著者
長谷 義隆 鵜飼 宏明 廣瀬 浩司
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.38-43, 2014-03-31 (Released:2014-04-23)
参考文献数
12

ジオパークの基本理念の主旨は大地の遺産の保全と活用である.大地の遺産のうち,地層や化石を主要テーマにしているジオパークにおいて,地層から化石を採集する行為は大地の遺産を保全するという観点からみると,受け入れがたいことのようにも考えられるが,しかし,大地の姿を知り,生命の変遷を語るにはなくてはならない教育プログラムであると考えられる.天草御所浦ジオパークの特徴は,中生代から新生代への地球規模の変遷を地層と化石から実感できることである.特に白亜紀層から産出する豊富な化石群(恐竜や軟体動物)を用いた子供たちの化石採集体験は教育プログラムとして重要である.その際採集される化石は,大地の遺産保全というジオパークの理念とどのように関わるのかについて,ジオパーク認定以前の旧御所浦町が取り組んできた保全・保護に対する実践と,それを現在の生態系の保全を含めた取り組みとして継続,発展させている天草御所浦ジオパークの現状を説明する.
著者
岡崎 浩子 兼子 尚知 平山 廉 伊左治 鎭司 加藤 久佳 樽 創 高桑 祐司 百原 新 鵜飼 宏明
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.359-366, 2004-10-01 (Released:2009-08-21)
参考文献数
27
被引用文献数
10 12

調査地点は千葉県袖ヶ浦市吉野田で,中部更新統下総層群清川層の露頭である.最近,調査地点において,シカ,カメ,ナウマンゾウなど多数の陸生脊椎動物化石や淡水生貝類化石および植物化石などが発見された.これらの化石を含む地層は河川の氾濫原堆積相(厚さ約1m)で,大きく分けて下位よりA,B,Cの3つの堆積ユニットが認められる.ユニットAは植物片を多く含む塊状粗粒シルト層からなる.ユニットBは淘汰の悪い泥質砂層からなり,木片や陸生脊椎動物の骨片・歯が密集する.この泥質砂層には砂層がレンズ状に複数挾まれ,平行層理や級化層理,粗粒デューンなどが認められる.ユニットCの下部は塊状シルト層で,上部はシルト層と極細粒~細粒砂層との砂泥互層からなる.このユニット中には,原地性を示すカメ化石や淡水生貝類化石などがみられる.これらの堆積相と化石群から,ユニットA~Bは河川の増水時に氾濫原に侵入してきた洪水堆積物で,自然堤防や堤防決壊堆積(クレバススプレイ)などを形成していたと考えられる.ユニットCは,その後,氾濫原に形成された湖沼の泥底とそこに氾濫時に流入した砂層の堆積物より構成される.