著者
飯高 京子
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.146, pp.4-17, 2010 (Released:2017-03-21)
参考文献数
34

日系移住労働者子女の言語やコミュニケーション発達の遅れは,人生の最も大切な初期母子交流不足から生じやすい。その結果,認知発達や自己像形成も遅れる。さらに幼児期の養育環境が貧しいと,相手の話を注意して聞く態度や一定時間集中して課題に取り組む姿勢が育ちにくい問題がある。したがって子どもたちは就学後の学習活動に適応することが難しい。彼らの落ち着きのなさや学習効果の欠如は,神経学的素因による発達障害の臨床像に類似して誤解されやすく,専門家の助言が必要な場合も多い。彼らは不登校になりやすく日本語読み書き能力も不足しており,就職はきびしい。日本社会への適応も困難になる。ゆえに就学前の子どもたちへの指導は非常に大切である。日本語だけでなく,学習活動準備や認知発達促進を意図したプレスクール実施指導書の紹介がなされた。同時に日本語教師の待遇改善と外国人移住労働者子女への支援システム形成の重要性も強調された。
著者
進藤 美津子 菅原 勉 荒井 隆行 飯田 朱美 平井 沢子 程島 奈緒 安 啓一 飯高 京子 川中 彰 進藤 美津子
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

私共は、平成16年度〜19年度にかけて、音声コミュニケーション障害者、高齢者、聴覚障害者、言語聴覚障害児者に対する支援システム、評価法の開発およびコミュニケーション援助の開発や臨床への応用を目的として、以下の3グループに分かれて研究を行ってきた。研究分担者や研究協力者は、文系と理系からなる学際的なメンバーで構成され、それぞれの専門性を活かした研究に取組み、成果を上げてきたことが特記される。3グループの研究は次の通りである。1.音声コミュニケーション障害者への支援システムの開発とコミュニケーション援助:神経筋病患者の自声による日英両言語のコミュニケーション支援システムの構築を行い、臨床への応用が可能であることを示した。コーパスベース方式でシステム構築を行った後、より少ないデータで構築可能なHMM音声合成方式でも試作を行い実用レベルに達するという評価結果を得た。2.聴覚障害者に対する支援システムの開発とコミュニケーション援助:聴覚障害児者や老人性難聴者のための残響環境下における聞きやすい拡声処理と補聴器のための音声処理方式の開発と実用化への適用を推進した。3.言語聴覚障害児者に対する支援システムの開発とコミュニケーション援助:高次脳機能に障害を持つ、後天性小児失語症児や中枢性聴覚障害児のコミュニケーション能力向上のための評価、指導法を開発し、発達性構音障害の鑑別診断となる基礎的研究と臨床への応用を行い、発達性読み書き障害児への基礎的、臨床的検討を行った。また、言語習得過程の不備からコミュニケーション障害が形成される可能性について問題提起した。