- 著者
-
辻村 康彦
高田 直也
- 出版者
- 日本理学療法士学会
- 雑誌
- 理学療法学 (ISSN:02893770)
- 巻号頁・発行日
- vol.33, no.5, pp.303-306, 2006-08-20 (Released:2018-08-25)
- 参考文献数
- 6
- 被引用文献数
-
2
超高齢者大腿骨頸部骨折の治療目標である,歩行自立能力の獲得や自宅退院は,身体・精神機能や社会的要因などの諸問題により困難を極めているのが現状である。そこで,当院にて治療を行った90歳以上の29例を対象に,退院時歩行能力,自宅退院率,自宅退院患者のADL能力の経時的推移につき調査し,その問題点を検討した。退院時歩行自立能力の獲得には,認知症の有無が大きな影響を与えていたが,合併症数は,ほぼ全例が複数の合併症を有していたことからそれによる影響はなかった。また,認知症に関しては,単に計画的な術後リハビリテーションの遂行が困難であることのみではなく,徘徊の危険性から患者家族の多くが,患者の積極的な歩行を望んでいないという特徴があった。また,自宅退院を困難とする原因は,歩行自立の可否よりも,超高齢者世帯における介護者自体が高齢者であることや,介護可能者数不足などの受け入れ体制の不備であった。一方,ADL自立レベルにて自宅退院した症例に対しては,家庭環境整備や外来通院での経過管理がその能力維持に有効であった。