著者
髙橋 文子
出版者
美術科教育学会
雑誌
美術教育学:美術科教育学会誌 (ISSN:0917771X)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.313-326, 2017 (Released:2019-09-03)
参考文献数
18

小学生及び幼児を対象に,美術作品を記憶して描くことによる教育的効果を,形状ストックという観点から検討した。美術作品を見た後,作品を見ないで描く記憶画と,作品を見ながら描く観察画の2枚のスケッチを描写するプログラムを,4歳~12歳児を対象に行った。形状ストックという事物レベルで描かれた物を比較することで,児童の認識,感受の様子をリアルに検討することが可能であった。記憶スケッチには,児童のもつ絵画意識が強く反映されていた。記憶スケッチプログラムは,形や色,印象等の感覚の精度を高め,より質の高い認識や感受を生み出すことを確認した。
著者
髙橋 文 田中 健太郎
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.183-190, 2019 (Released:2019-12-24)
参考文献数
69

生殖的隔離機構が生じる遺伝的メカニズムについては、Bateson-Dobzhansky-Mullerモデルで示されたように遺伝的要素間の不適合に起因することが古くから概念化されている。モデル生物であるキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)やその近縁種を用いた研究では、交尾後に生じる不適合性に関与する遺伝子が複数同定されている。また、外部生殖器形態の種間差のような量的形質についても原因となる遺伝領域に迫るツールを駆使することができる。このような不適合性の生起には、自然選択が関与している場合としていない場合があるが、交尾後の生殖的隔離に寄与する遺伝子が同定されたケースの多くで、アミノ酸の置換速度が速いなど、正の自然選択が関与した痕跡が見られる。特にショウジョウバエでは速い進化の原因として、ゲノム内コンフリクトから生じる強い正の自然選択の関与が多く報告されているが、環境適応による自然選択が不適合性の生起に関与するケースがもう少し見つかってもよいのではないか、またそれを明らかにするためにモデル生物を用いる利点や難点は何か、今後の展望について考察する。