著者
長谷川 公一 青木 聡子 上田 耕介 本郷 正武
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

「持続可能な都市形成」が議題設定され、NGOメンバーなどの間で社会的な認知が進み、政策決定過程にフィードバックし、形成・遂行された政策がどのように中・長期的な波及効果をもちうるのか。本研究は、ソーシャル・キャピトルをもっとも基本的な説明変数として、環境NGOメンバーと地域社会に対するその社会的効果を定量的に分析した。都市規模・拠点性などから仙台市、セントポール市(米国)に拠点をおく環境NGOの会員を対象に行った郵送調査結果の分析にもとづいて、仙台市の環境NGOのソーシャル・キャピトル的な性格・機能の強さに対して、セントポール市の環境NGOは、政策提案志向型の専門性の高い団体を個人会員が財政的に支援するという性格が強く、ソーシャル・キャピトル的な性格は弱いことが明らかとなった。
著者
本郷 正武
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.109-119, 2013-07-19 (Released:2014-08-31)
参考文献数
23

本稿はHIVが混入した輸入血液凝固因子製剤によりHIV感染した血友病患者が政府と製薬企業を相手取った訴訟運動(1986~1996年)に参加するプロセスを示した上で,「薬害」概念が訴訟により構築されていく要件を検討する.血液凝固因子製剤によりHIV感染した事実のみで「薬害HIV」は成立しない.感染被害者や医師へのインタビュー調査から,原疾患である血友病,血液製剤により重複感染していたB型・C型肝炎との重要度の比較からHIV/AIDSの問題を認識し,さらに憤りや義憤を超えて,亡くなっていった仲間たちに対する使命や弔いの感情をもつようになるプロセスを明らかにした.こんにち,政府は「薬害教育」を強く推進しているが,本稿は「薬害」問題を開示する社会運動の生起を説明するため,従来の社会運動論の動員論,行為論とは異なる,社会運動の「質」を説明する「第三のアプローチ」を参照し,「薬害」概念を再検討するための枠組みを提示した.
著者
本郷 正武
出版者
東北社会学研究会
雑誌
社会学研究 (ISSN:05597099)
巻号頁・発行日
vol.99, pp.181-205, 2017-02-28 (Released:2021-12-18)
参考文献数
18

本稿は北イタリア発祥の「スローフード運動」がいかに日本で受け容れられ、独自の展開を遂げているかを山形県の事例から明らかにする。スローフード運動は、希少作物や生産者の保護、味覚教育などを標榜し、世界各国で展開されている。日本でも地域毎に活動がおこなわれており、地元固有の食材の保存や調理法の見直しが企図されている。 スローフード運動を記述し、分析するために、本稿では「ライフスタイル運動」の観点を導入する。社会運動は一過性の非日常的な政治的闘争でありながら、一方で日々のライフスタイルの選択の積み重ねと連続していることがライフスタイル運動の観点から指摘でき、先行研究ではスローフード運動も考察の対象となっている。 本稿が事例とする山形県では、生産者のみならず、製造者や料理人、行政、映画監督などが結びつくことでスローフード運動が展開されている。特に、地域固有の「在来作物」を発掘し、それらを活かす料理人や漬け物業の存在は、山形の事例を強く特徴付けている。在来作物を介して、スローフードというシンボルにより多様なアクターを結びつけ、自前のローカリティをさらに掘り起こすことに貢献したのが、山形のスローフード運動である。
著者
本郷 正武
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.69-84, 2011-06-30 (Released:2013-03-01)
参考文献数
23
被引用文献数
1 1

本稿は,いわゆる「薬害HIV」感染被害者たちが,強い偏見と差別の最中,どのようにして訴訟運動に参加しえたのかを,社会運動論,とりわけ「良心的支持者」概念の観点から考察する.HIVが混入した非加熱濃縮血液製剤により血友病患者がHIVに感染した「薬害HIV問題」は,国と製薬会社を相手取った「薬害HIV訴訟」へと発展した.しかし,偏見と差別が渦巻く状況下で,感染被害者たちはHIV感染告知をめぐる医師との「すれ違い」があったり,血友病患者会などでの人間関係が破砕されていた.このような訴訟運動への参加の障壁が高い中で,感染被害者たちはいかにして訴訟運動にコミットできたのであろうか.ある訴訟運動を支援する会は「当事者性の探求」を掲げ,たんに感染被害者のプライバシーを守るだけでなく,無自覚に感染被害者をいたたまれない状況に追い込まないことをめざした.このような活動理念は,「当事者捜し」を回避し,運動から直接の利益を得ないにもかかわらず運動参加する「良心的支持者」として感染被害者が振る舞うことを可能にした.このことは,問題の深刻さを示すとともに,感染被害者がより安全な形で運動参加する方法をも提示している.本事例で示した良心的支持者概念の戦略上の「転用」は,いわゆる「当事者」概念と同様に,「誰が良心的支持者になる/なれるのか」という問いについても論題が開かれていることを示すものである.
著者
長谷川 公一 青木 聡子 上田 耕介 本郷 正武
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

温暖化防止活動推進員に対する郵送調査によって、推進員は、高学歴者の割合が高く、定年後あるいは定年を目前にした男性と活動的な専業主婦が主力であり、男性では、これまでの経験を活かし社会的に有意義な活動に貢献したいという意欲が高く、女性では婦人会役員などが行政の勧誘によって推進員になっている場合が多いことなど、男女別の相違点が明らかになった。3年間の各都道府県代表の全国大会応募申請書をもとにデータベース化を行い、関係主体間の連携と環境学習を重視し、地域資源を活用したすぐれた実践が多いことが明らかになった。