著者
左近 直美 上林 大起 中田 恵子 駒野 淳 中村 昇太
出版者
大阪府立公衆衛生研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

ノロウイルスの長期にわたるシステマティックな疫学研究により、ノロウイルスに対する免疫は集団レベル、個体レベルともに遺伝子型特異的であり、その持続期間は2~3年であることを示した。また、繰返される感染によって免疫は増強されることが推察された。多様な遺伝子型の存在下で、年齢や感染歴を背景にダイナミックにヒトの中で流行している。これらはノロウイルスワクチンの基礎的知見となる。
著者
駒野 淳
出版者
国立感染症研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

GPCR多量体化は小胞体からの脱出、細胞膜輸送、リガンド依存的/非依存的エンドサイトーシス等に関与するといわれている。多量体化の生物学的意義は、GPCR単量を作成してその機能を野生型タンパク質と比較するのが最も直接的である。実際いくつかのGPCRでは単量体GPCRを作出する事に成功し、多量体化が小胞体からの脱出やエンドサイトーシスに重要であることが判明した。しかし、全てのGPCRに共通した普遍的な多量体モチーフは同定されていない。我々はGPCRの一種であるCXCR4が多量体化することをBRET/BiFCにて実証した。これに加えて細胞質ドメインC末端付近のアミノ酸343-346が欠損すると多量体化効率が顕著に低下する事を明らかにした。本研究ではこれを基礎としてCXCR4単量体誘導体を作出して、多量体化の生理的意義の解明を試みた。その結果、厳密な意味での単量体CXCR4作出は困難であった。しかし、多量体化レベルと機能の相関を解析することにより、CXCR4多量体化の生理学的な意義の一つは細胞表面におけるタンパク質発現レベルの制御であることが判明した。これは定常的エンドサイトーシスの効率により決定される可能性が示唆された。欠損変異体のリガンドへの反応性は増強していた。これは細胞レベルのCXCR4のC末端欠損によって引き起こされる遺伝的疾患WHIM症候群の表現型と非常に良く似ていた。以上よりCXCR4の多量体化はリガンド依存的/非依存的エンドサイトーシスと機能的に関連することが示された。本研究結果はCXCR4多量体化の制御法開発、WHIM症候群の病態理解と治療法開発に示唆を与えるものと思われる。