著者
中村 恵美子 伊藤 誠治 林 敬子 馬場 孝秀
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.318-326, 2006-07-05
参考文献数
34
被引用文献数
3

北陸地域においてより安定的した収量性、精麦品質をもつ新品種を育成するために、現在栽培されているミノリムギとファイバースノウを含む精麦用オオムギ4品種を用い、収量や精麦品質の年次変動の品種間差を調査した。その結果、穂数、千粒重、整粒歩合、粗蛋白含有率、硝子率、硬度差の各形質では、品種と年次との交互作用は検出されなかった。一方、整粒重、リットル重、55%搗精白度、55%搗精時間には交互作用があった。ミノリムギはオオムギの生育に良好な年では整粒重が多かったが、多雪年や登熟期に降雨が多い年では整粒重の低下が著しかった。一方、北陸皮35号は整粒重の年次変動が少なく安定的な品種であった。リットル重は年次によって最も重い品種と軽い品種が異なっていた。55%搗精白度と55%搗精時間においては、シュンライが年次変動が最も小さく安定していた。ミノリムギは年次にかかわらず55%搗精白度が最も低く、55%搗精時間が最も長かった。整粒重には登熟期の降水量や積雪の多少が、リットル重、55%搗精白度、55%搗精時間には登熟期の降水量がそれぞれ影響を及ぼし、その程度は品種により異なっていた。整粒重、リットル重、精麦品質が安定して高位である形質をもった品種育成のためには、多雪年を含み登熟期の降水量の異なる複数年の試験を行うことが必要であると考えられた。雲形病発病程度は年次間差のみあり、罹病性品種は自然感染の条件下では安定して発病しなかった。