著者
関 なおみ
出版者
日本国際保健医療学会
雑誌
国際保健医療 (ISSN:09176543)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.1-11, 2009 (Released:2009-04-28)
参考文献数
15
被引用文献数
2

戦後我が国で行われた保健衛生対策である「蚊とハエのいない生活実践運動」は、住民参加型開発と呼びうる地区衛生活動の一例である。これは衛生害虫を自分たちの生活の中の問題として位置づけ、住民の手で防除を成し遂げるという方法で始まったものであるが、後期にはそれを専門家の目で評価し、改善していくという発展も見られた。住民組織への活動普及というメカニズム自体は当時の占領国アメリカから持ち込まれたものであるが、それを受け入れる土壌と住民組織がすでに日本各地に存在していたことは注目に値する。先進国の中でも格段によい衛生状態を保っている日本の現状を達成する鍵となった戦後の地区衛生活動の経験は、今後の途上国支援のあり方に大きな示唆を与えると考えられる。
著者
関 なおみ 矢口 昇
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.81-87, 2003
参考文献数
16
被引用文献数
3

In recent years the number of homeless people in metropolitan areas of Japan has been growing. In Tokyo alone, there are an estimated 5,600 homeless people. The Toshima City government has had outreach programs for the homeless people from 1984. In this program, medical staffs and sanitary inspectors have checked body lice infestation in patients since 1995. We analyzed the personal history and life style of the homeless people, and also checked lice infestation among the homeless people who came to outreach programs held in other municipalities in Tokyo. The average infestation rate of body lice found in outreach programs of Toshima City from 1999 to 2001 was 6.5%. The age of the most people infested with body lice was in their fifties, and many of them had histories of homelessness of less than a year. In outreach programs in Shibuya, Shinjuku, and Kita Cities, no body lice patients were found, but at a clinic of the Johoku Welfare Center in Taito City, about 100 body lice cases are found each year. This number is more than the total number of body lice patients in Japan reported by the Ministry of Health and Welfare because the reporting of body lice cases from welfare centers or public health offices is not obligatory. Lice-borne diseases are still epidemic in the world. It is important to consider problems related to poverty in the metropolitan areas in Japan, especially the need for fulfilling basic sanitary needs for homeless people. The monitoring of body lice cases and adequate support including lice control are strongly recommended.
著者
関 なおみ 貞升 健志 甲斐 明美 中島 由紀子 渡瀬 博俊 上田 隆 前田 秀雄 小林 一司 石崎 泰江 広松 恭子 岩下 裕子 本 涼子 神谷 信行 栗田 雅行 田原 なるみ 長谷川 道弥 新開 敬行 林 志直
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.238-250, 2015

<b>目的</b> 2014年 8 月,代々木公園が感染地と推定されるデング熱が発生した。これに対し,東京都の各担当部署が関係自治体と協力して対策を講じた。本経験は公衆衛生活動として他自治体や関係機関に共有すべき貴重な事例であると考え,報告する。<br/><b>方法</b> 8 月26日~11月 5 日に東京都が国内感染のデング熱流行に対して実施した対策について,1)リスクコミュニケーション・情報共有,2)患者への対応,3)蚊への対策,4)検査対応,の 4 分野について経過をまとめ,得られた結果について分析を行った。患者の疫学情報については2014年第 1~44週保健所受理分を対象とした。デング熱の国内感染が疑われる患者の血清および蚊検体の検査は東京都健康安全研究センターで実施した。<br/><b>結果</b> 都庁内に設置されたデング熱専用相談電話窓口に寄せられた相談件数は3,005件であった。東京都が実施した報道発表回数は,患者届出受理数および専用相談電話実績について39回,蚊の対策について 9 回であった。<br/> 東京都における国内感染症例は108件(男性62.7%,年齢中央値31.1(3~77)歳)で,2014年 第35~44週に報告されており,第36週がピーク(35件)となっていた。推定発症日の分布は 8 月 9 日~10月 7 日,推定感染日の分布は 8 月 3 日~10月 3 日であった。このことから,7 月下旬には代々木公園内にデング熱ウイルスに感染した蚊が複数生息していた可能性が示唆された。<br/> 代々木公園で週 1 回実施された蚊の調査(全11回のべ200トラップ)で捕集された蚊の総数は1,152頭で,種の同定においてヤブカ属が73.7%(856頭)であった。ヤブカ属を対象としたデングウイルス検査では,9 月 2 日,9 月 9 日,9 月16日分について陽性となった。<br/> デング熱の国内感染が疑われる患者の血清241件について確定検査を実施し,うち78件が陽性(国内感染症例73件,輸入症例 5 件)となった。ウイルスが検出された国内感染症例の血清および蚊検体の遺伝子解析では,すべて血清型 1 型 遺伝子型I型であり,全株の相同性が埼玉県在住の初発患者から分離されたウイルスの遺伝子配列と99%以上一致し,都内で感染したデング熱患者の原因ウイルスは単一のデングウイルスであった可能性が高いと考えられた。<br/><b>結論</b> 2020年のオリンピック,パラリンピック開催を予定している東京都としては,デング熱をはじめとした蚊の媒介する輸入感染症の国内発生について対策の強化が必要と考えられた。
著者
関 なおみ
出版者
JAPANESE SOCIETY FOR TUBERCULOSIS
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.78, no.5, pp.395-399, 2003-05-15 (Released:2011-05-24)
参考文献数
17

近年わが国において成人集団における集団感染リスクは増加傾向にあるが, これらの事例は感染経路の同定が難しく, 予想外に感染が拡大している可能性があり, 対応に苦慮することが多い。今回当保健所が経験した中小企業での集団感染事例について, 対象年齢を60歳未満まで引き上げたツベルクリン反応検査 (以下, ツ反), 換気測定, 聞き取り調査等をもとに検討した。初発患者は38歳男性で病型班bII3pl, 喀痰検査はGaffky8号, 培養+ (INH耐性) であった。調査対象の事業所は2・7階に分かれ職務内容ごとに配置が異なっていた。30歳未満を対象としたツ反により, 両階合わせて感染者3名, リンパ節結核1名が発見された。このため, 対象年齢を60歳未満まで引き上げツ反を実施したところ, さらに13名が感染の疑いと判断された。当初の情報では, 初発患者の出入りは2階のみで7階職員との接触はほとんどないとのことであったが, 現場視察と聞き取り調査等から感染状況が推測された。都市部中小企業職員はデインジャーグループに属さないが, 定期外検診において積極的な調査の重要性が示唆された。
著者
関 なおみ
出版者
医学書院
雑誌
公衆衛生 (ISSN:03685187)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.63-65, 2004-01
著者
関 なおみ
出版者
医学書院
雑誌
公衆衛生 (ISSN:03685187)
巻号頁・発行日
vol.67, no.6, pp.462-464, 2003-06
著者
関 なおみ
出版者
医学書院
雑誌
公衆衛生 (ISSN:03685187)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.431-433, 2002-06