著者
辻村 康彦 平松 哲夫 小島 英嗣 田平 一行
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.48-53, 2017-09-01 (Released:2017-11-10)
参考文献数
14

【目的】短時間作用性β2刺激薬(SABA)によるアシストユースがCOPD患者の身体活動量に及ぼす影響を検討した.【対象】長時間作用性気管支拡張薬を使用しているにもかかわらず,日常生活において強い呼吸困難と活動制限があり,SABAのアシストユース未経験の男性10例.【方法】身体活動量の測定には加速度センサー付歩数計を用い,吸入前,吸入後4・12週で評価し比較検討した.また,息切れとHRQOLもあわせて評価した.【結果】アシストユースにより身体活動量は有意な向上を認めた.また,息切れやHRQOLも有意な改善を認めた.【考察】動作前にSABAを吸入することで得られる労作時息切れの改善により,身体活動量は向上し,HRQOLも改善したと考えられた.SABAのアシストユースはCOPD治療において考慮されるべき治療方法であることが示唆された.
著者
辻村 康彦 秋山 歩夢 平松 哲夫 三川 浩太郎 田平 一行
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに,目的】COPD患者が実施する歩行トレーニングを中心とした在宅呼吸リハビリテーションにおいて,歩数計を用いた活動目標設定と歩数の自己管理が,身体活動量に与える影響を検討すること。【方法】対象は,外来呼吸リハを開始するCOPD患者のうち,GOLDIII・IVで,かつm-MRC2以上,CAT10以上,計画された評価を完遂できた6例(男性4例,女性2例,平均年齢75.5±3.9歳,BMI 19.7±3.9kg・m<sup>2</sup>,m-MRCII/III:3/3例,CAT18.5±2.5,%VC75.1±19.2,%FEV<sub>1</sub>40.1±8.5,GOLDIII/IV:5/1例)とした。呼吸リハプログラムは歩行トレーニングを中心として,口すぼめ呼吸などのコンディショニングや筋力トレーニングを在宅中心で12週間継続した。この中で歩行トレーニングは,第1段階として最初の4週間は従来通りの指導(歩行スピードや時間)のみを行い,第2段階として以後8週間は,歩数計を用いた目標歩数の設定と歩数の自己確認を行い,目標に達するように努力を求めた。目標歩数は各評価時点に算出した1日の平均歩数に1000~2000歩プラスとし,患者と相談した上で決定した。歩数計の使用に関しては,呼吸リハ開始前評価時および第1段階は歩数計をパッキングし歩数を確認できないようにした。第2段階では,自己管理として午前1回,午後2回,就寝時の計4回歩数を確認するよう指示した。これら歩数計の使用に関しては,書面を用いて十分に説明を行った。プログラムの実施状況は,来院時や電話を用いて2回/月で確認を行った。検討項目は,1.息切れ問診票,2.生活のひろがり(Life-Space Assessment),3.歩数(ライフコーダー(スズケン))とし,呼吸リハ開始前,リハ後4・8・12週に評価を実施した。さらに開始時およびリハ後12週の変化につき,1.MNAフルバージョン,2.6分間歩行距離にて検討を加えた。解析は2元配置分散分析法および多重比較検定を用いて経時的変化を検討した。【結果】各項目の経時的変化は(開始前/リハ後4/8/12w),息切れ問診票:32.8/28.6/22.5/20.5,生活のひろがり:45.3/55.8/66/77,歩数:1941/2744/3903/4282歩,であり呼吸リハ開始により,全例がすべての項目・評価時点において向上を示し,開始前とリハ後8/12wおよびリハ後4wと12wに統計学的有意差を認めた。さらに,MNAフルバージョン:20/25.2,6分間歩行距離:231/320mと有意な向上を認めた。【結論】歩数計による目標設定や活動量の自己管理が,身体活動性を高めたことから,活動には明確目標を持つことが重要であることが認められた。また,長期的に見た場合,息切れや生活空間だけではなく,運動耐容能や栄養にも効果を与えることが示唆された。さらに,12wで一定の効果を示したことから,歩数計を加えた在宅トレーニングは,単に治療効果を高めるだけではなく,治療効果を得るまでの時間を短縮できる可能性があると思われた。今回の方法は,活動量の少ないCOPD患者にも有効であったことから,幅広い患者に適応できると思われる。ただし,今後症例数を増やし,さらなる検証が必要である。
著者
辻村 康彦 高田 直也
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.303-306, 2006-08-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
6
被引用文献数
2

超高齢者大腿骨頸部骨折の治療目標である,歩行自立能力の獲得や自宅退院は,身体・精神機能や社会的要因などの諸問題により困難を極めているのが現状である。そこで,当院にて治療を行った90歳以上の29例を対象に,退院時歩行能力,自宅退院率,自宅退院患者のADL能力の経時的推移につき調査し,その問題点を検討した。退院時歩行自立能力の獲得には,認知症の有無が大きな影響を与えていたが,合併症数は,ほぼ全例が複数の合併症を有していたことからそれによる影響はなかった。また,認知症に関しては,単に計画的な術後リハビリテーションの遂行が困難であることのみではなく,徘徊の危険性から患者家族の多くが,患者の積極的な歩行を望んでいないという特徴があった。また,自宅退院を困難とする原因は,歩行自立の可否よりも,超高齢者世帯における介護者自体が高齢者であることや,介護可能者数不足などの受け入れ体制の不備であった。一方,ADL自立レベルにて自宅退院した症例に対しては,家庭環境整備や外来通院での経過管理がその能力維持に有効であった。