著者
高島 響子
出版者
一般社団法人 日本移植学会
雑誌
移植 (ISSN:05787947)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.37-43, 2022 (Released:2022-05-19)
参考文献数
23

Uterus transplantation (UTx) has become a new potential option for women with absolute uterine factor infertility (UFI), who desire to give birth to their own children. In UTx, organ transplantation from living or deceased donors is used under the goal of assisted reproductive technology. In July of 2021, the commission for ethical issues on UTx under the Japanese Association of Medical Sciences published the report, and allowed the conducting of clinical research on UTx with a limited number of patients. This article discusses bioethical considerations of UTx. Transplantation from a living donor is an exceptional procedure which does not fulfill ethical principles of non-maleficence nor justice. Autonomy is also affected because the national guideline requires that a donor should primarily be a family member of the recipient and it raises a concern whether both a donor and a recipient feel pressure. Transplantation from a living donor is accepted because beneficence (saving a patient’s life) surpasses the other principles. This formula cannot be applied to UTx from living donors because the uterus is not a vital organ, and it is difficult to ethically justify such a transplantation. The interest of children is another important ethical issue. From a research ethics perspective, UTx is an unproven intervention to achieve the clinical goal for UFI women. Implementing UTx not as treatment but as clinical research first is supported by the standard of research ethics today. However, allowing clinical research embraces the practice of UTx itself, while unresolved ethical considerations are left behind. Continuous discussion open to public, review of institutional systems including legislation reform, and wholistic care and support for UFI women are needed.
著者
高島 響子 児玉 聡
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.75-85, 2012

近年英国で問題となっているスイスへの渡航幇助自殺は、渡航医療の一形態と捉えることができる。本稿では、英国国内の生命の終結をめぐる議論およびPurdy v. DPP判決の内容と判決後に出された自殺幇助の訴追方針を概観し、渡航幇助自殺が英国の自殺幇助の議論全体にもたらした影響について考察した。英国では、渡航幇助自殺を行った患者を手助けした家族は訴追されないケースが蓄積し、Purdy貴族院判決後には、自殺幇助における訴追方針の明確化が求められた。こうして、国内で自殺幇助を合法化することは実現しないまま、渡航幇助自殺を事実上許容する訴追方針が出された。国内の自殺幇助の問題が、渡航幇助自殺を包含する形で一応の解決に落ち着いたともとれる現状にあることがわかった。このような展開がもたらされたのは、渡航医療の存在が国内議論に変化を生じさせた結果だと考えられる。自国内で実施不可能な行為が、渡航医療の利用によって海外で実現されるケースが蓄積されることにより、国内規制の議論に一種の「緊張関係」が生じ、従来の論争構造とは異なる新たな展開が生まれる可能性が示唆された。日本においても、臓器移植や生殖補助医療などにおいて、渡航医療を利用するケースがすでに報告されており、今後はそのようなケースの蓄積が、国内の議論や規制に与える影響を検討する必要がある。
著者
高島 響子 児玉 聡
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.75-85, 2012-09-19 (Released:2017-04-27)

近年英国で問題となっているスイスへの渡航幇助自殺は、渡航医療の一形態と捉えることができる。本稿では、英国国内の生命の終結をめぐる議論およびPurdy v. DPP判決の内容と判決後に出された自殺幇助の訴追方針を概観し、渡航幇助自殺が英国の自殺幇助の議論全体にもたらした影響について考察した。英国では、渡航幇助自殺を行った患者を手助けした家族は訴追されないケースが蓄積し、Purdy貴族院判決後には、自殺幇助における訴追方針の明確化が求められた。こうして、国内で自殺幇助を合法化することは実現しないまま、渡航幇助自殺を事実上許容する訴追方針が出された。国内の自殺幇助の問題が、渡航幇助自殺を包含する形で一応の解決に落ち着いたともとれる現状にあることがわかった。このような展開がもたらされたのは、渡航医療の存在が国内議論に変化を生じさせた結果だと考えられる。自国内で実施不可能な行為が、渡航医療の利用によって海外で実現されるケースが蓄積されることにより、国内規制の議論に一種の「緊張関係」が生じ、従来の論争構造とは異なる新たな展開が生まれる可能性が示唆された。日本においても、臓器移植や生殖補助医療などにおいて、渡航医療を利用するケースがすでに報告されており、今後はそのようなケースの蓄積が、国内の議論や規制に与える影響を検討する必要がある。
著者
高島 響子 東島 仁 鎌谷 洋一郎 川嶋 実苗 谷内田 真一 三木 義男 武藤 香織
出版者
科学技術社会論学会
雑誌
科学技術社会論研究 (ISSN:13475843)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.147-160, 2020-04-30 (Released:2021-04-30)
参考文献数
23
被引用文献数
1

ゲノム研究/医療の発展のために,研究で利用した患者・市民を含む研究参加者個人のゲノムデータを多くの研究者等で共有するデータ共有(GDS)が広がっている.GDSではデータ提供者のプライバシーの保護並びに意思の尊重が倫理的な課題であり,データ提供者となりうる患者・市民の声を反映した仕組みづくりが重要である.GDSに関する患者・市民の期待と懸念について,高度に専門的かつ一般には適切な情報の入手が困難であるGDSに対する意見を得るため,情報共有と対話の二部構成からなる対話フォーラムを試行した.その結果,医療目的の研究・開発に対するGDSは理解と期待が示された一方で,非医学的な領域での利用やデータのセキュリティ,ゲノムリテララシーに対する懸念等が挙がった.研究者との対話を通じて,自身のデータが使われた研究の内容や成果を知りたいといった研究者に対する要望や,市民・患者の参画について具体的な提案が出された.
著者
高島 響子
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

メディカルツーリズムにおいて、患者の「渡航行為」により新たに生じる問題を抽出するために、近年英国で問題となっている英国からスイスへの渡航幇助自殺について、事例研究、文献調査、ならびに英国にて当事者への聞き取りを行った。その結果、英国内では実施することのできない自殺幇助を、実施可能なスイスに渡航して実現する人(患者)が登場したことで、英国内の議論に変化が生じたことがわかった。英国は、積極的安楽死ならびに自殺幇助を法律で禁じており、それらを望む人々による法改正等を求める裁判や運動が、20世紀初頭より繰り返されてきた。行方で、スイスは利他的な理由からなされた自殺幇助は法的に罰せられず、事実上実施可能である。2002年頃より、英国からスイスへと渡航して自殺幇助を受ける人が報告されるようになった。こうした「渡航幇助自殺」の増加に伴い、英国内において1.国内での自殺幇助実施を認める要請、2.渡航幇助自殺を認める要請の2方向で議論が起きた。現在のところ1.の要請は成功に至っておらず、一方2.については、2009年Debbie Purdyの貴族院判決において、渡航幇助自殺を求める原告が初めて勝訴し、渡航幇助自殺が事実上容認されたともとれる状況が生まれたことがわかった。国内では禁止規制により解決できない問題が、合法的に実施可能な他国の存在を利用した渡航医療を包含することで解消されるという構図が生じた。これを「一応の解決」とみなすことも可能だが、国内における実施容認へのさらなる要請、また受入国側の規制変化(渡航医療の受入制限)の可能性が考えられ、すでにそうした動きもみられた。以上のような渡航医療と国内規制および受入国との構図は、国によって法規制が異なる他の医療にも当てはまりうるものであり、日本において問題視される渡航臓審移植や渡航生殖補助医療の今後の議論の在り方に有用な示唆を与えた。