- 著者
-
井田 仁康
- 出版者
- The Association of Japanese Geographers
- 雑誌
- Geographical review of Japan, Series B (ISSN:02896001)
- 巻号頁・発行日
- vol.66, no.1, pp.18-34, 1993-06-30 (Released:2008-12-25)
- 参考文献数
- 33
本研究の目的は,集計および非集計データを用いて,日本の航空旅客流動の特性を明らかにすることである。航空旅客流動に関する従来の研究においては,非集計データを用いて分析されることが少なかった。また,分析には,地域間の結合を示すのに有用であるといわれる対数線形モデルを援用した。 多くの航空旅客は,羽田および大阪空港を起点あるいは終点として流動している。このような羽田および大阪空港を中心として航空旅客が流動していることは,従来の研究においても指摘されていたが,それが,旅客流動の多い航空路線が羽田および大阪空港と結合されているからである。それとは対照的に,千歳,鹿児島那覇空港と島しょ部を結ぶ航空路線は,航空旅客数が著しく少ない。 航空旅客の分析から,空港後背地を画定し,それに基づいてわが国を10地域に区分した。それら10地域の航空旅客の流動に対して,対数線形モデルが適用された。その結果,総航空旅客流動量が多い関東地方を起終点とした流動では,各地域間にそれぞれ期待される流動が生じているが,期待される流動量よりも多くの流動あるいは少ない流動が生じている地域間流動も多い。すなわち,発生・吸収される旅客数と一致するように地域間流動が生じているわけではないことが判明した。さらに,航空旅客の発生および吸収において,その地域の居住者と非居住者が拮抗している地域と,居住者が非居住者を凌駕する地域が存在することが判明した。さらに,ビジネスを目的とした航空旅客が卓越する旅客流動は,関東,中京,関西地域へ指向する。一般に,ビジネスが卓越した航空旅客流動は,距離の短い地域間にみられ,観光客が卓越した流動は,離れた地域間に生じている。全国的な観点からみれば,中枢管理機能が集中している地域において,ビジネスを目的とした航空旅客が多数発生・吸収される。それを取り囲む地域においては,中枢管理機能が集中している地域へ流動する航空旅客ではビジネス客が卓越し,他の地域への流動では観光客が卓越する。