著者
伊藤 悟 鵜川 義弘 福地 彩 秋本 弘章 堤 純 井田 仁康 大西 宏冶
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2015, 2015

本発表は、昨年と今年の日本地理学会春季学術大会において同じ題目のもとにシリーズで行った4件の発表に続くもので、その後のシステム整備の進展や、未発表の利用実践を話題にする。具体的には、システム整備の新たな進展としてパノラマ写真との連動機能を、利用実践としては小学生らのオリエンテーリングを報告する。
著者
久島 裕 伊藤 悟 鵜川 義弘
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

ARシステムの活用を試みた本授業では、観光ルートの策定をテーマとした。すなわち、生徒自身が市役所の観光課に勤務しているものと仮定し、市外から来た観光客向けの観光マップに記載する観光ルートを考案することとした。当日の参加者は高校生2人1組のペア3組と指導する教師(授業者)1名である。<br> 授業者が各組共通に指定した3か所の観光スポットを結ぶルートの策定を求める一方で、「安全性(見通しのよさ、交通量、迷いやすさ)を意識したルート」、「商業性(観光客による商店の利用期待)を意識したルート」、「景観性(風情のある小道、歴史的な建物、自然)を意識したルート」のように、組ごとに相異なるテーマを意識しながらルート策定を行なうものとした。<br> 実施場所は高校から近い武生駅前商店街とその周辺である。上記で指定した3か所の観光スポットを含めて20か所近くのスポットをコンテンツとしてシステムに組み込み、それらの位置がエアタグで表示されるようにした。<br> 授業は60分の間に、まず、全員が一緒に出発地点からjunaioを使って歩き始め、3つの観光スポットの位置をエアタグでたどり、各地点に到着できたら紙の地形図に場所をチェックした。三つ目の観光スポットの位置を紙地図上でチェックできた後は各組に分かれ、タブレット内のエアタグと、周囲の様子を確認し合いながら観光ルートを思考、議論しながら回った。その際、ルート策定において重要と思われる要素(建物、道路、その他)があれば、タブレットを利用して撮影を行うこととした。 終了5分前までに出発地点に戻り、各組で考えた観光ルートを紙の地形図に赤ペンで書き込んだ。<br> ARシステム活用の効果としては、(1) 紙の地図と違い、画面を通して実際の様子を把握できるため、テーマに即した思考・判断が可能、(2) 紙の地図では城下町の街路形態から道に迷いやすいが、目的地の「方向」や「距離」を把握しやすい、(3) 調査時の生徒の楽しそうな様子から、生徒の関心・意欲の向上には大きく寄与した、などが考えられた。
著者
堤 純 鵜川 義弘 福地 彩 伊藤 悟 秋本 弘章 井田 仁康
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2014, 2014

本ポスター発表は、今大会で同じ題目のもとにシリーズで行った2つの口頭発表と連動し、石川県金沢市の卯辰山麓寺院地区を対象に構築したARシステムについて、タブレット端末を用いた実物のデモンストレーションを行いながら、その機能と特長を紹介し、地理教育への応用の可能性を検討するものである(ポスター発表のコアタイムにデモンストレーションを実施予定)。<br>口頭発表において取り上げなかったいくつかの機能のうち、実際に野外での活動時に有効な機能の1つとして、ブログとの連携を挙げることができる。ブログと連携することにより、スマートフォンやタブレット端末のみならず、パソコンを含めた多様なデバイスから、各自のIT環境に左右されずに情報にアクセスできるため、教師や生徒が野外か屋内かを問わずに情報を閲覧できる上、様々な情報を書き込むこともできる。 今回は、全体を1つのブログとして、1寺院に1ブログ記事を対応させ、記事本体(図1)は教師が作成し、そのコメント(図2)は生徒が寄せるものと想定した。いずれも、テキストの書き込みとともに、画像の投稿もできる。本システムによる作業のフローは以下の①~④のようになる。<br>①ARにより端末画面に表示されたエアタグに着目&rarr;②AR内での当該寺院の説明文を(野外で)閲覧&rarr;③ブログ記事へジャンプ&rarr;④上記記事へのコメントを入力、閲覧<br>上記のフローのうち、④の行程として、教師が用意した情報を一方通行的に見せるだけでなく、ブログ上でコメントの投稿・返信を通じて情報を双方向にやりとりできる点も、地理教育上の効果が大きいと考えられる。 また、投稿されたコメントの掲載許可の権限を教員がもつことにより、ブログシステムへの投稿内容の管理が可能である。こうして掲載されたコメントはキーワードごとに、ブログの1つのタイムライン上に掲載されるため、閲覧や検索が容易である。これらのコメントが記載され、一般に公開されることは生徒の励みにもなり、地理教育上のメリットも期待できる。<br>
著者
鵜川 義弘 福地 彩 伊藤 悟
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理要旨集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

AR 拡張現実アプリ Junaio <br>拡張現実とは現実環境に情報を付加して見せる技術で、カメラ、GPS、コンパス、モーションセンサーを持つスマートフォン(スマホ)の出現により、画面に映し出される生の映像の中にGIS地理情報システムから得た情報を重ね合わせて見せる「位置情報型AR」として利用できるようになった。 スマホARアプリJunaioを使用すると、地理情報を保存する自前UNIXサーバと連携させることにより「自分たちが表示したい情報」を「表示したい緯度経度の位置」に、スマホの画面に浮かぶ「エアタグ/バルーン」として出現させることができる。 Junaioにはコンパスとモーションセンサーを用いてカメラを向けた方向の別画像を見せるパノラマモードが存在し、別の日時に撮影したパノラマ写真を表示して、同じ方向に見える現実の風景と比較することもできる。 <br>Googleスプレッドシートの利用<br>Junaioの地理情報は、自前UNIXサーバにXMLという言語で書いてアップロードしなければならないが、これをUNIXサーバの操作知識を持たない教員が登録/変更するのは難しい。そこでExcelの表と同様だが、インターネットに接続されているWebブラウザから利用できるGoogleスプレッドシートを用いることにした。このシートはユーザを編集者として登録すれば、同じ表を共有して同時に編集することも可能である。自前UNIXサーバ側では、シートの内容をPHP言語のfile_get_contentsという方法で読み取りJunaioに転送する。このことにより、登録・編集が簡単で教員の変更内容もリアルタイムに反映できるようになった。
著者
堤 純 須賀 伸一 生澤 英之 原澤 亮太 鵜川 義弘 福地 彩 伊藤 悟 秋本 弘章 井田 仁康
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2015, 2015

本研究では,iOSおよびAndroid OSのタブレット端末やスマートフォン用のアプリであるjunaio(ドイツのmetaio社が開発した無償ARビューア)を用い,群馬県立前橋商業高校における研究授業の実践などを通して,高等学校地理授業における位置情報型ARの利活用の可能性について検討した。このシステムを構築したことにより,群馬県高等学校教育研究会地理部会のメンバーならば誰でも情報を加除修正できるため,メンバー教員全員が授業用コンテンツづくりに積極的に関わることができるようになった。すなわち,GISのスキルに長けた一部の教員のみに多大な負担をかけてしまうことなく,「シェア型」,あるいは「情報共有型」ともいうべき授業用のARコンテンツが作成できるようになった。本研究のARシステムは,魅力的な地理教材作成において,今後の発展のポテンシャルが高いと思われる。<br>2015年1月に,群馬県立前橋商業高等学校2年生4クラス(160名)を対象とした地理Aの授業では,地域調査の単元(全6時間で計画した「前橋市の地域調査」)において,最初の1時間目をARシステムを援用した地域概観の把握とした。すなわち,高校最上階7階の教室窓から遠方に眺められる建物(高層ビル)について,その名称や用途・高さ・完成年等を,ARシステムを通じて確認しながら,前橋市の都市構造の理解に努めた。その結果,前橋駅南北での開発状況の比較や高崎市との都市機能の違いなどを,現地まで出かけなくても高校の校舎内に居ながら体感することができた。
著者
秋本 弘章 秋本 洋子 伊藤 悟 鵜川 義弘
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

<b>フィールドワークにおけるARシステム活用の意義 </b>高校地理教育においてフィールドワークは重要であることは言うまでもない.しかし,効果的な実施ができていないという報告がある.10人程度の少人数であればともかく,クラス単位や学年行事として実施をする場合,フィールドで適切な指示が難しいからである.スマートフォンによるARシステムは,フィールドで,実際の地理的事象を観察しながら,その地理的背景の探求や理解を助ける情報を提供するものである.このようなAR機能をもつGISが教育現場に提供できれば,野外観察をより効果的に実施することができる.<b></b> そもそもARシステムは,スマートフォンやタブレット端末での利用を前提に開発されてきた技術である.これらの端末が広く普及すれば,ARは容易に利用できることになる.ここ数年におけるスマートフォンの急速な普及は誰もが認識している通りである.実践を行った早稲田高校においてもほとんどの生徒が所有し,日常的に利用していため,新たなアプリを使うことに対しても抵抗感はほとんどななかった.なお,校内においては通常スマートフォンの利用は禁止している.学習活動に利用するという目的で時間と場所を限って許可を与えて行った. <b>教材の開発と実践 </b>教材の開発は,昨年の春から行った.グループ学習という前提であるため,グループで見学コースを決めてまわることができるように,多数の観察ポイントを用意した.具体的には都内の100個所以上の見学個所として,質問項目を作成した.これらの質問項目は,Google Mapsのマイマップの機能を使って登録したうえで、AR機能を持つアプリであるWikitudeに書き込んだ. 授業実践は,早稲田高校1年生を対象に行った。従来関西研修旅行の予行として都内近郊でグループ学習を行っていた時間を使った.全体集会においてスマートフォンのアプリの利用方法等を伝えるとともにHRの時間を使ってグループワークのコースを作成させた。そのうえでフィールドワークではARシステム等を使って,スマートフォン上に提示される観察ポイントをめぐり,観察ポイントごとに示された課題を回答する.フィールドワーク終了後,江戸から東京への変遷、地形的特色などをまとめたレポートを提出させた. <b>授業実践の効果 </b>早稲田高校の生徒は,中学校の社会科地理の時間に学校周辺の引率型のフィールドワークを経験している.また,理科の授業でも野外観察も行っている.そのため,「教室の外」での学習が効果的なことを理解していたようである.また,スマートフォンを使って観察ポイントを探すという方法は「ゲーム感覚があり,楽しかった.」と好評であった.しかし,生徒は東京およびその周辺在住していながら,観察ポイントのほとんどを訪れたことなかったと回答している.その意味でも大きな意義があったと思われる.また,引率を担当した学年の先生方からも,生徒がグループで協力しながら学習を進めている姿に好意的な感想が寄せられた.観察ポイントについても,新たな東京の姿を発見できたなど高い評価を得た.もちろん,改善点もある.システム上の問題としてはWikitudeが古い機種のスマートフォンでは作動しないことである.また,当時の我々の技術では写真等を載せることができなかった.実践上の問題としては、時間内の回ることができなかったグループが多かったことである。見学範囲,見学個所の整理が必要かもしれない.