著者
小笠原 國郎 菅原 勉 谷口 孝彦 廣谷 功 吉田 尚之 高橋 道康
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

生理活性の発現は分子の持つキラリティーに依存する.それゆえ有機化合物の合成に当っては常にキラリティーの制御をも可能にするジアステレオ制御合成方法論の確立が必須である.本研究は基質制御型の合成方法論の立場から効果的なエナンチオかつジアステレオ制御法の確立を目的として行った.すなわち,本質的な立体制御要素を備えたキラル分子を先ず獲得し,この分子の持つ立体化学的ならびに化学的な機能性を反映させて効果的に目的物にエナンチオかつジアステレオ制御下に到達するものである.具体的には分子的に備わったカゴ状構造を持ち,さらに分子内にエノン単位あるいはジエノン単位を顕在的あるいは潜在的に保有する環状キラル分子を設計し,これを化学的不斉導入法あるいは酵素的分割法によって光学的に純粋に獲得しこれを基本合成素子として生理活性天然物の合成を検討した.その結果,シクロペンタジエノン等価キラル合成素子,シクロヘキサジエノン等価キラル合成素子,ジオキサビシクロ[3.2.1]オクテノン型多目的キラル合成素子,ならびにビシクロ[3.2.1]オクテノン型キラル合成素子開発に成功し,これらより多種にわたる生理活性天然物のエナンチオかつジアステレオ制御合成への道を拓いた.代表的例はプロスタグランジン鍵中間体,8組16種のアルドヘキソースの集約的合成,6種のコンドリトール異性体すべて,エストロン,ビタミンD,モルヒネ,カラバル豆アルカロイド,カイニン酸,抗マラリアアルカロイド,フェブリフジンおよびキニーネ,抗菌性シュードモニク酸,等の獲得に成功した.
著者
松石 昌典 久米 淳一 伊藤 友己 高橋 道長 荒井 正純 永富 宏 渡邉 佳奈 早瀬 文孝 沖谷 明紘
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.409-415, 2004-08-25
被引用文献数
11 21

黒毛和牛肉に特有な好ましい香りである和牛香に寄与する香気成分を明らかにするために,和牛肉と輸入牛肉(豪州産)から連続水蒸気蒸留により香気画分を取得し,ガスクロマトグラフィー分析,ガスクロマトグラフィー-マススペクトロメトリー分析,ガスクロマトグラフィー-においかぎ分析を行った.分析の結果,ラクトン類5種,ケトン類5種,アルコール類8種,不飽和アルコール類3種,エステル類2種,脂肪族アルデヒド類9種,脂肪族不飽和アルデヒド類8種,酸類2種,その他6種の計48成分が同定された.このうち,40成分は輸入牛肉より和牛肉に多く検出され,特にラクトン類は和牛肉に著しく多かった.同定された成分についてAEDA(Aroma Extract Dilution Analysis)法により香気寄与率を示すFD factor(flavor dilution factor)を求め,香気特性と合わせて和牛香への寄与を検討した.その結果,和牛香の甘さには,ココナッツ様,桃様の香りを有するラクトン類が寄与し,脂っぽさには脂臭い香りを有する一部のアルコール類やアルデヒド類などと,バター様の香りを有するジアセチルやアセトインなどが寄与していると推定された.