著者
青木 聡子
出版者
環境社会学会
雑誌
環境社会学研究
巻号頁・発行日
no.11, pp.174-187, 2005-10-25

ヴァッカースドルフ反対運動は,使用済み核燃料再処理施設建設計画を中止に追い込み,連邦政府に国内での再処理を断念させ,ドイツの脱原子力政策を導く契機となった代表的な原子力施設反対運動である。この運動の展開過程を現地調査に基づき内在的に把握してみると,当初は外部に対して閉鎖的だったローカル市民イニシアティヴと地元住民が,敷地占拠とその強制撤去を契機に,オートノミー(暴力的な若者)との乖離を克服し対外的な開放性を獲得し発展させていった点が注目される。国家権力との対峙を実感し,「理性的に社会にアピールする私たち」という集合的アイデンティティを否定され「国家権力から正当性を剥奪された私たち」という集合的アイデンティティを受け入れざるをえなくなった地元住民は,「自らの正当性をめぐる闘争」という新しい運動フレームを形成することで,国家権力による正当性の揺さぶりを克服しようとした。このような集合的アイデンティティと運動フレームの変容こそ,ローカル抗議運動に開放性を付与し,地域を越えた運動間のネットワーク形成を可能にした条件であった。日本の住民運動との対比のなかで,ドイツの原子力施設反対運動の特徴とされてきた「対外的な開放性」は,ドイツの市民イニシアティヴの本来的な性格ではなく,運動の展開過程で市民イニシアティヴや地元住民によって意識的に選択され獲得されたものである。
著者
長谷川 公一 青木 聡子 上田 耕介 本郷 正武
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

「持続可能な都市形成」が議題設定され、NGOメンバーなどの間で社会的な認知が進み、政策決定過程にフィードバックし、形成・遂行された政策がどのように中・長期的な波及効果をもちうるのか。本研究は、ソーシャル・キャピトルをもっとも基本的な説明変数として、環境NGOメンバーと地域社会に対するその社会的効果を定量的に分析した。都市規模・拠点性などから仙台市、セントポール市(米国)に拠点をおく環境NGOの会員を対象に行った郵送調査結果の分析にもとづいて、仙台市の環境NGOのソーシャル・キャピトル的な性格・機能の強さに対して、セントポール市の環境NGOは、政策提案志向型の専門性の高い団体を個人会員が財政的に支援するという性格が強く、ソーシャル・キャピトル的な性格は弱いことが明らかとなった。
著者
青木 聡子
出版者
東北社会学研究会
雑誌
社会学研究 (ISSN:05597099)
巻号頁・発行日
vol.104, pp.63-89, 2020-02-21 (Released:2021-09-24)
参考文献数
19

本稿では、長年にわたり展開されてきた住民運動、なかでも名古屋新幹線公害問題をめぐる住民運動を事例として取り上げ、運動を続けざるを得ない現状を検証し、運動の終息に向けた課題を検討する。名古屋新幹線公害問題では、国鉄(当時)との和解成立(一九八六年)から三十年以上を経た現在も、原告団・弁護団が活動を続けている。こうした住民運動の長期化によってもたらされたのは、運動の負担が、原告団のなかでもいまだ運動に従事し続ける少数のコアメンバーに集中するという事態である。JR側の担当者が数年で入れ替わるのに対して、原告団側は、その数が減りはしても、増えることも新しいメンバーと入れ替わることもない。原告団とJRとのあいだには、部分的な信頼関係ができつつあるものの、原告団にとってJRはいまだに、「何しよるかわからん」相手でもあり、住民運動をやめるわけにはいかない。この長期化した住民運動の幕引きには、行政による積極的な介入が必要であり、本稿の事例では、原告団が描く幕引きのシナリオは、住民運動が果たしてきた役割を名古屋市が担うようになるというものである。だが、実際には名古屋市による積極的な取り組みは特定のイシューにとどまり、継続性も懸念される。発生源との共存を強いられる人びとの苦痛や負担を和らげ、少数の住民に負担が集中する住民運動を軟着陸させるためには、いまだ制度化されざる部分の制度化が必要である。
著者
青木 聡子
出版者
環境社会学会
雑誌
環境社会学研究
巻号頁・発行日
vol.21, pp.129-133, 2015
著者
長谷川 公一 青木 聡子 上田 耕介 本郷 正武
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

温暖化防止活動推進員に対する郵送調査によって、推進員は、高学歴者の割合が高く、定年後あるいは定年を目前にした男性と活動的な専業主婦が主力であり、男性では、これまでの経験を活かし社会的に有意義な活動に貢献したいという意欲が高く、女性では婦人会役員などが行政の勧誘によって推進員になっている場合が多いことなど、男女別の相違点が明らかになった。3年間の各都道府県代表の全国大会応募申請書をもとにデータベース化を行い、関係主体間の連携と環境学習を重視し、地域資源を活用したすぐれた実践が多いことが明らかになった。