著者
関根 一希 末吉 正尚 東城 幸治
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.73-84, 2013-05-10 (Released:2014-05-15)
参考文献数
26
被引用文献数
3

オオシロカゲロウは国内広域の河川中・下流域に棲息し,幼生は河床の砂礫に潜って生活する。羽化は初秋 (1週間から数週間程度) の日没後にみられるが,極めて同調性の高い羽化であり,交尾飛翔・群飛が認められ,大発生に至ることもある水生昆虫である。1970年代から本種における大発生は日本各地の河川において報告されてきたが,本種の棲息状況に関しては,羽化個体において評価されるに留まっており,河川内の詳しい分布は十分には把握されていないのが現状である。理由としては,1) 短い亜成虫・成虫期間 (長くても2時間程度),2) 短い羽化時期,3) 短い幼生期間 (約半年を休眠卵で過ごす),4) 典型的なハビタットは比較的大きな河川の中下流で,かつ河床の砂礫に潜る生活型であることがあげられる。このような状況から,本研究では,本種の大発生が1928年と最も古い記録 (志賀直哉の小説「豊年蟲」としての記録) として残され,現在も規模の大きな発生が続いていて,個体群規模も大きな長野県・千曲川を調査地として,幼生ステージにおける分布調査を実施した。その結果,羽化量調査による先行研究と同様,最も多くの羽化個体が認められた平和橋粟佐橋調査区において,体サイズの大きい幼生が高い個体密度で棲息することが確認された。一方,平和橋粟佐橋調査区より上流や下流側では,個体密度や体サイズなど現存量の低下が認められた。羽化量調査により分布が認められないとされていた犀川合流地点よりも下流側においても,幼生の棲息が認められた。しかし,幼生の体サイズは小さく,比較的貧栄養的な犀川の合流により千曲川の汚濁度が低下し,幼生の餌であるデトリタス量が低下したことに原因があるのかもしれない。