著者
河崎 靖 鈴木 克己 安場 健一郎 高市 益行
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.395-400, 2011 (Released:2011-08-23)
参考文献数
20
被引用文献数
3 11

トマトの冬季施設生産における燃料費の削減のため,通常地面に配置する温風ダクトを,栽培ベッド上に吊り下げ,温風が生長点―開花花房付近に直接当たるように配置して局部加温を実施し,夜間の垂直温度分布,収量および消費燃料を慣行の暖房法と比較した.局部加温によって,群落上部で慣行より夜間の気温および植物体表面温度は高く推移したが,群落下部は慣行より低温となった.局部加温区における上物果率および果重は慣行区より大となり,品種により程度に差はあるものの,上物収量が多くなる可能性が示された.また,果実はゼリー部の比率が高くなった.面積当たりの燃料消費量は,局部加温区で慣行と比較して26.2%の削減効果が見られ,ダクト吊り下げによる局部加温法が実用的に実施可能であることが示された.
著者
大川 浩司 菅原 眞冶 高市 益行 矢部 和則
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.449-454, 2007-07-15
参考文献数
19
被引用文献数
3

施設内における高温および低温条件が,単為結果性トマト'ルネッサンス'の着果および果実肥大特性に及ぼす影響について検討した.日最高気温の平均値が39.2℃の高温条件において,'ルネッサンス'は単為結果性の安定した発現により100%着果し,発育不良果の発生もみられなかった.同条件において,非単為結果性トマト'桃太郎ヨーク'は受精できず,4CPA液の処理なしでは果実が正常に肥大しなかった.一方,日最低気温の平均値が5.9℃の低温条件においても,'ルネッサンス'は単為結果性の安定した発現により100%着果し,発育不良果も発生しなかった.同条件における'桃太郎ヨーク'は,受精が不完全となって,発育不良果が61%発生し,果実の正常な肥大には4CPA液の処理が不可欠であった.上述したような高温および低温条件において,'ルネッサンス'は受粉や合成オーキシン処理を省略しても果実は正常に肥大したことから,非単為結果性トマトに比べて栽培適応性か広く,生産性の高い栽培が可能と考えられる.
著者
安場 健一郎 黒崎 秀仁 高市 益行 大森 弘美 川嶋 浩樹 星 岳彦
出版者
日本植物工場学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.29-35, 2010-03-01
被引用文献数
2

ユビキタス環境制御システムを導入した自然換気温室における細霧噴霧と換気窓の開度制御による, エンタルピを指標とした温湿度管理法に関して検討を行った. 天窓の開度の調整は2分ごとに行い, 温室内のエンタルピを60 kJ kg<sup>-1</sup>とすることを目的とした. 温室内の目標エンタルピは気温が23℃の時に相対湿度が83%となる値である. 温室内外の温湿度と日射量の情報から熱収支法により温室内の換気率を計算し, また, 温室内のエンタルピが60 kJ kg<sup>-1</sup>とするための目標換気率を計算し, 新たな天窓の開度に制御を行った. 細霧は天窓制御時に相対湿度の目標値を下回ったときに作動し, 最大90秒を目処として, 相対湿度の設定値を上回ったときに停止した.<BR>2008年11月1日から6日の10時から14時の間に制御を実施した. 温室内の平均気温は23~24℃となり, 相対湿度は設定した値より1から2%程度高く推移した. 11月2日の温室内のエンタルピは平均値では60.2 kJ kg<sup>-1</sup>となり目標値に近くなったが短期間での値の変動がみられた一方, 屋外のエンタルピは温室内よりも低く, 変動も小さくなった. さらに高精度の制御を実施するためには制御間隔を短くする必要があると考えられた. 温室の換気率は1 m<sup>3</sup> m<sup>2</sup> min<sup>-1</sup>以下となり, かなり低い値を示しため, 本法で示した温湿度管理を実施することで効率的な炭酸ガス施用を実施できると考えられた.