- 著者
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高木 正博
Jolivalt Sylvain
- 出版者
- 駒澤大学
- 雑誌
- 駒澤地理 (ISSN:0454241X)
- 巻号頁・発行日
- vol.31, pp.1-13, 1995-03
ライン川が形成したアルザス平野への水の供給は,主としてヴォージュ山地および平野への降水と,これを水源とするイル川とその支流,および,涵養を受けた地下水によってまかなわれている。アルザス平野の降水量は,年間1,000mm以下(1931〜1960年の平均値)であるが,山地は1,000〜2,500mm以上あり,とくにヴォージュ山地南部に集中する傾向がある。したがって降水量は,山地と平野では大きく異なる。1年間の月別降水量変化の特徴は,平野では夏季にピークが現れるのに対し,山間地では冬季に降雪を含む降水量のピークがみられる。また,冬季の激しい降雨と融雪水は河川を増水させ,洪水の原因ともなる。表流水の流出形態は,ヴォージュ山地を水源とする自然河川のほか,分水路や農業用水路などの人工河川・水路と,17世紀以来の開削の歴史をもつ運河が平野を網目状に巡り,流況は複雑である。また,それぞれの河川にはかなりの流量があり,勾配がなだらかな平野をとうとうと流れている。地下水位は概して高く,とくに平野中央部のイル川とライン川の間には,アルザス語でRiedと呼ばれるこの地方独特の湿地帯が多く形成されている。冬季には増水により,畑地などが湛水する現象が見られ,アルザスの風物詩になっている。また,平野では上水道はすべて地下水に依存し,工業用水や農業用水もほとんど地下水を利用しているたあ,良質で豊富な地下水を保護することが重要な課題になっている。アルザス地方の運河は,船舶の航路として,物資運搬・交通用の大規模な運河から,今は格下げされ小型船やレジャーボートの航行が主なもの,また運河機能が廃棄されて普通河川と変わらないものなど,様々な運河が存在する。また水路の水は,平野の自然河川と合・分流しており,水門の管理は,都市を洪水から防御するためにも重要である。