- 著者
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溝口 義人
門司 晃
- 出版者
- 日本生物学的精神医学会
- 雑誌
- 日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
- 巻号頁・発行日
- vol.24, no.2, pp.117-122, 2013 (Released:2017-02-16)
- 参考文献数
- 41
- 被引用文献数
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ミクログリアは中胚葉由来の免疫担当細胞で,感染や組織損傷などに応答し活性化すると,貪食能を獲得し,炎症性サイトカイン等の細胞障害因子やBDNFを含む神経栄養因子を産生放出する。最近は,ミクログリアが細胞外環境を積極的に監視して,神経炎症のみではなく,神経回路形成や神経可塑性など脳機能の恒常性維持にも関与すると報告されている。またミクログリア活性化はうつ病や統合失調症など様々な精神疾患,とくに急性期における関与が指摘されており,向精神薬によるミクログリア活性化抑制作用の細胞内機序としては,細胞内Ca2 +シグナリングが重要な役割を担う可能性が高い。また種々の精神疾患への関与が指摘されるBDNFもミクログリア活性化において重要な役割を担っており,今後BDNFの前駆体であるproBDNFによるミクログリア活性化の制御機序を,とくに細胞内Ca2+シグナリングに着目して解明することが重要である。