著者
網谷 夏実 隅 敦
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.93-106, 2014

本研究は,スペインの初等美術教科書における題材の特徴を,主として描画指導に関わる題材の分析を通して,日本の教科書題材との違いに焦点を当てて明らかにしようとしたものである。まず,スペインの初等美術教科書の構成を整理した。次に,教科書の目次から内容の概要を翻訳し整理したところ,主に平面の題材が多く,概ね作品鑑賞から制作に移るという過程が確認できた。一方,日本の教科書においては配当されていない(1)臨画の題材,(2)ぬり絵をする題材,(3)絵の描き始めが示されている題材,(4)背景が既に描かれている題材について,実際に制作を行いながら,詳細な分析と考察を行った。そこでは,発想や構想の能力の育成よりも対象を正確に写し取る技術を重視する特徴が見いだされた。さらに,スペインの教科書で特徴的であったぬり絵に焦点を当て,日本の初等美術教育においてぬり絵が扱われていない理由を考察し,①山本鼎の自由画教育運動の影響,②玩具として認識されていること,③教育的効果に対する否定的な意見,④評価を伴う場合の問題の四点を導き出した。
著者
上野 一彦 大隅 敦子 Kazuhiko Ueno Atsuko Oosumi
出版者
国際交流基金
雑誌
国際交流基金日本語教育紀要 = The Japan Foundation Japanese-Language Education Bulletin (ISSN:13495658)
巻号頁・発行日
no.4, pp.157-167, 2008-03-17

日本語能力試験は1994年度より障害を持つ受験者に対する特別措置を開始し、2006年度は95名がこの措置を利用している。中でもLD(学習障害)等と分類される学習障害や注意欠陥・多動障害、高機能自閉症に関する措置については、原則を立てつつ試行を重ねている段階である。 一方坂根(2000)によれば、既に日本語教育の現場でもLD(学習障害)等に相当する障害を持つ学習者を受け入れており、教師は「LD学習者の対応は、学習目標、LDの程度や症状の問題など、多くの要因が複雑にからみあうため、一律の対応をするのがよいのか」と懸念しているという。 本稿ではLD(学習障害)等の中核をなすと言われる発達性ディスレクシアに焦点を当て、専門家と実施主体が連携しながら、WAIS-Ⅲをはじめとする認知・記憶特性を理解し、特性に基づいた過去の措置を踏まえて特別措置審査を行っているさまを、実際の事例とともに紹介する。
著者
隅 敦
出版者
美術科教育学会
雑誌
美術教育学 : 美術科教育学会誌 (ISSN:0917771X)
巻号頁・発行日
no.33, pp.231-247, 2012-03-25

本稿では教員を採用する際の採用試験の図画工作科の問題を,小学校で求められる「学力」をつける能力があるか否かを判断する内容であるかという観点から精査した。まず,教育関連法令における「学力」と「評価」の規定について,その扱いについて整理を行った。そして,採用試験問題を,教育関係法令に基づく学習指導要領と,その内容に準拠して発行される教科用図書の内容に照らして分析した。その結果,教員採用試験問題が,教育関連法令で規定された学習指導要領や教科用図書の内容を踏まえていない実態があることが分かり,小学校図画工作科で求められる「専門的知識と技術」について,大学における充実した教育が必要であることが分かった。