著者
南後 守 大倉 一郎 住 斉 野澤 康則 垣谷 俊明 長村 利彦
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本計画の目標は、光合成での光エネルギー変換系でのタンパク質複合体の連動したシステムの構造とその機能について基礎的な研究を行うために広範囲の研究者と意見交換を行うことである。そして、社会的に要請の強いこの分野の研究に対して貴重な情報を提供することである。この分野の研究の進展が目覚ましく、したがって、基礎的な研究情報の交換を継続して行い、さらに、共同研究へと発展させることが必要である。本計画では、光合成での光エネルギー変換システムでの基礎的な研究に焦点を絞り、つぎの3点について研究情報の交換を行う。1)アンテナタンパク質複合体の動的構造と機能の関係、2)光エネルギー変換系での色素の構造と機能との関係 3)光エネルギー変換機能をもつデバイスの開発。講演会を年間5回開催して情報交換を行った。講演会では光合成、光エネルギー変換、タンパク質複合体および色素の構造と機能、核酸、分子モーターのキーワードで互いの最先端の仕事内容を発表していただいた。この研究会に参加していただた方はそれぞれの分野でのスペシアリストなので講演会で情報交換を行うことが本研究の企画を進めることになった。ここで、主な研究費として、会議費、国内旅費、それに伴う消耗費が必要となった。また、必要に応じて研究会のメンバー以外の方に講演、事務処理などの手伝いを依頼した。ここで、謝金が必要となった。さらに、外国人研究者(Prof, Scheer(独)およびProf, Cogdell(英))に来日していただいて臨時セミナーで講演してもらった。ここで、この分野の先導的な欧州の第一線の研究者と交流をもつために外国旅費が必要となった。
著者
長村 利彦 伊藤 冬樹
出版者
九州大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

近年, バイオイメージングや光線力学療法の観点から, 近赤外蛍光が注目されてきている. しかしながら, 近赤外蛍光色素の蛍光量子収率は一般的に非常に低い. これはπ共役系を拡げるために分子構造が複雑であることや, エネルギーギャップが小さくなると蛍光放射速度定数は小さくなるという本質的な問題に起因する. 本研究では, 光-分子強結合場における近赤外蛍光の増強を試み, 増強に及ぼす因子・機構解明を目的とした. 光一分子強結合場として金ナノロッドとDNAとのナノ複合体を利用し, その光学特性について検討した. 本研究の開始段階で, 金ナノロッドの周囲に存在する界面活性剤の影響が大きいことが明らかとなった. この影響を取り除くために, 以下のような光一分子強結合場の構築を行った.第一に, 交互積層法を用いて, 金ナノロッド表面への修飾を行い, ナノ構造制御した. 界面活性剤で被覆されている金ナノロッドヘカチオン性高分子とアニオン性高分子を交互に積層させ, 最表面ヘアミンと反応できる近赤外蛍光標識試薬(ICG-Sulfb-OSu)を修飾した. この系において最大16倍, 平均1.7倍程度の増強が確認された. しかしながら, 粒子間の凝集などの影響により定量的な検討を行うことは困難であった.次に, 金ナノロッドを高度な構造規則性を有する天然高分子であるDNAに分散させた高分子積層薄膜による反応場の創成をおこなった. DNAを薄膜媒体として金ナノロッドを分散した薄膜を作成したところ, 金ナノロッドの分散濃度の増加にともない, 元の長軸由来のバンドより長波長側に新たな吸収が観測された. この吸収はPVAを媒体とした場合には観測されなかった. これはDNAによって配列制御されたロッド間でのプラズモン結合を示唆する. この薄膜を用いて近赤外蛍光の増強を試みたところ, 強度は約3倍増加した.