著者
竹原 正也 永浜 政博 小林 敬子
出版者
徳島文理大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

宿主は、細菌感染に対して好中球の産生を亢進し対抗するが、一部の細菌感染は致死的である。我々は、ウエルシュ菌が感染したマウスや、α毒素を投与したマウスでは成熟好中球が減少することを発見した。また、本菌の感染は末梢の成熟好中球を減少させた。骨髄細胞をα毒素で処理すると、脂質ラフトが変化し、好中球の分化が抑制された。脂質ラフトの阻害剤を処理した骨髄細胞では、好中球の分化が抑制され、脂質ラフトの阻害がα毒素による好中球の分化抑制に関与することが示唆された。以上の結果より、ウエルシュ菌α毒素は好中球の分化を阻害し宿主免疫を障害する、本菌の新しい免疫回避機構が明らかとなった。
著者
若林 敬子
出版者
日本人口学会
雑誌
人口学研究 (ISSN:03868311)
巻号頁・発行日
no.9, pp.59-69, 1986-05-30

中国の人口政策,第1の人口の量をめぐる政策は,晩婚,晩産,少生,稀(出産間隔をあけること)である。今世紀末人口を12億にとどめる目標を目指して,いわゆる"1人っ子政策"が進められ,計画外第2子の出産,多子(第3子以上)率の根絶が当面の課題となっている。1984年春以降,第2子出産の条件が"緩和・拡大"され,1985年9月の第7次5カ年計画および「2000年の中国と就業」研究小組では,2000年の人口を12.5億人前後という"修正"がなされている。第2は,優生をめぐる問題であり,いとこ同士の結婚・ハンセン氏病患者の結婚を禁止している(80年婚姻法)。第3は,農業余剰労働力が今世紀末までは2.5億人以上にもおよぶとされ,"離農不離郷"(離農はしたが離村せず)の新しいタイプの労働者を誕生させつつある。第4は,人口高齢化と年金改革等の問題である。年金・賃金・福祉をトータルに把握し,全国的なあるべき社会保障制度の検討が初められだした。以上のように,本小稿は,中国の最近の人口政策を量,質,移動・分布,高齢化の視点から検討し,かつ各省市の計画出産条例の内容を紹介する。
著者
中村 恵美子 伊藤 誠治 林 敬子 馬場 孝秀
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.318-326, 2006-07-05
参考文献数
34
被引用文献数
3

北陸地域においてより安定的した収量性、精麦品質をもつ新品種を育成するために、現在栽培されているミノリムギとファイバースノウを含む精麦用オオムギ4品種を用い、収量や精麦品質の年次変動の品種間差を調査した。その結果、穂数、千粒重、整粒歩合、粗蛋白含有率、硝子率、硬度差の各形質では、品種と年次との交互作用は検出されなかった。一方、整粒重、リットル重、55%搗精白度、55%搗精時間には交互作用があった。ミノリムギはオオムギの生育に良好な年では整粒重が多かったが、多雪年や登熟期に降雨が多い年では整粒重の低下が著しかった。一方、北陸皮35号は整粒重の年次変動が少なく安定的な品種であった。リットル重は年次によって最も重い品種と軽い品種が異なっていた。55%搗精白度と55%搗精時間においては、シュンライが年次変動が最も小さく安定していた。ミノリムギは年次にかかわらず55%搗精白度が最も低く、55%搗精時間が最も長かった。整粒重には登熟期の降水量や積雪の多少が、リットル重、55%搗精白度、55%搗精時間には登熟期の降水量がそれぞれ影響を及ぼし、その程度は品種により異なっていた。整粒重、リットル重、精麦品質が安定して高位である形質をもった品種育成のためには、多雪年を含み登熟期の降水量の異なる複数年の試験を行うことが必要であると考えられた。雲形病発病程度は年次間差のみあり、罹病性品種は自然感染の条件下では安定して発病しなかった。
著者
櫻井 純 小林 敬子 永浜 政博 藤井 儀夫
出版者
徳島文理大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

ウエルシュ菌α毒素は、致死、壊死、溶血活性、さらには、血管、腸管の収縮活性など多彩な生物活性を有する特異な毒素である。一方、本毒素は、本菌によるガス壊疸の主要毒素であるので、この感染症に対する毒素の役割を明らかにするため、主に、細胞膜に対する作用に焦点を絞り検討した。α毒素をウサギ赤血球に作用させると、毒素量に従って破壊される赤血球数が増加し、さらに、血球膜中におけるホスファチジン酸合成の促進することが判明した。このホスファチジン酸合成の促進は、赤血球膜ゴ-スト本毒素を作用させた場合も認められた。これらの結果から、本毒素による溶血作用発現にはホスファチジン酸合成が密接に関係していると推察される。次に、GTP、NAD存在下赤血球膜ゴ-ストに本毒素を作用させると、ホスファチジン酸合成は、著しく促進されることが判明した。但し、intact赤血球における本毒のホスファチジン酸合成の促進作用に対して、GTP、NADの添加効果は認められなかった。これらの結果から、本毒素による赤血球膜のリン脂質合成促進は、内因性のGTP、NADが重要な因子であると推察される。これらの結果を確かめるため、血小板に対する本毒素の影響を検討した。ウサギ血小板は、毒素の用量に従って凝集し、しかも、血球の場合と同様に細胞膜中のホスファチジン酸量も増加することが判明した。また、赤血球の場合も、血小板の場合も、本毒素による他のリン脂質、そして、アラキドン酸の合成促進は認められなかった。一方、脂肪細胞に毒素を作用させると、毒素量に従ってアラキドン酸合成が促進されることが明らかとなった。以上から、本毒素が生体膜に作用すると、リン脂質代謝が活性化され、その影響によっておのおのの細胞が有する特有の代謝系も活性化されると推察される。その結果、細胞膜が破壊されたり、細胞凝集が引き起こされると思われる。
著者
高橋 明善 古城 利明 若林 敬子 大内 雅利 黒柳 晴夫 桑原 政則
出版者
東京国際大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

一 研究課題1 日米特別行動委員会(SACO)合意に基づく沖縄の基地返還・移設、跡地利用に関する研究(1)名護市における基地移設・ジュゴン保護と住民運動。(2)普天間飛行場移設問題の政治過程。(3)読谷飛行場の返還と跡地利用計画に関して1996年のSACO合意以来の経過を追跡研究した。2 基地引き受けの代替として進められる地域振興策と内発的振興の研究を次の場面で実施した。(1)基地移設に関する日米SACO合意の実施過程。(2)移設先並びに沖縄北部振興(3)読谷飛行場跡地利用 (4)普天間飛行場跡地利用 (5)環境保全と観光開発3 沖縄を中心とする国際交流の研究。沖縄の持つ国際性を移民社会と歴史研究の中で検討した。(1)中国と沖縄の歴史的交流の研究 (2)ブラジルにおける沖縄文化 (3)歴史の中の沖縄とアジア二 研究上の留意点と得られた成果主要研究テーマである基地の返還・移設問題に関して次のような問題を特に重視した。(1)沖縄の戦略的位置づけの変化による米軍再編と基地負担軽減問題。(2)移設元の普天間基地所属の沖縄国際大学への落下、騒音、婦女暴行、危険な訓練実施などの基地被害、基地災害がもたらす基地批判世論の盛り上がり。(3)普天間基地の名護市移設がもたらす環境破壊に反対する運動の国際的拡がり。(4)知事先頭の日米地位協定改定要求運動。(5)以上の結果としてもたらされた普天間基地移設見直しと日米政府の政策転換。(6)普天間基地移設をめぐる政治過程と跡地利用問題。(7)読谷飛行場の返還と跡地利用計画の進展。得られた最も重要な知見は次の2点にある。(1)環境保全への配慮なくしては基地問題の処理も、地域振興も不可能であるほどに環境問題が地城政策の実施にとって根本的な重要性をもつにいたった。(2)沖縄の基地の存在と基地政策は、日米政府による世界最強のシステムが作り出したものである。しかし、そのシステム世界も住民の生活世界からの抵抗を受けることにより、政策を調整・譲歩せざるを得なくなったという重要な帰結がもたらされた。ふたつの世界の葛藤のダイナミズムの研究を通して歴史変動への想像力を拡大することができた。
著者
若林 敬子 聶 海松 馮 文猛 左 学金 周 海旺 周 大鳴 麻 国慶 李 強
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は中国人口問題についての社会学的実証調査研究であり、特に国策として位置づけられている"人口と環境"問題について、今回は、高齢化・社会保障・出生性比の視点から多角的なアプローチを行ってきた。都市(上海市、北京市)、農村(湖南、海南、内モンゴル)の5地区で本格的社会学的サンプリング調査、量的・質的調査をこれまでに行い、その問題点を総合的にあぶりだすことに成功した。また、その理論的・実証的な比較と総括をまとめあげ、中国の人口問題の社会学的研究の最新結果の公表・刊行した。