著者
高村 誠之 八島 由幸
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告オーディオビジュアル複合情報処理(AVM) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.25, pp.7-12, 2004-03-04

マルチスペクトル画像は従来衛星画像などでは用いられていたが、近年視覚を対象とする装置であるプリンタ、カメラ、ビデオなどでも次第に用いられつつある。多バンド化することでさまざまな機能性が実現される一方、信号の容量はバンド数に比例して増大するため、特に動画像において効率的圧縮が望まれる。本稿では符号化に適したフォーマットを検討し、実際に6バンド映像信号(48 bit/pel)を、JPEG 2000 MPEG-4 Studio Profileおよび近年標準化されたH.264により符号化した。ビットレート3.5 bit/pelを境にそれ以上ではJPEG2000が、それ以下ではH.264が最も高いPSNRを示した。MPEG-4 Studio Profileは常に中間の性能であった。Multispectral imaging, which has been common in satellite image acquisition to a certain extent, is recently being used in visual imaging systems such as printers, digital/analog cameras, still/video cameras, projectors and even displays. The reason is the variety of functionalities it provides. As the amount of image data is proportional to the number of bands, efficient compression of such data sets, particularly for video data, is necessary. This paper provides a basic investigation of multispectral video coding, such as inter-band decorrelation, visible/invisible separation and non-linear signal transform prior to encoding. We use a six-band video sequence (48 bit/pel) as the test data. The video/image codecs of JPEG 2000, MPEG-4 Studio Profile, as well as the newly developed standard H.264, are compared in a coding experiment. The results show that JPEG 2000 yields higher PSNR than the other codecs at bit rates of around 3.5 bit/pel and above. H.264 performs best at lower bit rates. MPEG-4 Studio Profile is always the second best codec.
著者
高村 誠之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告オーディオビジュアル複合情報処理(AVM) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.102, pp.71-76, 2006-09-29
参考文献数
21
被引用文献数
6

Distributed Video Coding (DVC) は、近年主に欧米において研究の高まりをみせている新しいパラダイムのVideo符号化方式である。H.264/AVC等従来の符号化の枠組みでは、符号化側が冗長性を削減した結果をエントロピ符号化し、情報圧縮を実現しているのに対し、DVCの枠組みでは、従来方式と同じ符号量を伝送しつつ、復号側で動き補償を行い従来方式と同等の復号品質を得ようとする。その理論的裏づけは1970年代のSlepian、WolfおよびWyner、Zivらの研究に端を発する古典的なものであるが、近年のDVC要素技術の性能向上、ネットワーク環境の変化に伴うDVC応用先の広がりなどが契機となり、シーズ・ニーズの両面から研究者の注目を集めることとなった。本稿では、DVCの理論、実装方法、研究動向を述べた後、性能改善や符号量制御等のDVCが抱える課題およびそれらの解決策を述べる。Distributed Video Coding (DVC), a new video coding paradigm, has recently been attracting researchers' attention, particularly in the West. Opposed to traditional coding frameworks such as of H.264/AVC, in which the encoder reduces the redundancy mainly by motion compensation, the decoder takes care of motion compensation in DVC framework, while maintaining both transmitted bit amount and decoded picture quality the same. The theoretical foundation of DVC dates back to the works of Slepian-Wolf and Wyner-Ziv in early 70s. Encouraged by recent advances of DVC-related technologies and of ubiquitous networking environment, more and more research effort has been devoted to DVC field. In this paper, after describing the theory behind DVC, its practical implementation and research trends, we will discuss its future-work items that deserve further improvement, which includes coding efficiency, rate control and so on.
著者
坂東 幸浩 高村 誠之 上倉 一人 八島 由幸
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 33.6 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
pp.13-17, 2009-02-04 (Released:2017-09-20)
参考文献数
10

近年、撮像系のフレームレートの増加は目覚しく、1000[Hz]を超える高フレームレート映像が撮影可能となっている。一方、現行のディスプレイの上限は60[Hz]程度であり、映像の入力・出力システムのフレームレートの上限は非対称である。高速度カメラで撮影された映像を実時間再生で表示する場合には、フレームレートのダウンサンプリングが必要となる。従来、ダウンサンプリング後のフレーム間隔を等間隔に保つようにダウンサンプリングが実施されていた。これは、フレーム間隔を非等間隔にした場合、ジャーキネスが発生するという知見に基づくものである。しかし、ダウンサンプリングの対象が高フレームレート映像の場合、フレームが時間方向に高密度にサンプリングされているため、等間隔からの乖離が一定閾値以内であれば、フレームを厳密に等間隔に選択しなくても、視覚的には、大きな画質劣化(ジャーキネス)を発生しない。したがって、ダウンサンプリング後のフレーム間隔に対する等長性という制約条件を緩和することができる。この制約条件の緩和により、ダウンサンプリング後のフレーム選択に関する自由度が高くなる。視覚的に同等画質であれば、符号量が小さなシーケンスであることが望ましい。そこで、本稿では、ダウンサンプリング後のシーケンスに対する符号化効率の観点から最適なダウンサンプリング法を検討する。具体的には、ダウンサンプリング時にフレーム間予測誤差電力を最小化するようフレームを選択する。均等間隔にフレームを間引く方法と比べて、提案手法はフレーム間予測画像のPSNRを0.13〜0.23[dB]向上きせることが確認できた。
著者
八島 由幸 高村 誠之
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 通信ソサイエティマガジン (ISSN:21860661)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.43-52, 2019-06-01 (Released:2019-06-01)
参考文献数
24

映像の高解像度化や,SNS 普及によるコンシューマ生成ビデオの急速な増加により,今まで以上に効率的な映像配信システムの構築が求められている.IoT 時代を迎えて様々な形態の映像データが登場し,配信/視聴環境も多様化する中で,映像配信のキー技術である映像圧縮符号化にも新しい視点からの研究が進んでいる.予測と周波数変換といった伝統的な技術を改良することで更なる高圧縮化を図る次世代国際標準VVC への期待が高まり,また一方では,視覚特性を駆使した最適化や,Web 検索の応用,ビッグデータを用いた機械学習の適用など,従来手法にはとらわれない画像生成型の圧縮手法にも注目が集まっている.本稿では,様々な新しい映像符号化研究を体系化した上で,これら新圧縮手法の仕組みを解説するとともに,シミュレーションによる実際の処理画像を示した上で,今後の符号化性能向上の可能性を論じる.
著者
高村 誠之
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会誌 (ISSN:13426907)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.J38-J44, 2015 (Released:2015-01-26)
参考文献数
30

映像符号化技術は常に活発に進展し続けており,今日の映像通信の隆盛を支える一つの中核技術となっている.この進展を将来にわたり継続させていくには,現在主流となっている「動き補償+直交変換」の次の枠組みとなる新しい技術革新が必要である.そこで画像毎に最適な符号化アルゴリズムを計算機が考える新たなアプローチとして進化型映像符号化への取組みを紹介する.遺伝的プログラミングによるアルゴリズムの自動進化の実現と,その結果得られた,人では到底作りえない規模・中身のアルゴリズムの紹介と分析,また従来なされていなかった変換や歪み除去フィルタの非線形化,そしてさまざまな方面からの高速化手法を述べ,今後の本技術の展開に関する議論を行う.
著者
高村 誠之 八島 由幸
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会誌 : 映像情報メディア = The journal of the Institute of Image Information and Television Engineers (ISSN:13426907)
巻号頁・発行日
vol.57, no.7, pp.873-877, 2003-07-01
被引用文献数
4 1 2

テレビ電話・遠隔会議システムなどにおいて, 符号化の前段として映像シーケンスから高速に背景を除去する方式を開発した.ソフトウェア実装にて実時間の10倍以上の速度を実現し, 入力画像の自動コントラスト調整や自動焦点調整に対しても頑健であることを確認した.