著者
Chowdappa Rekha 長谷川 信美 後藤 正和 小薗 正治 藤代 剛 高橋 俊浩 高木 正博 野上 寛五郎 園田 立信
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌 (ISSN:18802133)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.149-156, 2005
参考文献数
21
被引用文献数
2

幼齢ヒノキ造林地(YF区, 2003年6-9月)および野草地(NG区, 2003年10・11月)に放牧された黒毛和種雌牛の行動とルーメン内性状の特性を明らかにするために、24時間行動観察とGPSによる移動距離測定を各月1回, ルーメン液採取を各区2回行った。採食行動時間は平均537.7±109.8分/日で、Miscanthus sinensis採食割合と正(r=0.436, p<0.05)、Pleioblastus simonii採食割合と負(r=-0.676, p<0.001)の有意な相関を示した.M. sinensis採食割合は、P. simoniiおよびその他の植物採食割合と負(p<0.001)、横臥姿勢割合と正(p<0.05)の相関を示した。放牧期間中の移動距離は5001-6879mであった。ルーメン液中総VFA濃度に大きな変動はみられなかったが、個々の脂肪酸割合には牧区と時期によって変動に違いがみられた。NH_<3^->N濃度はYF区がNG区よりも高かった.総プロトゾア数/mlはYFで放牧初期2.0×10^6から放牧後期3.0×10^5に減少し、NGでは変化は示さず1.0×10^6で、両区ともEntodinium割合が最も高くかった。総バクテリア数/mlは1.4×10^7-8.2×10^8で、cocci (+)とcocco (-)の割合が高かった。この研究において、牛は幼齢造林地と野草地放牧に、行動を変化させ多様な植物を選択することで適応する能力があることが示された。
著者
高木 正博 Jolivalt Sylvain
出版者
駒澤大学
雑誌
駒澤地理 (ISSN:0454241X)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.1-13, 1995-03

ライン川が形成したアルザス平野への水の供給は,主としてヴォージュ山地および平野への降水と,これを水源とするイル川とその支流,および,涵養を受けた地下水によってまかなわれている。アルザス平野の降水量は,年間1,000mm以下(1931〜1960年の平均値)であるが,山地は1,000〜2,500mm以上あり,とくにヴォージュ山地南部に集中する傾向がある。したがって降水量は,山地と平野では大きく異なる。1年間の月別降水量変化の特徴は,平野では夏季にピークが現れるのに対し,山間地では冬季に降雪を含む降水量のピークがみられる。また,冬季の激しい降雨と融雪水は河川を増水させ,洪水の原因ともなる。表流水の流出形態は,ヴォージュ山地を水源とする自然河川のほか,分水路や農業用水路などの人工河川・水路と,17世紀以来の開削の歴史をもつ運河が平野を網目状に巡り,流況は複雑である。また,それぞれの河川にはかなりの流量があり,勾配がなだらかな平野をとうとうと流れている。地下水位は概して高く,とくに平野中央部のイル川とライン川の間には,アルザス語でRiedと呼ばれるこの地方独特の湿地帯が多く形成されている。冬季には増水により,畑地などが湛水する現象が見られ,アルザスの風物詩になっている。また,平野では上水道はすべて地下水に依存し,工業用水や農業用水もほとんど地下水を利用しているたあ,良質で豊富な地下水を保護することが重要な課題になっている。アルザス地方の運河は,船舶の航路として,物資運搬・交通用の大規模な運河から,今は格下げされ小型船やレジャーボートの航行が主なもの,また運河機能が廃棄されて普通河川と変わらないものなど,様々な運河が存在する。また水路の水は,平野の自然河川と合・分流しており,水門の管理は,都市を洪水から防御するためにも重要である。
著者
三浦 知之 大園 隆仁 村川 知嘉子 矢野 香織 森 和也 高木 正博
出版者
宮崎大学農学部
雑誌
宮崎大学農学部研究報告 (ISSN:05446066)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.17-33, 2005-03
被引用文献数
2

宮崎港の北に位置する阿波岐原公園には、9.6haの一ツ葉入り江があり、潟湖干潟が形成される。宮崎市内にあり、市民の立ち入りやすい公園内にあることなどから、極めて重要な意味をもった干潟であると考え、2001年から2004年まで、生物相の調査を行った。記録された貝類は、36種(腹足綱16種、掘足綱1種、二枚貝綱19種)であった。フトヘナタリ科巻貝のフトヘナタリCerihidea(Cerihidea)rhizophorarumは南奥部の潮間帯上部で密度が最大で104個体/m(2)を、カワアイC.(Cerihideopsilla)djadjariensisが北部の砂泥地の潮間帯下部で32個体/m(2)を、ヘナタリC.(Cerihideopsilla)cingulaaが南奥部の潮間帯上部で8個体/m(2)を記録した。また、日本本土では絶滅に近い状態にあるムシロガイ科のカニノテムシロPliarcularia bellulaが入り江の南端に普通に見られた。二枚貝類でも絶滅寸前と評価されているムラサキガイSoleellina adamusiiがごく普通に見られる。一ツ葉入り江から出現し記録された十脚甲殻類は、14科34種であり、カニ類だけでも6科26種に達した。飛来した湿地性鳥類は、8目12科39種であった。このような貴重な生物相と都市の中に位置する特徴から、一ツ葉入り江は多様性の保全と環境教育の啓蒙の視点で極めて重要な湿地であると結論された。
著者
高木 正博 野上 寛五郎 仲川 泰則
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.86, no.3, pp.279-282, 2004-08-16
被引用文献数
5

南日本太平洋側の温暖多雨な気候と急峻な地形が山地小流域の降水に伴う増水時の渓流水の無機成分濃度の変動パターンに及ぼす影響を把捉するために,宮崎平野の西端の丘陵地帯に位置する面積2.4haの針葉樹人工林小流域において,1年間にわたり12の増水イベントの観測を行った。その結果,1)季節,降水量,先行降雨指数および増水前流量に依存しない増水時のEC,pH,Na^+,Mg^<2+>,Ca^<2+>,およびCl^-の減少とNO_3^-の増加,2)夏期の増水時の硝酸濃度の顕著な上昇,3)明瞭なフラッシング,の3点が特徴として明らかになった。1点目は急峻な地形による卓越しやすい土壌水の影響が,2点目は国内でも著しいこの地域の夏期の高温と多雨の影響が表れていると推測された。