- 著者
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青嶋 誠
- 出版者
- 一般社団法人 日本統計学会
- 雑誌
- 日本統計学会誌 (ISSN:03895602)
- 巻号頁・発行日
- vol.48, no.1, pp.89-111, 2018-09-26 (Released:2019-04-02)
- 参考文献数
- 39
- 被引用文献数
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本論文は,高次元統計解析の理論と方法論について,最新の展開を紹介する.最近,Aoshima and Yata (2018a) は,強スパイク固有値(Strongly Spiked Eigenvalue: SSE)モデルというノイズモデルを提唱した.高次元データのノイズは巨大かつ非スパースであり,それゆえデータがもつ潜在的な幾何学的構造は破壊され,統計的推測に精度を保証することが困難になる.理論的には,SSEモデルのもとでは,高次元統計解析の根幹を成す高次元漸近正規性が成立しない.Aoshima and Yata (2018a) は,巨大なノイズ構造を精密に解析し,強スパイクするノイズ空間を避けるようなデータ変換法を開発した.この方法を用いれば,データは弱スパイク固有値(Non-SSE: NSSE)モデルに変換され,潜在空間の幾何学的構造が浮き彫りになり,高精度な高次元統計的推測が可能になる.Aoshima and Yata (2018b) は,この方法論を発展させ,高次元判別分析に新たな理論を展開している.本論文は,高次元統計解析の最新の展開について,適宜文献を紹介しながら解説する.