著者
牛島 秀爾 霜村 典宏 長澤 栄史 前川 二太郎
出版者
日本きのこ学会
雑誌
日本きのこ学会誌 : mushroom science and biotechnology (ISSN:13487388)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.22-30, 2012-04-25
被引用文献数
1

日本産ヌメリツバタケ(Japanese M. mucida)として知られている菌は,形態的特徴および核rDNAのITS領域を用いた分子系統解析の結果,M. mucida var. asiaticaと同定された.本変種は,ひだに皺を持つ日本固有種のヌメリツバタケモドキ(M. mucida var. venosolamellata)とは,肉眼的特徴に基づいて区別されてきた.しかし,両菌は交配可能であり,両菌の中間的な形態的特徴を示す捻性な子実体を形成した.さらに,ITS領域に基づく分子系統樹において,両菌は1つのクレード内に混在した.これらの結果は,両菌をM. mucidaの種内分類群として分割すべきでないことを強く示唆する.また,日本産ヌメリツバタケ(ヌメリツバタケモドキを含む)は,担子胞子の大きさ,傘表皮組織の構造およびITS領域を用いた分子系統解析結果において,M. mucida var. mucidaとは明らかに種レベルで異なった.
著者
陳 富嘉 陳 富杰 尾崎 佑磨 霜村 典宏 山口 武視 會見 忠則
出版者
日本きのこ学会
雑誌
日本きのこ学会誌 (ISSN:13487388)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.62-67, 2020 (Released:2022-02-11)
参考文献数
21

ササクレヒトヨタケは中国南部や韓国で大量に栽培されているものの,基礎的な研究があまり進められていない.本研究では,本きのこ種の簡便な担子胞子分離法の開発を目的として,担子胞子の発芽を誘導するためのpH条件及び培地組成を検討した.ササクレヒトヨタケの栽培子実体より無色の発芽孔を欠く若い胞子と黒色の発芽孔を有する成熟した胞子を採取し,pH 3.0ないし9.0に調整した各培地に接種したところ,胞子発芽は若い胞子に限ってみられた.また,胞子発芽の至適pHは6.0であった.菌糸生長量においても同様に,至適pHは 6.0であったことから,担子胞子分離に有効な培地のpHは 6.0 であると結論づけられた.一方,ササクレヒトヨタケの若い胞子は牛糞培地において発芽し,菌糸体コロニーを形成したが,PDA培地とMA培地では発芽しなかった.また,牛糞培地に最終濃度50 ppmのn-酪酸を添加することで,ササクレヒトヨタケの若い胞子の発芽や菌糸体コロニーの形成が促進された.本きのこ種の担子胞子分離には若い胞子を用いること,pH 6.0 に調整し,n-酪酸を添加した牛糞培地を用いることが有効であると結論づけられた.
著者
陳 富嘉 陳 富杰 早乙女 梢 霜村 典宏 山口 武視 會見 忠則
出版者
日本きのこ学会
雑誌
日本きのこ学会誌 (ISSN:13487388)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.93-99, 2020 (Released:2022-03-21)
参考文献数
33

複数の系統群を含むことが知られるサクレヒトヨタケには四極性と二極性の交配型が報告されていたため,日本産のササクレヒトヨタケ Coprinus comatus の交配型を再検討することが必要となった.ITS領域による分子系統解析の結果,本きのこ種には3つの系統群が検出され,日本産本きのこ種はこのうちの1系統群に含まれた.子実体から単胞子分離したー核菌糸体は二極性ヘテロタリズムを示した.また,A因子の組み換え株は出現せず,A因子は1極めて近接した2つの遺伝子座により構成されると推察された.一方,本きのこのクランプ形成頻度は,ヘテロカリオンで30%以上,ホモカリオンで8%以下であったが,ホモカリオンのクランプ形成能は交配型遺伝子とは,連鎖していないことが,示唆された.
著者
平岡 吏佳子 宇田 勲 仲野 翔太 霜村 典宏 會見 忠則
出版者
日本乳酸菌学会
雑誌
日本乳酸菌学会誌 (ISSN:1343327X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.196-203, 2016-11-18 (Released:2017-12-02)
参考文献数
18

植物由来乳酸菌の胃酸耐性機構を明らかにすることを目的に、植物由来胃酸耐性乳酸菌 Lactobacillus plantarum FSCM2-12、 NBRC 109604、 NBRC 101975、及び胃酸感受性乳酸菌 Lactobacillus brevis FSCT-2 を用いて、その胃酸耐性と形態学的特徴との関係を調べた。 L. plantarum FSCM2-12 の人工胃液耐性試験において、炭素源としてグルコース、フルクトースまたはスクロースを添加した培地では、平均生残率が 70% 以上であったが、グリセロールを添加した培地や炭素源を加えない培地では、著しく生残率が低下した。 L. plantarum FSCM2-12 のバイオフィルム形成は観察されなかったが、 Hiss 染色により莢膜陽性で、透過型電子顕微鏡観察でも明瞭な莢膜が観察できた。さらに、莢膜の厚さと胃酸耐性との間には顕著な正の相関が見られ、グルコース、フルクトース、スクロースを炭素源とした場合において、厚い莢膜を形成し、 70% 以上の平均生残率を示した。 L. plantarum NBRC 109604 と L. plantarum NBRC 101975 においても、 L. plantarum FSCM2-12 と同様に高い胃酸耐性と厚い莢膜が観察されたことから、厚い莢膜を形成したことが、高い生残率の要因と考えられた。