著者
間藤 徹
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

ホウ素はカルシウムとともにペクチン質多糖をラムノガラクツロナン(RG)-II領域で架橋することに機能している。RG-II領域でのペクチン質多糖の架橋はホウ素だけでは完成せずカルシウムによって補強されることが必要である。つまりペクチン質多糖の架橋にはホウ素とカルシウムがともに存在していることが必要であり,それぞれ片方だけでは機能しない。カルシウムはガラクツロン酸残基のウロン酸同士を配位結合で架橋するが,架橋するためにはメチルエステル化されて分泌されてくるウロン酸メチルエステルを加水分解する必要がある。この加水分解を触媒するのがペクチンメチルエステラーゼ(PME)である。本研究ではタバコ培養細胞,ニンジン根,エンドウ胚軸の本酵素活性を性質を検討した。いずれの材料でもほとんどの活性が細胞壁に会合して存在したが1M NaClによって可溶化された。ニンジン根の酵素は塩基性アイソザイムが少なく中性アイソザイムがほとんどであったが,タバコ培養細胞では塩基性アイソザイムが主であった。いずれのPMEも活性発現にCaが必須でKm値は約3mMであった。このCaはNaによって代替することができたがNaのKm値は約50mMと生理的な濃度ではなかった。CaはPMEの生成物であるウロン酸残基を架橋する元素であるとともにPMEの活性発現を通してペクチン質多糖の架橋に機能することが明らかになった。ホウ素はPMEの活性発現には関与していなかった。タバコ培養細胞細胞壁から抽出精製したPME塩基性アイソザイムのN末アミノ酸組成から本酵素のDNAクローニングをすすめている。
著者
間藤 徹
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.63, no.8, pp.1395-1398, 1989-08-15 (Released:2008-11-21)
参考文献数
16
被引用文献数
3 1
著者
間藤 徹
出版者
一般社団法人 植物化学調節学会
雑誌
植物の化学調節 (ISSN:03889130)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.198-206, 1997-12-25 (Released:2018-03-15)
参考文献数
33
被引用文献数
5
著者
吉野 章 北野 慎一 吉積 巳貴 清水 夏樹 間藤 徹 東樹 宏和 真常 仁志
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-07-10

農畜産業を低窒素型に変革する可能性の研究に取り組んだ。第一に、30年以上の間無肥料で野菜を栽培している農家の土壌と土壌圏微生物を解析し、限られた養分しかない環境における植物の適応を解明した。そして、そうした農産物の価値を伝える流通業者のマーケティング戦略の特質を指摘した。第二に、日本において山間部で放牧を行う酪農の可能性を評価し、制度的制約と市場競争力が厳しい状況にあることを明らかにした。第三に、兵庫県南あわじの農業を調査し、これまの循環型農業への取り組みと、社会・経済環境の変化に伴う新たな方向の模索を明らかにした。
著者
間藤 徹
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

ホウ素は高等植物の必須元素であり、ホウ素が欠乏すると根の伸長、新葉の展開が停止する。特に開花期には要求量が多く、欠乏すると花粉の形成不良や不稔を引き起こし、子実収量が激減する。さらにホウ素は植物体内での移動性が乏しく、常に土壌から供給されていることが必要である。従って、開花期に下位葉からホウ素が移動すれば、生殖器官はホウ素の供給を受けることができ、土壌のホウ素欠乏による影響を受けにくくなることが期待できる。そこで植物体内におけるホウ素の移動性を検討するため、^<10.8>Bを供給して栽培したヒマワリ幼植物の培養液に^<10>Bを与え、一定時間後の各葉位のホウ素の同位体比を測定し、ホウ素の移動度を推定した(実験1)。さらに水耕したヒマワリ幼植物の地上部を根際で切除し、根から地上部に移行する導管液を採取した。地上部切除と同時に培養液の^<10.8>Bを^<10>Bに切り替え、導管液中のホウ素の比活性の経時的変化を追跡した(実験2)。実験2から、導管液のホウ素の比活性は培養液交換後、6時間でほぼ外液のホウ素の比活性と等しくなった。ヒマワリの根の地上部に輸送されるホウ素のプールは半減期2時間程度の、すばやく外液と交換できるホウ素から構成されていた。実験1からは、最上位葉に運搬されるホウ素が根から導管を通って運ばれるホウ素ではないことが示された。すなわちホウ素の比活性が短時間で上昇するのは第2、3葉であって、第一葉の比活性は12時間遅れて上昇した。つまり、第一葉に運ばれるホウ素は下位葉を経由していることが示された。これらの検討から、ホウ素は体内で導管と師管の双方を経由して輸送されていることが明らかになった。
著者
小林 優 間藤 徹
出版者
京都大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

ペクチンは植物細胞壁を構成する主要成分のひとつであり,荷電した親水性ゲルとしてプロトプラストを取り巻く微小環境の維持,外部環境からの養分吸収等に重要な役割を果たすと考えられている.本研究ではペクチンの生理機能をより詳しく理解するため,ペクチンの部分領域であるラムノガラクツロナンII(RG-II)に構造変異を導入しその表現型を解析することを試みた.変異導入部位としてRG-IIの特異的構成糖KDOに着目し,その生合成に必要な酵素CTP:KDOシチジル酸転移酵素(CKS)のT-DNA挿入変異株を探索したが,ホモ変異株は得られなかった.今年度はこの原因について解析を進めた結果,cks変異は花粉の形成・発芽には影響しない一方,花粉管伸長を著しく阻害することを明らかにした.In vitro発芽させた変異型花粉は花粉管が短く径方向に膨れていた.この結果は,通常の細胞分裂・伸長過程では変異型RG-IIでも致命的な機能欠損が起こらないが,花粉管のように急速に伸長する組織ではKDOを含む完全なRG-IIが必須であることを示唆し,生殖成長過程におけるペクチンの重要性が示された.ペクチンと結合する受容体型キナーゼの一種,細胞壁結合型キナーゼ(WAK)の機能研究を行った.タバコのWAKホモログNtWAKL1にアフィニティ精製タグを付した融合タンパク質をタバコ培養細胞で発現させ,界面活性剤で可溶化・アフィニティ精製した標品をblue native PAGEに供した.NtWAKL1の見掛けの分子量は500kD程度となり,複合体として可溶化されていることが示唆された.この標品を二次元電気泳動に供し検出されたスポット1種類の質量分析を行った結果,機能未知のタンパク質が検出された.今後より多くのスポットを分析することでWAKの相互作用分子が明らかとなり,機能に関する手がかりが得られると期待される.