著者
南 盛一 長嶋 和郎
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.1076-1080, 2014 (Released:2015-12-28)
参考文献数
10

症例は84歳男性.約2年前より左乳房腫瘤を自覚していたが放置.吐血のため当院に救急搬送され,上部消化管出血の精査目的に上部消化管内視鏡検査を行った.胃噴門部に約5cm大のBorrmann2型の腫瘍を認め,生検にてtub2の結果であり胃癌の診断となった.また,入院後の胸部CTで左乳房に3.5cm大の腫瘤を認め,乳房超音波検査で低エコー腫瘤として描出され乳癌を否定できなかったため針生検を施行した.病理学的に浸潤性乳管癌と診断され,各々の転移ではなく左乳癌,胃癌の同時性重複癌と判断した.手術は乳癌,胃癌の順に逐次行い,術後補助療法は,乳癌に対してはタモキシフェン内服によるホルモン療法を行っているが,認知症のため胃癌に対する補助化学療法は行わず経過観察中である.男性乳癌は全乳癌の約1%とされ比較的稀で,同時性に胃癌と重複した報告例は本症例が8例目と稀であり,文献的考察を加えて報告する.
著者
深堀 晋 王 利明 笠井 章次 吉川 大太郎 唐崎 秀則 河野 透 齋藤 博哉 長嶋 和郎
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.66-71, 2018 (Released:2018-08-01)
参考文献数
8

われわれは平成26年1月~平成29年5月までに,病理診断によって4例の分節性動脈中膜融解症(segmental arterial mediolysis:以下SAM)を経験した.年齢は60歳から88歳までで,すべて男性であった.全例に緊急手術を行い,摘出検体より中膜の空胞変性など特徴的な所見からSAMと診断した.3例は生存し,1例のみ術後第36病日に肝梗塞によって死亡したが,死因とSAMとの関連性は不明であった.今回,自験例4例と国内で渉猟しえたSAMの報告107例とを合わせ,疫学や発症部位などの特徴を報告する.
著者
今村 栄次 山下 拓史 福原 敏行 長嶋 和郎 郡山 達男 時信 弘
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.172-178, 2009 (Released:2009-05-13)
参考文献数
15
被引用文献数
6 7

症例は76歳女性である.発語の減少,意欲低下で発症し,意識障害の進行と平行して両側耳介腫脹が出現した.発熱,項部硬直をみとめ,髄液細胞数,蛋白,IgG indexの上昇,頭部MRIで進行性の大脳白質病変と脳萎縮をみとめた.耳介軟骨生検の病理所見から再発性多発軟骨炎(RP)と診断した.意識障害と炎症所見は,ステロイド治療にて一時的に改善したが,ふたたび増悪し,多剤による免疫抑制療法をおこなったが改善しなかった.剖検脳では,軟膜および脳実質の血管周囲にびまん性のリンパ球浸潤と炎症性髄鞘破壊をみとめた.RPに関連した髄膜脳炎の剖検例はきわめてまれであるが,病変の主座は炎症性血管周囲炎であることが示唆された.
著者
野島 孝之 長嶋 和郎 竹上 勉
出版者
金沢医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

横紋筋肉腫と鑑別診断上,問題となる悪性軟部腫瘍症例について組織学的,分子生物学・遺伝子学的検討を行った。その結果,横紋筋肉腫の組織学的な診断には,免疫組織化学的にデスミン,サルコメリックアクチンが有効で,両者は大部分の腫瘍細胞に陽性を示したが,ミオグロビンは極一部の腫瘍細胞の胞体内に陽性を示すに過ぎなかった。CD99(MIC2遺伝子産物)は横紋筋肉腫の70%の症例に陽性所見を得、CD99の横紋筋肉腫の診断への有効性を示唆する。しかし,染色態度はEwing肉腫/PNET群では細胞膜に強度の陽性所見を示すのに対し,横紋筋肉腫では細胞質内に弱い染色態度を示すに過ぎず,診断学上の価値はデスミン,サルコメリックアクチンに劣ると思われる。横紋筋肉腫の胞巣型では異なる染色体上の2つの遺伝子、PAX3、あるいはPAX7とFKHRが部分的に結合し、正常とは異なるDNA配列により異常な蛋白を産生し、腫瘍が発生すると考えられている。遺伝子解析ではPAX-FKHRの再構成キメラ遺伝子の存在が胞巣型に特異的であり,検索した胞巣型全例にこのキメラ遺伝子を検出した。鑑別診断上問題となる悪性リンパ腫,Ewing肉腫/PNET群,悪性線維性組織球腫,胎児型横紋筋肉腫では検出されなかった。一方,多形型横紋筋肉腫7例中1例にPAX-FKHR変異遺伝子を検出した。組織学的には多形細胞,巨細胞を交える紡錘形細胞肉腫の像で,胞巣型の部分は全く含まれていなかった。PAX-FKHR変異遺伝子の検出は1例のみであるが,PAX-FKHR変異遺伝子の存在は胞巣型と多形型の腫瘍発生機構における類似性を示唆するものであった。