著者
青木 美奈 藤田 昌彦 町澤 朗彦 皆川 双葉
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.84, no.10, pp.2338-2345, 2001-10-01
被引用文献数
1

サッカード中には, 網膜に写った外界の像は激しく揺れ動いているにもかかわらず, 我々はその動きを知覚することはない.このサッカード抑制という現象について, 従来から様々な実験が行われてきており, その要因には中枢性の抑制説, マスキング説などが考えられてきた.本論文では, 水平サッカード中に色縞のパターンを垂直, 水平にして瞬時呈示し, その判別をさせる実験を行って, サッカード中にも視覚が成立していることを示した.また, 背景輝度を様々に変化させた実験も行い, 輝度差によるマスキングの効果を確認した.これらの実験結果より, サッカード中の知覚が低下する要因として, 主にマスキングが働き, 更に網膜像の濁りや中枢性の抑制も多少なりとも存在し, それらが合成されていることを単一の実験手法で確認できた.