著者
寺島 美穂 久野 格 深町 輝康 今西 市朗 江角 真梨子 伊從 慶太
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.3-10, 2020 (Released:2021-03-30)
参考文献数
23

本研究は犬アトピー性皮膚炎に各種セラミド製剤を適応し,オクラシチニブの減薬効果を検討した。合計16例のアトピー性皮膚炎の犬が本試験に供され,すべての症例はオクラシチニブ(0.4–0.6 mg/kg,1日1回,経口投与)の全身投与を3ヶ月以上受けていた。症例は無作為に2群に振り分け,それぞれ毎日の経口および外用スプレーのセラミド製剤,1週毎のスポットオンセラミド製剤を84日間適用した。すべての症例においてオクラシチニブが継続投与され,試験開始から42日目までは常用量(0.4–0.6 mg/kg,1日1回),42–63日において常用量の半量(0.2–0.3 mg/kg,1日1回),63–84日において常用量の半量を隔日投与とした。試験開始より3週毎,84日間にわたって,獣医師により犬アトピー性皮膚炎重症度指数(CADESI-04)を,飼い主により痒みスコア(PVAS)が評価された。両群ともにオクラシチニブ減薬後のCADESI-04およびPVASの平均スコアは,オクラシチニブ減薬前と比較して有意な差は認めなかった(P>0.05)。また,各評価日における各スコアの群間差も認められなかった(P>0.05)。以上の結果より,今回試験に供した外用スプレーおよび経口セラミド製剤,スポットオンセラミド製剤は,いずれもCADにおけるオクラシチニブの全身療法の減薬に貢献した可能性が示唆された。
著者
赤司 和昭 中村 泰治 伊從 慶太 大隅 尊史
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.217-220, 2019 (Released:2019-12-27)
参考文献数
16

ベンガル,1歳1ヶ月齢,未去勢雄が,8ヶ月前から継続する両耳の耳垢蓄積および瘙痒を主訴に来院した。耳垢の直接鏡検でDemodex catiに形態学的に合致するニキビダニの生存虫体が多数検出された。その他の皮膚に症状は認めなかった。10%イミダクロプリド/1%モキシデクチン製剤0.8 mlを2週間毎,計4回背部に塗布したが,ニキビダニは消失しなかった。その後,フルララネル製剤(約41 mg/kg)を単回経口投与したところ,投与39日目後に症状の改善およびニキビダニの陰転を認めた。
著者
五十嵐 里菜 馬場 悠太 平林 雅和 伊從 慶太 大隅 尊史
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.153-156, 2019 (Released:2019-09-20)
参考文献数
6
被引用文献数
1

ブリティッシュ・ショートヘアー,4歳4ヶ月齢,未去勢雄が両外耳道および耳介周囲に多発性の黒〜灰色,ドーム状の隆起性病変を呈した。病理組織学的検査によって,Feline ceruminous cystomatosisと診断された。自宅での点耳治療が困難であったため,病院での耳洗浄および1%フロルフェニコール,1%テルビナフィン,0.1%ベタメタゾン酢酸エステル配合の点耳ゲル剤による治療を計3回実施したところ,約3ヶ月以内に病変の著しい退縮を認め,最終投与の約6ヶ月後に至るまで再発を認めなかった。
著者
岡田 悟 山田 優樹 伊從 慶太 古家 優
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.3-9, 2022 (Released:2022-03-12)
参考文献数
15

7ヶ月齢の猫が,左後肢足底部からの反復性の出血を主訴に来院した。患部のパンチ生検による病理組織検査より,脈管奇形が示唆された。パンチ生検後に生検部位からの出血が止まらなかったため,電気メスを用いた焼灼処置を行った。出血量は減少したものの,その後も出血は改善と再発を繰り返した。第30病日に造影CT検査を行ったところ,患部周囲の血管新生および血管拡張が認められた。第37病日に止血を目的として,左後肢第4趾と第5趾を断趾した。断趾後の組織を用いた免疫組織化学による病理組織診断の結果,この脈管奇形は皮膚リンパ管奇形と診断された。病理組織学的マージンは確保されていた一方で,術後1ヶ月の肉眼所見では皮膚表面の小嚢胞が少数残存しており,完全切除に至っていない可能性が考えられた。しかし,術後20ヶ月の時点において出血は認められず,日常生活も問題なく送れている。本例は猫で報告の少ない皮膚リンパ管奇形の報告であり,その診断と治療について考察する。
著者
籾山 翔子 布川 康司 布川 伸子 池田 博和 川西 歩 伊從 慶太
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.141-145, 2018 (Released:2018-09-29)
参考文献数
11

去勢雄,7歳齢のマルチーズが,顔や肉球に多発性の紅斑,びらん,痂皮を呈した。臨床および病理組織学的検査により,症例は慢性肝炎を伴った壊死性遊走性紅斑と診断された。肝庇護療法,アミノ酸輸液に加えて,脂肪由来幹細胞の静脈投与を行った結果,32日後に皮膚症状および低アルブミン血症は改善した。その後,アミノ酸製剤の補給を中止した後も,脂肪由来幹細胞療法を継続することで,20ヶ月間症状の再燃を認めなかったことから,脂肪由来幹細胞療法が犬の壊死性遊走性紅斑の有効な治療選択肢となる可能性が示唆された。
著者
西山 美衣 伊從 慶太 関口 麻衣子 岩崎 利郎 西藤 公司
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.77-80, 2015 (Released:2015-07-29)
参考文献数
6
被引用文献数
2

本稿では,稟告および病理組織学的所見が熱傷と合致した犬および猫の3例を経験したので報告する。症例1は犬で,背部に個在性の潰瘍および皮膚壊死が認められた。症例2は犬で,左肩甲部に潰瘍および皮膚壊死が認められた。症例3は猫で,下腹部および側腹部に脱毛,紅斑などが認められた。病理組織学的所見には,症例1と症例2ではⅢ度熱傷を,症例3では深達性Ⅱ度熱傷を疑わせる所見であった。いずれの症例でも稟告により,発症前に病変部が熱源と接触したという病歴が聴取されたことから,本症例を熱傷と診断するに至った。
著者
西山 武男 伊從 慶太 岩﨑 利郎 西藤 公司
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.71-75, 2015 (Released:2015-07-29)
参考文献数
15
被引用文献数
2

過去の報告において,中毒性表皮壊死症(TEN)の犬では角化細胞のアポトーシスが認められなかったことが報告されている。本報告では,表皮内にアポトーシス細胞が検出された犬の1例について報告する。13歳,雌の雑種犬が,主に腹部皮膚や可視粘膜に急性かつ広範な紅斑,水疱および潰瘍を認めたとのことで来院した。本症例では食欲不振および元気消失も認められた。本症例では皮膚症状が発症する5日前よりアモキシシリンが経口投与されていた。皮膚病変の組織学的検査では表皮全層にわたる凝固壊死やリンパ球の表皮内浸潤が認められ,これらの所見はTENに矛盾しないものであった。免疫組織化学染色により,浸潤していたリンパ球はCD3陽性であることが示された。さらに本症例では,アポトーシス細胞を示すTdT-mediated dUTP end labeling(TUNEL)陽性細胞が,角化細胞を含む表皮細胞中に認められた。上記の所見から,本症例ではT細胞に由来する表皮角化細胞のアポトーシスが,表皮壊死の病因となった可能性が示唆された。
著者
志賀 朋子 松浦 幹人 関口 麻衣子 伊從 慶太 井手 香織 岩﨑 利郎 西藤 公司
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.107-110, 2012 (Released:2012-07-13)
参考文献数
6
被引用文献数
1

本稿では,犬種および症状から無菌性脂肪織炎が考慮されたものの,病変部の切除生検により異物肉芽腫と診断されたミニチュア・ダックスフンドの3例を経験したので報告する。いずれの症例でも臨床的に皮下結節が認められ,病変部の切除により症例1では病巣から針葉樹の葉が,症例2では竹串が,症例3では縫合糸が摘出された。病理組織学的には,3症例ともに異物を取り囲む化膿性肉芽腫性炎が認められた。犬に皮下結節を認めた場合,異物肉芽腫などの類症鑑別を常に考慮に入れ,切除生検を実施する必要があると考えられた。