著者
関 一彦 谷 忠昭
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.60, no.10, pp.1018-1021, 1991-10-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
11
被引用文献数
1

ハロゲン化銀に色素を吸着させることで,ハロゲン化銀の感光感度を可視領域全体,あるいは赤外域まで広げることができる.この現象は分光増感とよばれ,写真における重要な技術である.その機構解明を目的として, 5種類のメロシアニン色素と臭化銀との界面の電子構造を紫外光電子分光法により直接決定した.分光増感の電子伝達機構(励起された色素から臭化銀の伝導帯への電子伝達)に基づくことで,得られた電子構造は実際に観測される増感効率の化合物依存性を良く説明できた.また,色素と臭化銀の接触により,両者の真空準位の大きなシフトが観測され,ハロゲン化銀,色素を単独に測定して真空準位を揃えるという従来の電子構造推定法が誤っていることがわかった.
著者
関 一彦 鶴田 和仁 稲津 明美 福本 安甫 繁田 雅弘
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.243-248, 2013 (Released:2013-08-23)
参考文献数
26
被引用文献数
1 4

目的:パーキンソン病(PD)では,罹病初期から非運動性症候の一つである嗅覚障害が顕著に認められ,またその自覚がないことは広く知られているが,低下する嗅覚の種別などについては検討されていない.よって,今回は,PDにおいて低下する嗅覚の種別(臭素)について健常者と比較し障害のプロフィールを明らかにすることを目的とした.方法:対象は,神経内科外来に通院中で臨床的にPDと診断されている女性患者14名(平均年齢71.6±6.1歳)と,精神疾患及び神経疾患に罹患してない健常高齢者女性11名(平均年齢68.9±6.9歳)であった.検査には,スティック型嗅覚同定能力検査法(OSIT-J)(Odor Stick Identification Test for Japanese)を用いた.結果:PD,健常者ともに低下していた臭素は材木・みかん・家庭用のガスであった.PDは,香水に対する嗅覚は保たれていた.一方,墨汁・メントール・カレー・ばら・ひのき・蒸れた靴下(汗臭い)・練乳(コンデンスミルク)の臭素は,健常者に比べ有意に低下しており,PDの補助診断指標となる可能性が示された.結論:PDで低下している嗅覚の内容を把握しておくことは,日常生活における危険の回避において,また効果的なリハビリテーションのプログラムの遂行において重要であると考えられた.