著者
横井 愼一 関口 麻衣子 加納 塁 小林 哲郎
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.211-215, 2010
被引用文献数
2

7歳6カ月齢の雄のヨークシャーテリアの顔面,右後肢から臀部にかけて,丘疹,鱗屑および痂皮を伴う脱毛が認められた。病変部の皮膚押捺塗抹検査では棘融解細胞を疑わせる円形の細胞が見られ,皮膚掻爬検査では鱗屑中に糸状菌の菌糸を認めた。病理組織学的には液状変性を伴う表皮内および毛包壁へのリンパ球浸潤からなる境界部皮膚炎の像を示し,角層中にはPAS陽性の菌糸様構造物を認めた。角層の真菌培養および遺伝子検査の結果, <i>Trichophyton rubrum</i>が検出されたことから,本症を<i>T. rubrum</i>による皮膚糸状菌症と診断した。<br>
著者
田中 克実 桃井 康行 峯岸 美知代 関口 麻衣子 紺野 克彦 田中 あかね 松田 浩珍 岩崎 利郎
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.5-11, 2003 (Released:2007-11-02)
参考文献数
12

本研究では犬の肥満細胞腫の病態、予後、術後の転移を予測する指標を検索する目的で、肥満細胞腫の犬12症例を対象に血中ヒスタミン濃度および末梢血をカルシウムイオフォアで刺激した後のヒスタミン放出を測定した。その結果、肥満細胞腫の犬の血中ヒスタミン濃度は健常犬と比較して高値であり、腫瘍の大きさ、病期と相関する傾向が見られ病態や治療効果の監視に有用である可能性が示された。血中ヒスタミン濃度が特に高値であった肥満細胞腫の犬9例の生存期間は2-130日(中央値29日)と極めて短く、予後との間に相関傾向がみられた。また末梢血の肥満細胞数の指標として血液を刺激した後のヒスタミン濃度を測定した。その結果、転移がみられた8例のうち6例で明らかなヒスタミン放出がみられ、転移がない4例ではみられなかった。このことから、刺激によるヒスタミン放出は転移の存在を示唆すると考えられた。また特に著しいヒスタミン放出が見られた6症例では治療法に関わらず全例が130日以内に死亡した。本研究により血中ヒスタミン測定が肥満細胞腫の予後の予測や治療法の選択に際し、有用な情報を提供し得ることが示された。
著者
山中 あずみ 関口 麻衣子 紺野 克彦 桃井 康行 岩崎 利郎
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.42-47, 2002 (Released:2007-02-15)
参考文献数
2
被引用文献数
1

犬の鼻部には様々な疾患が発症するが,それら疾患の臨床所見は類似していることが多く,臨床所見あるいは病歴からのみでは確定診断が困難な事がある。しかし,疾患により治療法,予後が大きく異なるために,正確な診断が求められる。本研究では,鼻部に発症した皮膚疾患5例について生検を行い,病理組織学的に1)好酸球性毛包炎,2)日光性皮膚炎,3)落葉状天疱瘡,4)尋常性天疱瘡,5)DLE(円板状エリテマトーデス),と診断した。
著者
西山 美衣 伊從 慶太 関口 麻衣子 岩崎 利郎 西藤 公司
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.77-80, 2015 (Released:2015-07-29)
参考文献数
6
被引用文献数
2

本稿では,稟告および病理組織学的所見が熱傷と合致した犬および猫の3例を経験したので報告する。症例1は犬で,背部に個在性の潰瘍および皮膚壊死が認められた。症例2は犬で,左肩甲部に潰瘍および皮膚壊死が認められた。症例3は猫で,下腹部および側腹部に脱毛,紅斑などが認められた。病理組織学的所見には,症例1と症例2ではⅢ度熱傷を,症例3では深達性Ⅱ度熱傷を疑わせる所見であった。いずれの症例でも稟告により,発症前に病変部が熱源と接触したという病歴が聴取されたことから,本症例を熱傷と診断するに至った。
著者
毛利 崇 高島 一昭 山根 義久 関口 麻衣子 岩崎 利郎
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.131-134, 2006

9カ月齢の雌のスフィンクスが全身性のそう痒を伴った丘疹を主訴として来院し,皮膚生検の結果色素性蕁麻疹と診断した。初期には抗ヒスタミン剤とプレドニゾロンを用いて治療し,維持にシクロスポリンを用いて良好に経過した。シクロスポリンの投与量は症状に応じて減量し,第417病日に完全に投薬を中止した。その後も再発もなく第466病日現在良好に維持している。
著者
志賀 朋子 松浦 幹人 関口 麻衣子 伊從 慶太 井手 香織 岩﨑 利郎 西藤 公司
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.107-110, 2012 (Released:2012-07-13)
参考文献数
6
被引用文献数
1

本稿では,犬種および症状から無菌性脂肪織炎が考慮されたものの,病変部の切除生検により異物肉芽腫と診断されたミニチュア・ダックスフンドの3例を経験したので報告する。いずれの症例でも臨床的に皮下結節が認められ,病変部の切除により症例1では病巣から針葉樹の葉が,症例2では竹串が,症例3では縫合糸が摘出された。病理組織学的には,3症例ともに異物を取り囲む化膿性肉芽腫性炎が認められた。犬に皮下結節を認めた場合,異物肉芽腫などの類症鑑別を常に考慮に入れ,切除生検を実施する必要があると考えられた。
著者
山岸 建太郎 関口 麻衣子
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.19-22, 2012 (Released:2012-04-17)
参考文献数
4

15週齢の雌のトイ・プードルにおいて,眼瞼および口吻の腫脹とびらんを中心とした皮膚病変と,混合ワクチン接種部位における限局性の腫脹と自壊が認められた。病理組織学的検査により,顔面は重度の毛包炎を特徴とする無菌性化膿性肉芽腫性皮膚炎が,自壊したワクチン接種部位は無菌性肉芽腫性脂肪織炎が認められた。検査結果および臨床経過から若年性無菌性肉芽腫性皮膚炎および無菌性脂肪織炎と診断した。両病変とも免疫抑制用量のプレドニゾロンによる治療が奏功した。