著者
浦野 正樹 松薗 祐子 長谷川 公一 宍戸 邦章 野坂 真 室井 研二 黒田 由彦 高木 竜輔 浅川 達人 田中 重好 川副 早央里 池田 恵子 大矢根 淳 岩井 紀子 吉野 英岐
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究では、東日本大震災を対象として発災以来社会学が蓄積してきた社会調査の成果に基づき、災害復興には地域的最適解があるという仮説命題を実証的な調査研究によって検証し、また地域的最適解の科学的解明に基づいて得られた知見に基づいて、南海トラフ巨大地震、首都直下地震など次に予想される大規模災害に備えて、大規模災害からの復興をどのように進めるべきか、どのような制度設計を行うべきかなど、復興の制度設計、復興の具体的政策および復興手法、被災地側での復興への取り組みの支援の3つの次元での、災害復興に関する政策提言を行う。また、研究の遂行と並行して、研究成果の社会への還元とグローバルな発信を重視する。
著者
長谷川 公一
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.309-318, 2013 (Released:2014-09-01)
参考文献数
16
被引用文献数
1
著者
長谷川 公一
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.354-373, 1983

対立や紛争はどのような社会現象か。そこでは、主体はどのような課題に直面するのか。従来の紛争研究は、主体間の目標達成の両立不可能性に焦点をあてる社会関係論の視角からするものと、社会システムの不均衡状態に焦点をあてる全体システムの視角からするものとに大別できる。本稿は前者の系譜をふまえ、ダイアド関係を動態的にモデル構成し、そのうえで、紛争化過程および紛争過程における紛争当事者の課題を論じたものである。まず、ダイアド関係の利害連関は、対立、結合、分離の三状相に分節される。資源動員能力の格差にもとつく優位な主体の側の劣位者側への意思決定の貫徹可能性に注目すると、相互行為のパタンは、紛争、抑圧的支配、互酬的支配、協働、並存の五過程に分節される。ダイアド関係は、これらの問を移行する動態的な過程である。紛争過程への移行に際しては、対立状相の意識化に次いで、紛争行動を選択するか、紛争回避行動を採るかの意思決定が課題となる。選択を規定するのは、劣位な主体では相対的剥奪感であり、一般には報酬・コストのバランスである。両当事者の紛争行動の選択によって、紛争過程は開始される。紛争行動の実施にあたって、当事者は、 (1) 資源の動員可能性、対抗行為の (2) 戦略的有効性および (3) 規範的許容性、これらの検討を課題とする。とくに劣位な主体は、対抗集団の組織化などによる、対抗力の拡大と資源動員能力の格差の克服とを緊要な課題としている。
著者
長谷川 公一 青木 聡子 上田 耕介 本郷 正武
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

「持続可能な都市形成」が議題設定され、NGOメンバーなどの間で社会的な認知が進み、政策決定過程にフィードバックし、形成・遂行された政策がどのように中・長期的な波及効果をもちうるのか。本研究は、ソーシャル・キャピトルをもっとも基本的な説明変数として、環境NGOメンバーと地域社会に対するその社会的効果を定量的に分析した。都市規模・拠点性などから仙台市、セントポール市(米国)に拠点をおく環境NGOの会員を対象に行った郵送調査結果の分析にもとづいて、仙台市の環境NGOのソーシャル・キャピトル的な性格・機能の強さに対して、セントポール市の環境NGOは、政策提案志向型の専門性の高い団体を個人会員が財政的に支援するという性格が強く、ソーシャル・キャピトル的な性格は弱いことが明らかとなった。
著者
長谷川 公一
出版者
東北社会学研究会
雑誌
社会学研究 (ISSN:05597099)
巻号頁・発行日
vol.103, pp.7-20, 2019-10-16 (Released:2021-10-24)
参考文献数
19

ポピュリズムや反エリート主義、既成のマスメディアへの反感、反グローバリズムなどと結びついて反知性主義が猛威を奮っている。「ポスト真実」の時代の民主主義の危機は、日米英などにとどまらない、現代の先進産業社会に共通する根深い構造的な問題である。リベラリズムと普遍主義的な志向の退潮とともに、民主主義の危機は一層深刻度を増している。グローバル化する経済のもとでの格差の拡大とSNSなどの発達が、価値パターンの分断と亀裂をいよいよ深刻化させている。各個人向けにパーソナル化されたフィルターバブルによって、インターネットは、対話のメディアから、「意見の異なる他者を排除するための装置」に変質している。「ポスト真実」は一過的な徒花ではない。その意味で、パーソンズによる「ホッブズ的秩序問題」の二一世紀的な意義が再評価されるべきである。 本稿は、特集の清水・上田・寺田・鈴木論文に対するコメントである。
著者
長谷川 公一
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.1-4, 2008-07-17 (Released:2013-12-27)
参考文献数
2
被引用文献数
1
著者
矢澤 修次郎 伊藤 公雄 長谷川 公一 町村 敬志 篠原 千佳 油井 清光 野宮 大志郎 山本 英弘 細萱 伸子 陳 立行 金井 雅之 L.A Thompson 菊澤 佐江子 西原 和久 Pauline Kent
出版者
成城大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

二つのこれまでに行われたことの無い質問紙調査を行い、世界における社会学の国際化に関する基礎データを取得することができた。そのデータを分析することによって、ヨーロッパ社会学と東アジア社会学の間には社会学の国際化に関してはそれほど大きな差は認められないこと、しかし社会学の国際化の形態に関しては、ヨーロッパの場合には国際化が研究者のキャリアにおいて通常のことになっているのに対して、東アジアでは最大限のコミットメントを要する出来事であること、また東アジア内部では、台湾・韓国タイプ(留学と研究者になることがセットである)と中国・日本タイプ(両者がセットではない)とが分かれることが明らかになった。
著者
長谷川 公一
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.308-316, 2014

第18回世界社会学会議は, 2014年7月13日から19日まで, 横浜市のパシフィコ横浜を会場に開催され, 無事終了した. 国際社会学会の世界社会学会議 (World Congress of Sociology) は4年に1度開催される社会学界最大の学術イベントである. 本稿では, 組織委員会委員長というホスト国側の責任者の立場からこの会議の経過と意義を振り返り, 本大会の成果を今後に引き継ぐための課題を提起したい.<br>1960年代以来, 長い間先送りされてきた世界社会学会議の開催がなぜ2014年大会の招致というかたちで実現したのか, その背景は何だったのか. 開催都市に横浜を選んだのはなぜか. 組織委員会をどのように構成したのか. 世界社会学会議横浜大会は, これまでの世界社会学会議と比べてどのような特徴をもつのか. 組織委員会として, 組織委員長として, どのような課題に直面し, 腐心したのか. 横浜大会の成果と意義は何か. 横浜大会はどのような意味で「成功」といえるのか. 横浜大会の成果を, 研究者個々人が, また日本社会学会がどのように継承していくべきかを考察する. 日本の社会学の国際化・国際発信の重要なワンステップではあるが, 横浜大会は決してゴールではない. 日本社会学会は, 日本の社会学の国際的な発信を, 引き続き組織的にバックアップしていくべきである.
著者
長谷川 公一
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.308-316, 2014

第18回世界社会学会議は, 2014年7月13日から19日まで, 横浜市のパシフィコ横浜を会場に開催され, 無事終了した. 国際社会学会の世界社会学会議 (World Congress of Sociology) は4年に1度開催される社会学界最大の学術イベントである. 本稿では, 組織委員会委員長というホスト国側の責任者の立場からこの会議の経過と意義を振り返り, 本大会の成果を今後に引き継ぐための課題を提起したい.<br>1960年代以来, 長い間先送りされてきた世界社会学会議の開催がなぜ2014年大会の招致というかたちで実現したのか, その背景は何だったのか. 開催都市に横浜を選んだのはなぜか. 組織委員会をどのように構成したのか. 世界社会学会議横浜大会は, これまでの世界社会学会議と比べてどのような特徴をもつのか. 組織委員会として, 組織委員長として, どのような課題に直面し, 腐心したのか. 横浜大会の成果と意義は何か. 横浜大会はどのような意味で「成功」といえるのか. 横浜大会の成果を, 研究者個々人が, また日本社会学会がどのように継承していくべきかを考察する. 日本の社会学の国際化・国際発信の重要なワンステップではあるが, 横浜大会は決してゴールではない. 日本社会学会は, 日本の社会学の国際的な発信を, 引き続き組織的にバックアップしていくべきである.
著者
中澤 高師 Trencher Gregory 辰巳 智行 長谷川 公一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.4, pp.22-00254, 2023 (Released:2023-04-20)
参考文献数
22

本稿の目的は,日本における二酸化炭素排出実質ゼロ宣言の波及過程を明らかにし,気候変動政策の転換を引き起こしたメカニズムの一端を解明することである.政策波及研究の知見に基づき,国と自治体の双方向の垂直的な影響,自治体間の水平的な波及過程,国際都市ネットワークからの波及,その他の促進/阻害要因を,日本政府を含む全国的な波及過程研究と神奈川県の事例研究から明らかにする.半構造化インタビューと文献資料調査の結果,まず国際都市ネットワークに繋がる先進的自治体が宣言し,それに注目した国が自治体へ宣言を呼びかけ,宣言自治体の増加が国によるゼロ宣言の一因となり,自治体の宣言がさらに促進されていくという,垂直的波及と水平的波及の連鎖過程が明らかになった.
著者
長谷川 公一
出版者
東北社会学研究会
雑誌
社会学研究 (ISSN:05597099)
巻号頁・発行日
vol.104, pp.9-36, 2020-02-21 (Released:2021-09-24)
参考文献数
28

一九六八年と二〇一八年の五〇年間の社会運動の変化と連続性をどのように捉えるべきだろうか。韓国と台湾の場合には、独裁体制から民主化運動へ、複数回の政権交代へ、近年の脱原発政策への転換の動きなど、きわめてダイナミックな変化が見られる。アメリカ・フランス・ドイツなどでも、一九六八年前後の学生運動は、その後の政治のあり様に大きな政治的影響力を持っている。 しかし日本の場合には、社会変革的な目標達成を志向するタイプの運動は、政治的機会構造の閉鎖性や社会運動の資源動員力の〈弱さ〉、フレーミングの難しさなどに規定されて、政治的目標達成に成功しえた事例に乏しい。政権交代も少なく、しかも政権交代にあたって社会運動のはたした役割は非常に小さい。社会運動出身者の政治リーダーも乏しい。 日本の社会運動研究は、このような現実を直視し、いかに克服すべきかを社会学的に提示していく必要がある。
著者
長谷川 公一
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.436-450, 2000-03-31 (Released:2009-10-19)
参考文献数
31
被引用文献数
2 1

社会学は成立以来, 近代市民社会の秩序原理の焦点として, 「共同性」と「公共性」を論じてきた.しかしこれまで日本の社会学において, 公共性をめぐる社会学的考察が十分に展開されてきたとはいいがたい.公共性をめぐって論じられるべきは, 第 1 に, パブリックの概念の現代的変容という位相である.概念の多義化, 「私的領域」との相互浸透, グローバル化にともなう空間的拡大, 「自然の権利」を含むパブリックな空間の構成諸主体の拡大が著しい.第 2 は, 市民社会の統合原理としての公共性の位相である.先進社会にほぼ共通に, 過度の個人主義が個人主義そのものの存立基盤を掘り崩しかねないというベラーらの指摘する危機的状況がある.今日, 公共哲学の復権がもとめられるのはこの文脈においてである.第 3 は, ハーバマス以来の「公共圏」, 公衆としての市民による公論形成, 社会的合意形成をめぐる位相である.肥大化した国家とマスメディアのもとで, 公共圏の再生もまた世界的課題である.第 4 は, 公共政策にかかわる政策的公準としての公共性の位相である.規範的公共性と, 権力的な公共性との分裂・乖離という事態のもとで, 大規模「公共事業」をめぐる長期の紛争と環境破壊が繰り返されてきた. 第5 は, 市場でも政府でもない「市民セクター」が担う公共性をめぐる位相である.ボランタリーな市民活動と政府および営利セクターとのコラボレーションが現代的焦点である.
著者
長谷川 公一
出版者
東京大学
巻号頁・発行日
2004

本論文では,現代日本の〈環境運動〉とそれが担うべき〈新しい公共圏〉について,環境社会学のパースペクティブから考察する。//政治・経済の諸改革の閉塞状況は「失われた10年」と呼ばれて久しいが,それとは対照的に,1990年代以降,日本の市民社会の成熟をうながし,環境問題に関する公共圏を少しづつ開き,活性化させようとする動きがあることに注目する。四大公害訴訟や大阪空港公害訴訟・新幹線公害訴訟に代表されるような,被害者および被害者支援運動中心の批判・告発型の運動から,環境問題・環境政策をめぐっても,政策志向的な,さらにはコミニュティ・ビジネス志向的な運動への大きな転換の動きがある。北欧諸国やドイツ,アメリカ合州国などと比較して,日本の環境政策の政策決定過程はなお閉鎖的ではあるが,〈新しい公共圏〉は,〈市民〉に向かって次第に開かれつつある。//〈公共圏〉とは〈公論形成の場〉,〈社会的合意形成の場〉であり,公共的な関心をもつ人びとが集って,対話をつうじて〈公益〉とは何かを討議し,社会的実践を行い,〈公共性〉と〈共同性〉という価値を実現し,政治教育を行う場である。旧来の閉ざされた公共圏に代わるこのような規範的な公共圏のあり方を,本論文では〈新しい公共圏〉と呼ぶ。//制度化に成功し,セカンド・ステージを迎えた環境社会学も,〈現場〉の運動の変化に対応して,政策分析能力・政策決定過程の分析能力,さらには,政策形成能力と政策構想能力を高めていくべきである。//環境経済学や環境法学と比較したとき,環境社会学の独自なパースペクティブは環境運動の分析にある。本論文は,1960年代の公害反対運動・住民運動から現在に至るまでの日本の環境運動の構造と動態を分析したものである。環境基本法や特定非営利活動促進法の制定,国際化・情報化などを契機に,日本の環境運動や環境NGO/NPOも,組織性と専門性,政策志向性を強めつつある。ヨーロッパやアメリカでは,とくに1980年代後半以降,政府・行政,企業とのあいだで,環境運動が従来のような敵対的な関係にとどまることなく,〈コラボレーション〉という,〈(1)対等で,(2)領域横断的で,(3)プロジェクト限定的で,(4)透明で開かれた協働作業・協働関係〉を構築しつつ,とくに従来国家や産業界との間での対立的なイッシューの典型だった原子力政策・エネルギー政策の分野においても,さまざまな政策転換の試みがなされている。//環境運動は未来志向的な〈例示的実践〉であり,〈先導的試行〉であるがゆえに,環境運動と公共圏の動態に焦点をあてた本論文は一つの現代社会論でもありうる。//全体は,4部からなる。//第I部「環境社会学の問題構成」は,環境社会学の全体的な動向を射程とした学問論である。とくに執筆者の依拠する「環境問題の社会学」に焦点をあてて,課題提示に努めた。//日本でも,ヨーロッパ諸国などと同様に,1990年代に環境社会学の組織化と制度化がすすんだ。内外の研究動向をふまえ,ほぼ2000年代以降を環境社会学の〈セカンド・ステージ〉と規定することができる。近年環境社会学会は急激に会員が伸びつつあるが,環境社会学と既存の社会学との間の距離が拡大するにつれて,環境社会学はアイデンティティ・クライシスに陥りかねないことを指摘し,セカンド・ステージの課題として,環境社会学の問題構成の特質,課題・方法・価値前提を,現場との関係で「政策科学化」が,主流の社会学との関連で「理論的深化」が,隣接の環境研究との関連で「学際化」が,海外の研究者との関係で,海外に発信する「国際化」が課題であると指摘する。おもに環境経済学や環境法学,既存の社会学との関係を考察し,政策科学化の必要性と意義を論じる。(第1章)。//では,環境社会学の学問的アイデンティティをどこに求めるべきか。環境問題の多様化がしばしば指摘されるが,共通の構造として,環境問題のダウンストリーム性を指摘することができる。生産・流通・消費,あるいは生産活動と生活過程中心のこれまでの社会科学および社会学のあり方に対して,環境社会学,とくに「環境問題の社会学」のアイデンティティは,排出・廃棄など,消費以降の〈ダウンストリーム〉へのまなざしにあることを説き,「〈ダウンストリームの社会学〉としての環境社会学」を提唱する(第2章)。//第II部「環境運動の社会学」は環境運動に関する理論的・概括的考察を課題とする。//まず,1960年代後半以来の日本の環境運動を,利害当事者としての地域住民を中心とする生活防衛的な住民運動と良心的構成員としての〈市民〉が普遍主義的な価値の防衛をめざす市民運動とに大別し,産業公害・高速交通公害・生活公害・地球環境問題の4類型を整理し,産業公害から地球温暖化問題に至る歴史と問題構造を概括する。現時点で,被害が顕著な〈現場〉をもたず,影響が不可視的であることに着目し,地球温暖化問題への対応の構造的な困難さを社会学的に説明する(第3章)。//ヨーロッパやアメリカと比較したとき,日本の環境運動の展開にとって,最大の隘路は人的資源・経済的資源の動員の困難さという壁である。オルソンのフリーライダー問題の提起をふまえて,フリーライダーを抑制しうるような目的的誘因・連帯的誘因の提供の意義と動員のあり方,環境NPOの予防的・監視的機能について考察する(第4章)。//環境経済学・環境法学に代表される社会科学的な環境研究のなかで,環境社会学のパースペクティブの独自性は環境運動の分析にある。〈現場〉の環境運動が,環境社会学の誕生とその後の展開過程に対してもちえた国内的・国際的文脈での意義を整理・検討し,近年の社会運動論の研究動向をふまえ,社会運動論の資源動員論・政治的機会構造論・文化的フレーミング論を統合する〈社会運動分析の三角形〉モデルを提唱する(第5章)。//〈現場〉の環境運動が急速に政策志向性を高めつつあるなかで,政策志向的な分析能力を高め,社会学独自のオールタナティブな政策提案を志向することは,環境社会学にとっても喫緊の課題である。社会学の政策科学化が遅れた構造的要因と,政策科学化することの社会的意義を述べ,政策科学としての環境社会学の可能性を展望する(第6章)。//第III部「環境運動の展開」は,環境運動の画期をなした1970年代から今日までの4事例に即し,それぞれの運動過程とそれらが関与していた公共圏の特質と限界を分析する。//70年代の典型事例として,国家による公共性の独占を批判し,新幹線の「影」としての騒音振動公害を集団訴訟によって社会問題として提起した新幹線公害訴訟の公共圏創出の意義と,司法消極主義の壁,弁護団主導化などの運動論的な課題を分析する(第7章)。//チェルノブイリ事故後の1987年,都市部の主婦層を中心に高揚した反原発運動は80年代の典型事例である。自己表出性とネットワーク性を重視し,日本における「新しい社会運動」の典型的な特質を備えていた。その構造と動態を分析し,そのような特性ゆえに一過的な高揚にとどまらざるをえなかったことを明らかにする(第8章)。//新潟県巻町の原発建設をめぐる住民運動は,1996年に日本初の住民投票を実現し,原発建設を事実上中止に追い込んだ。90年代の成功した環境運動の代表である。この運動がなぜ成功しえたのかを,青森県六ヶ所村の核燃料サイクル施設建設反対運動との対比のなかで,政治的機会構造・資源動員・フレーミングに注目して分析する(第9章)。//2000年代の典型事例として,原子力発電のような政府・事業者との対決型イッシューをめぐっても,環境運動が政策志向性を高めてきたことを国内外のグリーン電力の展開例をとおして分析する。とくに執筆者が提唱者となった,日本初のグリーン電力運動の背景と成功の要因,意義を,政治的機会構造・資源動員・フレーミングに注目して分析し,政府セクター・営利セクター・市民セクター間の相互浸透の必要を説く(第10章)。//第IV部「市民セクターと公共圏の変容」は,環境運動の変容と成熟,それに対応する環境問題と環境政策をめぐる公共圏の構造転換に焦点をあてた現代社会論である。//公共圏・公共性が今日,なぜ新たな社会学的焦点となりつつあるのか,社会学的な公共性論をふりかえり,公共哲学復権の意義と背景を論じ,パブリックの概念の変容と環境運動の社会的インパクトに注目しながら,公共性の5つの位相を抽出する(第11章)。//現代の環境運動の焦点は,リスク回避とスケール・デメリットの回避にある。小規模分散型の自然エネルギーに依拠した分権的な社会の構築をめざす,アメリカやヨーロッパの環境運動や持続可能な街づくりの事例を紹介し,その今日的な意義を総括する(第12章)。//NGO/NPOに代表される社会運動の制度化・政策志向化に焦点をあて,日本における1990年代の市民セクターの変容を,組織化の進展,市民オンブズマン活動,住民投票の戦略,コラボレーション,国際化・情報化のインパクトに着目して概括する(第13章)。//終章では,組織化・制度化・専門化の時代を迎えた環境運動の今日的な課題を整理し,人びとを新しい公共圏に誘う回路として,(1)例示的実践の提案と先導的試行,(2)コラボレーション,(3)地方からの変革,という三つのキーワードを提起し,本書全体をしめくくる。
著者
長谷川 公一
出版者
公益財団法人 日本学術協力財団
雑誌
学術の動向 (ISSN:13423363)
巻号頁・発行日
vol.21, no.12, pp.12_40-12_47, 2016-12-01 (Released:2017-04-07)
参考文献数
12
著者
長谷川 公一
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.308-316, 2014 (Released:2015-12-31)
参考文献数
5

第18回世界社会学会議は, 2014年7月13日から19日まで, 横浜市のパシフィコ横浜を会場に開催され, 無事終了した. 国際社会学会の世界社会学会議 (World Congress of Sociology) は4年に1度開催される社会学界最大の学術イベントである. 本稿では, 組織委員会委員長というホスト国側の責任者の立場からこの会議の経過と意義を振り返り, 本大会の成果を今後に引き継ぐための課題を提起したい.1960年代以来, 長い間先送りされてきた世界社会学会議の開催がなぜ2014年大会の招致というかたちで実現したのか, その背景は何だったのか. 開催都市に横浜を選んだのはなぜか. 組織委員会をどのように構成したのか. 世界社会学会議横浜大会は, これまでの世界社会学会議と比べてどのような特徴をもつのか. 組織委員会として, 組織委員長として, どのような課題に直面し, 腐心したのか. 横浜大会の成果と意義は何か. 横浜大会はどのような意味で「成功」といえるのか. 横浜大会の成果を, 研究者個々人が, また日本社会学会がどのように継承していくべきかを考察する. 日本の社会学の国際化・国際発信の重要なワンステップではあるが, 横浜大会は決してゴールではない. 日本社会学会は, 日本の社会学の国際的な発信を, 引き続き組織的にバックアップしていくべきである.
著者
足立 幸男 飯尾 潤 細野 助博 縣 公一郎 長谷川 公一 田中 田中 小池 洋次 山谷 清志 金井 利之 田中 秀明 鈴木 崇弘 渡邉 聡 宇佐美 誠 土山 希美枝 秋吉 貴雄 佐野 亘 蒔田 純 清水 美香
出版者
京都産業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究プロジェクトによって以下の点が明らかとなった。日本政府はこれまで政策改善に向けた努力を疎かにしてきたわけではない(職員の政策能力向上に向けた施策の展開、省庁付属の政策研究機関および議員の政策立案作業支援のための機関の設置、審議会の透明化・民主化など)。大学もまた公共政策プログラムを矢継ぎ早に開設してきた。にもかかわらず、政策分析はいまだ独立したプロフェッションとして確立されておらず、その活用もごく限られたレベルに留まっている。我々は、政策分析の質を向上し、より良い政策の決定・実施の可能性をどうすれば高めることができるかについて、いくつかの具体的方策を確認することができた。