著者
田中 昌一郎 粟田 卓也 島田 朗 村尾 敏 丸山 太郎 鴨井 久司 川崎 英二 中西 幸二 永田 正男 藤井 寿美枝 池上 博司 今川 彰久 内潟 安子 大久保 実 大澤 春彦 梶尾 裕 川口 章夫 川畑 由美子 佐藤 譲 清水 一紀 高橋 和眞 牧野 英一 三浦 順之助 花房 俊昭 小林 哲郎 日本糖尿病学会1型糖尿病調査研究委員会
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.65-75, 2011 (Released:2011-03-29)
参考文献数
19
被引用文献数
8

日本糖尿病学会1型糖尿病調査研究委員会の緩徐進行1型糖尿病分科会(旧日本糖尿病学会緩徐進行1型糖尿病調査委員会)では委員会委員の所属する施設において発症から5年以内の新規受診糖尿病687例を前向き(2004年4月~2009年12月)に登録し膵島関連自己抗体(glutamic acid decarboxylase[GAD]抗体,insulinoma-associated protein 2[IA-2]抗体およびinsulin autoantibodies[IAA])の測定を行った.2型糖尿病と思われる症例で膵島関連自己抗体が一種でも陽性の場合には緩徐進行1型糖尿病:slowly progressive IDDM(以下SPIDDM)と病型区分した.その結果,1)2型糖尿病と思われる症例の10%(49/474, 95%信頼区間:8-13%)にSPIDDMが認められた.2)膵島関連自己抗体陰性の2型糖尿病に比しSPIDDM例の自己免疫性甲状腺疾患の合併頻度,HbA1c値,初診時のインスリン治療の頻度は有意に高く,BMIは有意に低かった.3)SPIDDMではGAD抗体の頻度(69%,34/49)はIA-2抗体の頻度(39%,19/49)やIAA(29%,14/44)の頻度に比し有意に高かった.4)SPIDDMでは急性発症1型糖尿病に比し膵島関連自己抗体の単独陽性例が高頻度だった.以上の結果から2型糖尿病と思われる症例に高頻度にSPIDDM症例が含まれる可能性があること,SPIDDMは2型糖尿病や急性発症1型糖尿病と異なる臨床的特徴を呈することが全国規模調査で明らかとなった.
著者
鴨井 久司 曽我 謙臣 高木 正人
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.47-51, 1996-01-30
参考文献数
19
被引用文献数
2
著者
宮腰 将史 星山 彩子 鴨井 久司 金子 兼三
出版者
新潟大学
雑誌
新潟医学会雑誌 (ISSN:00290440)
巻号頁・発行日
vol.122, no.5, pp.233-239, 2008-05

メタボリックシンドロームは,平安時代から存在し,1980年代から指摘されていた病態である.近年,脂肪摂取量の増加や運動不足の増加により,内臓脂肪型肥満が増加している.このために,分かりやすい診断基準が必要となり,この度メタボリックシンドロームという新たな診断基準が設けられた.診断基準はウエスト周囲径を必須項目とし,脂質,血圧,血糖のうち2項目以上を満たすものと定められた.ウエスト周囲径の基準については,女性が甘めに設定されているため,まだまだ議論の余地があり,不十分な基準である.内臓脂肪型肥満によって惹起される高血圧,高脂血症,高血糖の病態はたとえそれぞれの症状が軽微であっても心血管系疾患の発症リスクが増加する.そのため,ハイリスクでありながら見過ごされていた症例の早期介入が必要になる.耐糖能異常のある男性の7割以上がメタボリックシンドロームとなっており,糖尿病と関連が深いと考えられている.よって,メタボリックシンドロームの症例では糖負荷試験を施行することが推奨されている.メタボリックシンドロームの病態の主体は,脂肪細胞の分泌臓器としての役割である.脂肪細胞はアディポサイトカインと呼ばれる多彩な生理活性物質を分泌しており,過栄養により分泌異常を引き起こす。脂肪細胞の肥大化により,善玉アディポサイトカインが減少し,悪玉アディポサイトカインが上昇をする.その結果,動脈硬化のリスクが高まる.治療は,食事療法と運動療法が柱である.内臓脂肪を減少させる薬物療法はないが,メタボリックシンドロームに有効と報告されている薬剤はあり,今後も開発が期待される.内臓脂肪蓄積が主病態の糖尿病患者が増加している.メタボリックシンドロームの治療は,糖尿病の新規発症予防だけでなく,有効な治療と成り得る.メタボリックシンドロームの適切な診断と治療法の確立,更なる病態解明,十分なPRと理解,有効な治療薬の開発が大いに期待される.
著者
田中 昌一郎 粟田 卓也 島田 朗 村尾 敏 丸山 太郎 鴨井 久司 川崎 英二 中西 幸二 永田 正男 藤井 寿美枝 池上 博司 今川 彰久 内潟 安子 大久保 実 大澤 春彦 梶尾 裕 川口 章夫 川畑 由美子 佐藤 譲 清水 一紀 高橋 和眞 牧野 英一 三浦 順之助 花房 俊昭 小林 哲郎 日本糖尿病学会1型糖尿病調査研究委員会
出版者
THE JAPAN DIABETES SOCIETY
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.65-75, 2011-01-30
参考文献数
19
被引用文献数
2

日本糖尿病学会1型糖尿病調査研究委員会の緩徐進行1型糖尿病分科会(旧日本糖尿病学会緩徐進行1型糖尿病調査委員会)では委員会委員の所属する施設において発症から5年以内の新規受診糖尿病687例を前向き(2004年4月~2009年12月)に登録し膵島関連自己抗体(glutamic acid decarboxylase[GAD]抗体,insulinoma-associated protein 2[IA-2]抗体およびinsulin autoantibodies[IAA])の測定を行った.2型糖尿病と思われる症例で膵島関連自己抗体が一種でも陽性の場合には緩徐進行1型糖尿病:slowly progressive IDDM(以下SPIDDM)と病型区分した.その結果,1)2型糖尿病と思われる症例の10%(49/474, 95%信頼区間:8-13%)にSPIDDMが認められた.2)膵島関連自己抗体陰性の2型糖尿病に比しSPIDDM例の自己免疫性甲状腺疾患の合併頻度,HbA1c値,初診時のインスリン治療の頻度は有意に高く,BMIは有意に低かった.3)SPIDDMではGAD抗体の頻度(69%,34/49)はIA-2抗体の頻度(39%,19/49)やIAA(29%,14/44)の頻度に比し有意に高かった.4)SPIDDMでは急性発症1型糖尿病に比し膵島関連自己抗体の単独陽性例が高頻度だった.以上の結果から2型糖尿病と思われる症例に高頻度にSPIDDM症例が含まれる可能性があること,SPIDDMは2型糖尿病や急性発症1型糖尿病と異なる臨床的特徴を呈することが全国規模調査で明らかとなった.<br>