,仕事に対する満足度が高いと,バ-ンアウトが低減できるといえる。また,職場の教育支援においては,プリセプタ-シップを支えてくれる教育担当者に満足をしていて,初めてのケアや処置には先輩が同行し,看護実践の具体的な指導があると,バ-ンアウトが低減できるといえる。
著者
奥村 武久 河原 啓 高野 新二 岡田 三千代 林 光代 鈴木 英子 野田 恵子 木村 純子 長井 勇 植本 雅治
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学保健管理センター年報 (ISSN:09157417)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.47-55,

定期健康診断に対する一般学生の持つ不安をアンケートによって調査した。1983年度と1984年度の回答を比較することにより,次の結果を得た。(1)1983年の結果と1984年の結果が非常に近似した。(2)健康診断の必要性は,1984年の新入生の89.6%,大学院生の94.3%が肯定した。否定は新入生の女性の12.8%が一番高い数字であった。(3)健康診断前の不安は,新入生の場合,男性の25.4%,女性の31.1%で女性の不安率が高かった。(4)不安の理由として,新入生の男性は視力,色覚を第1位に,新入生の女性は体重を第1位に挙げていた。(5)終了後の心配については,再検査の必要なものすべてが心配になるのではなく,20〜67%程度であることが判明した。(6)再検査の項目によっても差異があり,検尿の再検査者の中に心配になった者の率が高いことが分った。(7)批判・不満・要望の意見を検討すると,次の事が明らかになった。(a)一番多い批判は「時間がかかる。混む」という意見であること(b)尿検査の表示についての不満を解消するための努力によって,次年度にその効果が認められたこと(8)得られた意見と現状とのつき合わせを繰返すという息の長い努力が健康診断を望ましい方向へ近づけるのに重要であることを指摘した。
著者
川村 晴美 鈴木 英子 中澤 沙織 田辺 幸子
出版者
日本健康医学会
雑誌
日本健康医学会雑誌 (ISSN:13430025)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.351-360, 2021-10-08 (Released:2022-01-31)
参考文献数
49

急性期病院で認知症高齢者をケアする看護師の困難感とバーンアウトとの関連を明らかにすることを目的として,全国14カ所の国公立系急性期病院の認知症高齢者が入院している病棟に勤務する看護師2032名を対象とした自記式質問紙調査を実施した。質問項目は,日本版Maslach Burnout Inventory- Human Services Survey(MBI-HSS)に準じたバーンアウトに関する22項目,急性期病院で認知症高齢者をケアする看護師の困難感に関する16項目,ワークライフバランスに関する24項目,個人要因18項目,職場環境要因10項目とした。有効回答数は1235名(60.8%)であった。MBI-HSSによるバーンアウト総合得点の平均値は12.6点であり,病院間に有意差は見られなかった。バーンアウト総合得点を目的変数とする重回帰分析の結果,バーンアウトに関連する要因は,標準化偏回帰係数が大きい順に,困難感の総合得点,ワークライフバランスの総合得点,自分の健康を維持する能力,職場に対する満足感であった。認知症看護の困難さを感じている看護師はバーンアウトしやすいことから,このような看護師を対象としたバーンアウトを予防するためのサポートプログラムを構築する必要があると考えられる。
著者
松浦 利江子 鈴木 英子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.319-328, 2017 (Released:2018-02-07)
参考文献数
27
被引用文献数
2 2

目的:精神科看護師の自尊感情の関連要因を患者に対する陰性感情経験も視野に入れて明らかにし,看護師支援策を検討する.方法:9私立精神科病院に勤務する看護師737名を対象に質問紙調査を実施した.有効回答数は365名(49.5%)であった.調査内容は,基本的属性,職場環境要因,心理的健康,自尊感情尺度(Rosenberg, 1965;山本ら,1982)とし,自尊感情尺度合計得点を従属変数とした重回帰分析を行った.結果:重回帰分析の結果,自由度調整済み決定係数は0.44であった.自尊感情尺度合計得点と有意な関連が認められた要因は,環境制御力,患者に対する陰性感情経験への嫌悪度,既婚,職位が主任,コーピング行動は当事者と話し合う手法をとる,最長勤務領域が外科系病棟,であった.結論:患者に対する陰性感情への嫌悪感が過度にならない支援,患者を取り巻く精神科看護師も含めた人的・物的環境を制御する能力としての患者支援技術修得への支援,問題の当事者と話し合う対処方法修得への支援の重要性が示唆された.
著者
川村 晴美 鈴木 英子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.131-141, 2014-06-20 (Released:2014-07-03)
参考文献数
20
被引用文献数
3

目的:看護職のワークライフバランス(以下,WLB)とバーンアウトの関連を明らかにする.方法:首都圏の一般病院で国,公的医療機関,社会保険関係団体,医療法人,会社の設置主体より各1施設選定した5病院に勤務する看護職1,030人を対象とし,自記式質問紙調査を実施した.調査内容はバーンアウト(日本版MBI-HSS)22項目,属性,看護職のWLB指標調査24項目とした.結果:有効回答は798人(有効回答率77.5%)であった.平均年齢は33.8±8.1歳でWLBとバーンアウト総合得点の平均はそれぞれ10.2, 10.9であった.WLB総合得点は,会社が国,公的医療機関,社会保険関係団体,医療法人より有意に高かった(p<0.01).階層的重回帰分析を行った結果,実務職種,残業時間,子どもの有無,WLB認識,仕事と仕事以外の切り替え,目的を持って取り組んでいること,相談相手の有無,WLBとの有意な関連が認められた.結論:設置主体別では,会社はWLBの実現度が高い可能性が明らかになった.また,仕事と仕事以外の切り替えや目標を持って取り組むこと,WLB実現度を上げることによりバーンアウトが予防できる可能性が示唆された.
著者
鈴木 英子 吾妻 知美 丸山 昭子 齋藤 深雪 高山 裕子
出版者
一般社団法人 日本看護管理学会
雑誌
日本看護管理学会誌 (ISSN:13470140)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.36-46, 2014-07-15 (Released:2018-08-10)
参考文献数
28

本研究では,新卒看護師が先輩看護師に対し,職務上アサーティブネスになれない状況と理由を明らかにした.102名の新卒看護師にアサーティブネスの定義を説明した上で「過去1年間に職場でアサーティブにしたかったけれども出来なかった状況」と「理由」を尋ねる自記式質問紙調査を実施した.分析はKrippendorffの内容分析を参考にした.有効回答数は73名で,平均年齢は23.7±4.9歳であった.アサーティブになれない状況は,1.業務分担の依頼を断れない,2.統一されていない指導に対する困惑が言えない,3.仕事に関する叱責や注意に対して反論できない,4.先輩の気になる言動について発言できない,5.自分や新卒看護師に対する言動に反論できない,6.仕事に対する不安が言えない,7.先輩のミスによる濡れ衣に反論できない,8.私的な依頼が断れない,9.その他,に分類された.理由は,1.人間関係を重視した,2.指導を受ける身であるため,3.面倒を避けたいと感じた,4.先輩に育ててもらっているという思い,5.自分が出来ないことを知られたくない,6.仕事を教えてもらえなくなる恐怖,7.やるべき仕事をしないと思われたくない,8.慣れない環境で疲れ切っていた,9.自分に責任が有る,10. 恐怖心を感じた,であった.新卒看護師は,先輩看護師に職務上多種多様な状況で言いたいことを言えないでいた.
著者
鈴木 英子 叶谷 由佳 石田 貞代 香月 毅史 佐藤 千史
出版者
日本保健福祉学会
雑誌
日本保健福祉学会誌 (ISSN:13408194)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.19-29, 2004-03-30

本研究の目的は、日本語版RAS (Rathus assertiveness schedule)を作成し、その因子構造を評価することである。 RASは、Rathusによって開発されたアサーティブネス行動を測定するための尺度であり、欧米では広く使われている。そのRASをback-translationとともに日本語へ翻訳し、看護学生103人のサンプルで検討した。その結果、日本語版RASはテスト-再テスト法(r=0.86 p<0.01)及び折半法(r=0.72〜0.80 p<0.01)で信頼係数が高かった。日本語版RASのクロンバックの信頼係数は0.82〜0.84 (p<0.01)であり、内的整合性が高かった。因子分析では、7因子が抽出され、原版のRASとは、若干の違いがあったものの妥当性が高い可能性が示唆された。